冒険者になるために
14 魔素の掌握
第一章 登場人物
三上翔太 :黒髪中性顔の男、世間知らず
神居歩乃果:論理欠如完璧仮大和撫子
アテナ:金髪ロング神秘的風貌女神、笑い声変
キャニィ:茶髪猫耳美人女、距離近い
ルリアーネ:金髪ボブ眼鏡美人受付嬢、極
アフロディーテ:縺ァ遏・繧九↓縺セ縺譌ゥ縺�
二章、始めますー。
*
「よっし。準備運動終わりっと」
翌朝、僕はまた荒野に来た。
今日から本格的な訓練が始まるのだと思うと興奮が抑えきれないというのが浅ましいというか僕らしいというか、準備運動に気合いが入っていた。
キャニィはというと
昨日、夜遅くまでキャニィの冒険談を聞いていたので、心なしか眠そうに見える。獣人は人間よりも睡眠時間を多く取る傾向があるらしいのでちょっと悪い事したかなと思う。
そして僕の準備運動が終わったのを確認して、ゆっくりとこちらへ近づいてきた。
「まずは
掌から小さな火柱が立つ。
淡い光で、ゆらゆらと揺れている。
「今見せているのが魔法。魔法の発動の為には魔素が必要になって、規模や発動する魔法によっては必要量が増減するの。組合とかこの街の壁とかその他色んな所に使われてるのをショータは見て来てると思う。ちなみに
火柱をスッと手で包んで消した。
そして手提げの鞄に手を差し込んだ。
「じゃあ訓練内容を発表します」
「待ってましたッ!!!!」
「いや声大きい」
「ごめん」
短い溜息をついて彼女は懐から何かを取り出した。それはまるでゴムボールのような風船のような、白い球体だった。
そしてキャニィはそれを掌の上に乗せる形で置く。
「いい?ショータはまだ
確かに、僕は魔素が濃い所とか魔法が使われている所を知覚する事が出来ている。でも自分で魔素を出せるかと言われれば無理だ。
同じモノが僕の身体の中に流れている、っていうのは今だに想像しがたい感覚ではあるがつい先刻死にかけた(死んだ)時にそれとなく既知っている。
「だから最初はまずこのゴム風船を使って訓練をするの!」
「え......そのままなんだ」
「どうしたの?何か質問とか?」
「いや大丈夫。ちょっと転びかけただけ」
「???」
彼女は首をかしげながらも、話を続けていく。
この訓練で必要になるのは、基本的に魔素を放出できることらしい。
どうやって鍛えるかと言うと、掌に乗せたゴム風船に魔素を一定量込めると浮力を帯びて空中へ浮かび上がるらしいので、それを利用して加減具合とか色々訓練するんだと。
「だいたいこんな感じ」
「本当に浮いてる......」
彼女が百聞は一見にしかずということで実際にやって見せてくれた。
ゴム風船は掌の1メートルくらい上空に静止していてピクリともしない。
これは魔素の放出が一定でムラが無いということを表している。
「最初は弱くていいよ。ゴム風船の浮き具合で自分がどれぐらい魔素を出してるのか感覚で分かっていけるから。ああ、そう!自分が一番リラックスできる体勢でやることを忘れないでね!」
彼女はそう言って僕にゴム風船を渡してきた。
うん。やっぱり何の変哲もないゴム風船。
握った感触もおかしいところは無い。
「えっと、掌に置いて......リラックスできる体勢を作って......」
キャニィの身体を治した時、身体中から力が抜けていく感覚があった。
流れ出たエネルギーが魔素だとすれば......。
「おっ、出来てる出来てる!!」
一応、ゴム風船に意識を集中させてみた、が思いのほか上手くいった。
ゴム風船は微弱な振動でプルプルと掌の上を右往左往しているが、一向に浮く気配がしない。魔素を流している量が少ないのか?と思い魔素の出所を感覚で確かめてみる。
いや、分からないなこれは。
肩まで遡った所で魔素の出所が散り散りになるのが分かった。どこから、ってよりは全身が魔素の貯蔵庫みたいになっていて、どこに扉をつけてどのくらい開けるかって考え方の方がよさそうだ。
「良い?ゴム風船に体のエネルギーを少しずつ放出するの。体からかき集める感じで掌へ意識を集中させて。それか自分を大きな貯水槽に見立てて、栓を抜く感じで」
案外、予想は当たっていたらしい。
「集中、あとは栓......蛇口かな」
彼女に言われた通り、掌に意識を集中させた。
そして僕は前の世界で言う蛇口をイメージすることにした。
掌を発射口と見立てて、蛇口をひねって放出するイメージ。
「良いよ!そのままそのまま!!!」
何となく、魔素の流れを把握できた。
後はこれを掌へ!!注ぐだけ!!!
