今朝、夫が近くの森で死んだらしい

ささみ

第1話

今朝、夫が近くの森で死体で発見された

あの日、夫と喧嘩した

最近お互い仕事が忙しくなり、すれ違いの生活になっていた。

夫との出会いは大学の10人程度の天文同好会だった。

それがささいなことで喧嘩になり、お互い最近思っていた不満を投げつけあった。

そんなことをして喧嘩にならないはずがない。結局私は寝室に籠り、夫はリビングで寝たようだった。

夜中物音がしてトイレに行くついでに様子を見ると、夫はいなかった。

すぐ帰ってくるだろうと思い、寝室に戻って心配することもなく寝た。


翌日、久しぶりのに仕事が休みなこともあり午前中はゆっくり寝てやろうと思っていると、インターホンが鳴った。無視したが、二回目がすぐに鳴る。三回目もすぐに。薄目を開けて時計を見ると8時半過ぎ、体を起こしインターホンのモニターを見ると、警察だった。

「何ものってないピザ」のようなすっぴん顔で玄関を開ける。

警官から、近くの森で夫の死体が見つかったことを知らされた。

詳しく話をするためそのまま警察署に行くことになった。

昨夜の一連の流れを話し、事件性があるため、検死が入る事。葬儀が遅れる事。その他いろいろなことの説明を受けた。

それから数日、仕事のように夫の死の整理をしていたが夫の死に対してまだ感情が追い付いていない状態だった。

電話が鳴る、警察からだ。夫の死の経緯がわかったようで、報告したいので署に来て欲しいとのことだった。

警察から、家の玄関から死の瞬間までの流れを聞いた。最後に夫のスマホを返却された。

だいたいの話はこうだ。

夫は深夜3時過ぎに家を出た。そしてそのまま近隣をなぜか蛇行するように歩き、死体が発見された森の中に入っていったようだ。森の中でも何かを探すかのように蛇行していたようだ。そして木の根に足を取られ、頭を強打し気を失う。そして早朝散歩を日課にしていたおじいさんに発見されるまでそのままの状態で、状態が悪く失血死してしまったとのこと。

事件性もないと伝えられた。

私は夫のスマホを手に取る。まだ発見されたときの草や土が少しついていた。スマホの電源をつけ、ロック番号は知らなかったが、安直な夫のことだから生年月日かなんかだろうと打ち込むとあっけなく解除された。LINEなどのSNSは尊重して見る気にはならなかったが、写真は見たくなった。夫の撮る写真は好きだった。夫が死んだ日付のフォルダには数十枚の写真が残っていた。夜空ばかり撮っていたようだ。すべて見てみるとある共通点があった。夫はオリオン座を撮りたかったようだ。どの写真も残念ながら電柱や電線、家屋など入り込んだ写真だった。それがだんだんと木々が写り込むようになり、周りの明かりも減ってきて、最後の写真には満天な星空とオリオン座が写っていた。昔、天文学同好会の冬の合宿で透き通るような空にオリオン座が浮かんでいて、その星空のもと夫からたどたどしく告白されたことを思い出していた。

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