第7話 僕は、異能者。
緊張感が漂う中でダルマは、口を開いた。
「君、何でゲートが開く前に火事起こしたのかな??」
僕の顔はきっと引きつっていたかもしれない。微妙な空気間の中で息をのむ。
「、、、、、なんのことですか?、、」
少し、溜息をするように彼の顔は少し呆れていた。
「少しね、気になることがあって、いろいろと君のお姉さんと今回のこと調べさせてもらったんだよね。」
姉も本当のことのようで視線を向けると軽く頷いていた。僕の心臓は波を打つように速さを増していく。学校を燃やしてしまったことには、罪悪感が大いにあるからだった。
「奇妙だったんだよ。通報されて駆けつけてみれば、魔物は居ないが火事で生徒達は皆避難していた。だけど、数十分後にはゲートとともに魔物が現れた。それで、火事になった原因を見つけるために生徒や先生に聞きこみをしたり、通報した者について調べてみたんだけど、君がすごく怪しいという話になってね。」
僕が先ほど嘘をついてしまったことに後悔してしまう。正直に話していいものの、隠そうとしてしまった。冷や汗が止まらない。
「すみません。僕が、火事起こしました。」
後ろで、飴を咥えていた少女がこちらをちらっと睨みをきかせたような気がした。
「君、ゲートが開くことを知って火事起こしたの?」
何処か問い詰めるような形で僕に話しかけてきた。僕は真実を話す事を心のな中で決めた。
「はい。見えたんです。クラスメート死にゆく姿が。色々考えて火事を起こすしか思い浮かばなくて。」
「君、異能を隠した上で火事まで起こしたのかい。異能の隠蔽は法律違反という事を知ってるかい?」
「、、、私が、隠してたのよ。」
今まで、黙っていた姉が彼の話にかぶせるように説明をしだした。
「弟は、8年前の事件から私たちの知らない記憶を話始めるようになった。最初は、違和感を覚える内容だったけどすぐにそれが私たちに起こる未来の出来事fだとわかったわ。でも、異能を政府には報告できる状態ではなかったのよ。弟は、その時精神状態が不安定で学校に行くことすらできていなかったからね。でも、政府はきっと未来予知ができる異能をほおっておけるはずもないでしょう。だから、隠したかったのよ。」
姉は何処か遠い目をしていた。
現在では、異能の発現は自己申告が規則となっている。申告がない場合には、罰金悪ければ牢屋行きになってしまう。それは、異能の暴走を止めるという名目で国が異能を持つ子供や大人を一時的に学校という名の隔離施設に入れる仕組みとなっている。
特殊部隊はそこから入ってくる子供や大人が多い。隔離とはいっても異能を制御できる程度になれば外に簡単に出れることは可能だ。
この制度は、6年前に成立しており突如異能を発動させ暴走た者が増え、事故や事件に発展するケースが多かったためこのような仕組みへと変わっていった。
その学校を卒業できれば、そのまま特殊部隊に配属されることもあれば自分の進みたい道へ行くこともできる。
しかし、姉は僕の幼い頃の精神状態から申告せずに異能を隠しとおそうとしていた。きっとそれを偽善だというものもいるだろう。ゲートでの死亡率もそうだが異能の暴走や事件によって日本でも多くの被害が出ていることに変わりない。
そのため、日本に住む能力を持たない人間にとって『異能者』は魔物と変わらないぐらいの恐怖の対象ともいえるのだろう。
「そうですか、まあ僕たちの仕事でわないので、取り締まりは警察でお願いします。ですので、この件については何もできませんね。」
その言葉に姉さんは驚く反応を見せる。ダルマは、人差し指を立てた。
「ですが、今回の件で上層部が君について厄介な組織の仲間ではないかと考えているやつもいるようなので。できれば、早めの対処した方が良いかと。それか君自身がこちら側に来ていた方がよいことを教えておきます。」
彼は僕の目を見て訴えかけた。
そういうと、彼らは軽く会釈をした後病室の扉を開け外へ出ていった。
数分の沈黙が続く。僕自身これからのことを考える。
「姉さん、僕軍に入ろうと思う。軍事学校に入って異能の使い方も魔物の倒し方も学びたい。」
僕には強い意志が芽生えていた。これは僕の運命なのかもしれない。僕には、異能が存在するのに親しい友達を全員守ることができなかった。だから、僕には守る力が必要だと感じた。
「それは、ダメ。ダルマが話したことなら気にしなくていいわ。お姉ちゃんが何とかする。」
「姉さん、僕は心の底から行きたいんだ。僕の覚悟はできている。」
力ずよく僕は、姉さんに意思を伝える。しかし、納得いかないような顔つきでダメだと頭ごなしに否定をする。姉さんは、自分の手を力強く握り合わせていた。
「ダメ、危険だから。あなたは、安心した生活をしてほしいの。」
僕は知っている。姉さんの頑固さは誰にも引けを取らない。僕がしたいことがあっても姉さんがダメだといえば、僕が折れるまでダメといい続ける。だけど、今回は僕自身が決めたことだ。絶対に折れないと誓った。
姉さんの目を見て何度も僕の意思を伝える。
「もう、8年前から安心した生活なんて難しんだよ。僕は、大切な人を見殺しにしたくないんだ。強くなって、多くの人を助けたい。だからお願いだ。」
姉さんは少し溜息をついて椅子の隣にあるバックを手に取る。ロングコートを羽織り椅子から立ち上がった。
「この件は、もう少し保留にしておきましょう。私も考えておくわ。私は、今から警察の方へ戻るわ。」
そのまま、姉は急足で病室を出て行ってしまった。突然のことで反応ができず唖然としてしまった。結局、この件は解決できずに話を終わらせられてしまった。
