第8話火起請
火起請は、近くの神社で行われる。
裁定者は、その神社の神官である。
「これより、火起請を行う。裁定はこの神社の神官が受け持つ。こちらが負けた場合は、貯水池の使用料を他所と同じにする。こちらが勝った場合は、謀反のとがで首謀者数名を吊るし首に処す! これが神文血判。わしのとそちら側の代表者数名の血判を押すのじゃ! この誓いは決して違えぬと神に誓う!!」
領主らしき中年の者が宣言した。
「「「おう!」」」
♠️
神文血判に血判が押された後、真っ赤な鉄火が賽銭箱の3m手前くらいに置かれた。
火起請にはいろんなやり方があるが…今回は鉄火を持って3m歩き、神前で二礼してまた元の場所に鉄火を戻すというもの。
「まずは、わらわから」
尼の恰好をした少女が宣言。
「尼さん?」
「頭から目元まで隠れているが……年若い娘?」
夜霧である。
「わらわは水神の化身。やけどなど負うはずもなし。謝るなら今のうちですよ?」
「誰が謝るか?」
「ふざけんなよ!」
「そうですか? では、神技をみせてしんぜましょう。【
夜霧が技名を叫ぶと、夜霧の手は粘度の高い液体へと変化していくのだった。
それから、鉄火を平然とした顔で持ち上げる
「こんなもの、熱くも何ともないわ!」
すたこらさっさと神前に向かって二礼して戻ってくる。そして、元の場所に鉄火を戻す夜霧。
「何と!」
「姫さん以外に鉄火を無傷で扱える女がいるのかよ!」
「泣いて謝る気になったかしら?」
夜霧は勝ち誇ってみせる。
「いや、拙者が無傷でやり遂げてみせればいいだけ!」
声を上げたのは、別の尼姿の娘だった。
「へえ。この神技、あなたも出来ると?」
「同じではないが…火傷をおわなけばいいのだろう?」
「では、やって見せてもらいましょう!」
「見てろよ! 【
千歳の腕が鉄火と同じくらい真っ赤に発光しだした。
それから……
千歳も無傷で鉄火を運んだ。
「引き分け……じゃと? 火起請でわしの娘が……」
領主は、(信じられぬ)といった面持ちでへたりこんだ。
自分の娘の勝利を信じて疑ってなかったのだろう。
「この勝負……永遠に決着がつかぬでしょう。実施者として提案があります。聞いていただけますか? 父上。聞いてくださらぬと、今後わらわは二度と火起請の手伝いなどいたしませぬ! わらわ抜きで火起請に勝てるとお思いですか!?」
「父を脅すか! むぅ……言うてみよ!」
夜霧は、千歳と話し合った条件を言った。
夜霧(よぎり)晴れ、千歳(ちとせ)と成らん〜新旧くのいち姫二人が織りなす、戦国伊賀忍法帖 ライデン @Raidenasasin
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