――僕が魔素を込めたその瞬間
ゴム風船は跡形も無く破裂した。
蛇口をほんの少し開けるような感覚で慎重に魔素を込めた。
だが結果は見るも明らかだった、残骸が無念にも宙を舞っている。
「んぅ......出力が大きすぎるの......かな?」
彼女は破裂したゴム風船の残骸を手に取りながら、何やら考え込んでいた。
そしてまた懐からゴム風船を取り出して、僕に投げ渡す。
「多分、ショータは魔素が多いから、その分出力の加減が常人より難しくなってると思う......だけど」
「だけど?」
「このゴム風船は、過剰な魔素が加えられた場合破裂するんじゃなくて外に放出する性質があるの。だから子供でも安全に練習できるようになってる」
ああ、ゴム風船だったのはそういう理由なのか。
確かに、子供でも安全に魔素のコントロールを学ぶにはこういう遊びも兼ねた道具の方が続けやすいし、身に付きやすいかもしれない。
「だけど、ショータが魔素を込めた時は破裂した。これは普通じゃありえない......もしかしたら加えた魔素が異常に多かっただけかもしれない、もう一つだけ考えられるのは......いやでも......」
またキャニィが考え出した。
僕がゴム風船を破裂させちゃったせいでキャニィに余計な迷惑が掛かっていることは重々承知しているので、この時間に文句を言うことはない。
ある程度待った所でキャニィが顔を上げた。
「とりあえずもう一回。次は私がサポートに入るから」
「分かったよ。今度こそやってみせる!」
僕はゴム風船を掌に乗せて、先程と同じようなイメージを思い浮かべる。
そしてキャニィが僕の掌を下から支えてくれた。
「いい?今度は、本当に少しずつでいいから。足りない魔素は私がカバーする」
この言葉を皮切りに再度、魔素を込めていく。
キャニィが掌の下から魔素をガイドのように込めてくれていたので、キャニィの出力を真似るように僕も出力を上げていく。
ある程度魔素が込められた所でふわりとゴム風船が宙に浮いた。
「良いよー!ちょっとずつ量増やしてこ!」
「う、うん!」
僕はキャニィのガイドを参考にしながら、少しずつ魔素の量を増やしていく。
まだ、魔素の感覚に慣れていないので、出力がバラバラになるのはご愛敬だ。
二分程そうしていただろうか?
何となく、感覚が掴めてきた気がする。
ゴム風船の上げ下げも、ぎこちないながら一応出来た。
「よし、じゃあ一旦魔素を抜いてー」
僕は言われた通りに魔素の出力を落とす。
そして浮力を失ったゴム風船はポトッっと音を出して掌に着地した。
「じゃあ今度は一人でやってみよっか。今なら出来ると思うよ」
「うん!僕やってみる!」
キャニィが離れたのを見て再度掌へ意識を集中させる。
先程の出力を思い出しながら、少しずつ魔素を増やしていく。
ゴム風船はスムーズに宙へ浮いた。
「よっし!!出来たよ!!!」
「やったね!これで第一段階はクリア」
こうやって誰かに褒められたのは久しぶりだったので、つい口角が上がってしまう。まぁ久しぶりじゃなくても人に褒められたら誰だって嬉しいだろう。
「この訓練は色々と応用が出来るから、このまま12の刻まで続けていくよ!!」
キャニィはゴム風船を大量に持ちながらそう言った。
何となく、この訓練の発展形が見えた気がした。
*
12の刻まで訓練は続き、今はお昼頃。
僕は中央街でお昼ご飯を物色していた。
ちなみに今結構気分が良かったりする、思わず浮足立ってしまうには十分な理由が僕にはある、勿論、魔素のコントロールを覚えたからに他ならない。
あのゴム風船ともお別れだな。
という訳でもなく、まだまだ現役。
全身の魔素コントロールではリフティングのようにゴム風船をバウンドさせる必要がある。勿論やった、無理だった。
まぁそんなわけで魔素のコントロール(一部)は会得できたのはいいものの、全身のコントロ―ルで魔素使いすぎたせいで、お腹ペコペコだった。
(どこかに美味しい店とか無いかなぁ)
ここでの通貨は銅貨、銀貨、金貨、白金貨の四種類で構成されている。
何処の国も同じ通貨と言う訳ではなく、アルベント王国周辺の国々ではアルベント通貨、獣人国ティターニア近辺はティターニア通貨とある程度の分布で使用出来る通貨は違う。
政府が価値を保証している訳はなく、通貨の価値は金、銀、銅、白金の相場よりそれ一枚に含まれる金属の含有量に合わせて価値を見繕っている。
装飾や保存状態、希少金属の生産量、によって価値が変動する事もあるが、それは仕方のない事であり必然的に起こってしまう事だ。
ちなみに帝国は紙幣であり、紙幣の価値と債権債務を国が法律で定めている。
やっぱり何百年も続いてきただけに帝国は違うなぁ、と思った。
今日の交換比率は銅15→銀1、銀7→金1、金126→白金1である。
「美味しい店の名前とか聞いとくべきだったかな.......何も知らないや、ははっ」
ちなみにキャニィは訓練が終わった後、冒険者組合へ行った。
なんでも昨日の続きをすると言っていたが、続きって何をするんだろう。
考えても仕方ないので市場まで歩くことにした。
「うーん。どれも美味しそうだから余計に迷うなぁ......混み混みだし早くしないといけないのは分かってるけど」
昼食時の市場は朝に次いで二回目のピークだ。
出来立ての焼き肉や焼き魚が店頭に出そろい、それぞれが香ばしい匂いを嗅ぐわせている。その店秘伝のタレが否応にも食欲をそそらせる。
客引きの声と、値切りの声、騒がしくも新鮮な環境にここに来れて良かったと心底思った。
「お、俺の~手作り弁当!美味いよ~!ここらへんじゃ珍しい魔物の肉使ってるよー!お一つ銅貨5枚~!いかがですか~!」
その中で、僕の目についたのは一つの屋台。
まだ慣れていないのか、荒さが目立つ客引き。
市場から少し離れた脇道にひっそりと佇む屋台。
建物の影に隠れているせいか、何となく薄暗い。
そんな屋台で弁当を売っていたのは銀髪の青年。
彼は耳まで覆うような大きめのバンダナを頭に巻いており、右頬には顎辺りまで掛ける大きな傷痕が目立っている。傷痕から荒々しい印象は受けるものの仕草は年相応の少年といったところ。
「すみません、お弁当を買いたいんですけど。良いでしょうか?」
「.......へ、ほぇ?お客さん!!??」
気付いた時にはもう話しかけていた。
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毎週 金曜日 18:00 予定は変更される可能性があります
僕の異世界逃走記 ばに @nsksho
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