僕は、病室のベットから時計を眺めるといつの間にか時計が3時を指していることに気づいた。
「高崎達も大丈夫だろうか?」
病室ですることもなくスマホを眺めている時間が過ぎていた。
また、病室に近づいてくる足音が聞こえていた。足音は、僕の病室で止まりドアが開き始めた。
「るい!大丈夫か??」
「まじ心配していたんだぞ!」
「お見舞いに来たからついでにお前の好きなお菓子もあるぞ!」
そう騒がしく入ってきたのは、僕の友達である三人であった。高崎は片手にビニール袋を持ってきていた。ビニール袋を僕の近くの棚の上に置く。
「皆!無事だったんだな。」
「俺らは、あの二人のおかげでな!」
お見舞いに来てくれたことが嬉しかっただけでなく、生きていたという実感でまたも涙が湧き出そうになった。その顔を見たは、鼻をすする音が聞こえてきた。
「おい、増田が何で先に泣いてんだよ!!」
「だって、いろいろ思い出してしまって、、、生きていてくれたことが嬉しくて。」
きっと、逆に増田が泣いたことで場が笑いに変わっていた。
「増田は、毎回タイミングが早いんだよ!」
「はははははは、やめろよ!泣きそうだったのに!」
場が少し和やかになり、僕もレジ袋に何が入っているのか気になりレジ袋に手を伸ばした。
「これ何入ってんの?」
「これ、お菓子とかジュースって、さっき言ったくね?!。」
「えっ、聞いてなかった。でもめっちゃ、ありがたいわ!」
「おう!食べろ食べろ!」
元気よく話をしてくれる皆に感謝の念を抱きながらジュースを手に取り一気に飲み始めた。皆の姿を見れたことに僕自身元気をくれた。
「なあ、正人の病態ってどうなんだ?」
先ほどの雰囲気とは違に何気なく空気は沈んでしまった。
「一命はとりとめたんだけど、少し精神的にちょっとっていう感じらしい。腕を失ったショックでまだ元気はないみたいだ。」
「あと、緒方はダメだった。それで、明後日葬式が行われるんだ。瑠偉は、まだ来れないかもだけど一応な、」
元気なく増田の葬式について話す。体中は、傷だらけで痛みはするが友達の葬式に行かないわけにはいかないと思いがはせる。
「、、、教えてくれてありがとう。葬式には、絶対行くから。」
「でも、まだ退院できないだろ?」
「でも、友達の葬式には顔を出しておきたいからさ。」
「そうか、、、、じゃあ、俺たちそろそろ帰るな。」
「おう!お見舞いありがとな!」
増田達はそのまま病室を出て行った。手を振りながら見送っていたが、高崎だけがその場に残っていた。彼は、増田達を送り出した後何かを決心したようにこちらの瞳を見ていた。彼はこぶしを握りしめこちらの瞳を見続ける。
「俺、正直今回の件でお前の行動には怒っているから。何で、あの時一人で敵に走っていったんだ。」
思いもよらない質問に返答が遅れる。
「、、、すまない。ただ、友達を失いたくない一心で体が動いたんだ。」
彼の顔は呆れるように息を吐いた。握りしめていた拳もゆっくりと開く。
「ハア、でもるいが生きていてよかった。」
「うん」
「あと!もう苗字読みやめろ。いつも思ってたが、魁(はじめ)って呼べよ!」
声のトーンが上がるり、僕の方に指をさす。
「えっ、あー、うん。」
「俺らの付き合い2年ぐらいなるのに何故いつも苗字呼びなんだよ!たどたどしいだろ!」
少し戸惑う気持ちもあったが、今思えば基本苗字呼びになっていたかもしれないと気づいてしまった。
「たしかに、今まで考えたことなかった。」
「はあ~、お前はそういうやつだよな。まあいいよ。」
「はは、そうだよ。」
「はは、じゃないんだよ!」
高崎は、僕の頬を両手でつねってきた。病人のことを考えていないのかとも思ったがこいつはそゆうやつだと知っている。つねるのをやめたと思えば彼は笑いながら付け加えるように話を始めた。
「俺!進路決めたんだよ!今まで少し迷いがあったんだけど。軍事学校に入学したいと思ってさ。」
意外な話に僕の口は大きく開き言葉を失った。まさか、僕と同じことを言うなんて思ってもみなかった。
そんな顔を見て、また笑っていた。
「なんだよ。その顔。」
「いや、まさか僕と同じことを言ってると思わなくて。」
「へ???」
彼もまた、困惑したように声を出した。その阿保ずらがまた面白い顔をしており僕のツボを押さえた。
「お前も、なんだその顔。wwwww」
「うるせーよ!でも、まさか同じなんてな!一緒に頑張ろうな!」
「おう!!」
そう言って、僕たちは大きく手と手を合わせ目線を合わせた。
一方。メイはダルマに冷たい視線を送っていた。
「良かったのかよ?普通に規則違反だろ?」
「ま~、目をつぶってあげよかなって。だって、隊長の兄弟だからさ。」
「関係ないだろそれ!お前もバレたら処罰食らうぞ。」
「いや、隊長もこの事知ってて彼の異能を報告してないだよ。きっと、隊長も彼らを守りたい気持ちがあるからだろ。それに、あの学校の事件から異能が発現したといっても問題ないと思うよ。よくある話だしね。覚醒はいつでも起こりうることだからさ。」
ダルマ優しく目を細め、メイに言い聞かせるように話す。メイも、前を向き大きく前に踏み出した。ダルマの先へ先へと歩みを利かせた。
ホイール・オブ・フォーチェン~世界はゲートの出現により多くの命を奪われた。主人公は異能特殊部隊に入るために軍事学校で多くのものを学び成長していく話~ 五樹 ノノ @poppukof342f
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