第6話 これは不自然
ゴブリンは、何かを見つけたように窓を破り学校の中へ入っていく。追いかけるように我々も学校内へ追いかける。廊下を走る抜けるが素早い動きに攻撃が当たらない。
「ああああああああ。うううああああ」
一瞬にして我々に緊張感が走った。
「ダルマ。逃げ遅れがいるぞ。」
頭によぎったのは、俺らがこちらの学校に来た時に不自然に我々を見ていた少年たちの姿だった。彼らが学校へ向かっていたことを思い出した。見落としていたのだ。
「メイ、ここは別れよう。お前は、先に生存者の救助をしろ!!」
「了解。」
目線の先には、二つの階段がある。手前の階段から二人人の生徒が降りてきていた。ゴブリンが生徒を攻撃できない様に俺はこぶしを地面に打ち付けた。地面は地割れを引き起こしゴブリンが走る目の前に障壁を作り上げた。
「くそ!当たらんか。」
少しの足止めでメイが二人の生徒付近に近づくことができた。
「まだ、いたのかよ。」
二人の生徒を追っていたゴブリンを短剣で掻っ切る。すぐに、彼ら二人を回収した後その先を走る赤帽子のゴブリンを追いかける。この時から、なんとなくわかっていたがこいつは我々を小ばかにしている。追いかけて来いと言わんばかりのしぐさをしてくる。
「私、あいつ追いかけますんでこの二人お願いします。」
生徒二人の襟をつかみこちらに投げてきた。男子生徒二人をキャッチしたが不安感がぬぐえない。
「君たち大丈夫かい?ほかに、敵はいたかい?」
どうやら彼らは、おびえている。体を身震いしながら涙を流し始めた。
「ウっ、、、、、、います。ううう、、まだ友達が、、、」
「友達は何人かい?」
「、、、、4人です。」
無線を手に取る。
「生徒2名保護。残り4名不明」
周りを警戒しながら彼らの方に視線を向ける。
「了解。まずは安全な場所に送ろう。」
「待ってください!!ぼ、、ぼ、、くらは大丈夫です、、、だから、友達を助けてください!」
「しかし、まずは君たちの安全が大事だ。」
「お願いです。」
彼らは、自分が避難するよりも先に友達の安否を心配していた。窓の割れる音が廊下まで聞こえた。その音のする方に目をやると奥の階段には、無惨に切り刻まれた死体が倒れていた。この学校の制服の下に赤いパーカーを着ており学生だと一目で分かった。
彼らも、そちらに視線を向けようとしていたが僕の体で視線先を隠す。
「分かった。だけど絶対にここから避難するんだよ!いいかい。」
学生達は、立ち上がりもう一度外へ向かって走り出した。音のした方向に向かって走り出す。一階の廊下を走っていると大怪我をした学生を背負う1人の生徒が走っていた。
「君!大丈夫かい!?」
彼は驚いた顔を見せながら、力強くまだ生徒が取り残されている事を伝える。彼の指を刺し早く助けるようにお願いをした。彼にも避難するように注意がけをして彼が指をさす方向かう。
彼の指示した場所には2匹のゴブリンと学生服を着た黒髪の少年が腕に血を流しながら尻餅をついていた。そんな彼に容赦なく斬りかかろうとしたゴブリンだったが何とかメイちゃんが剣を払う形で助けていた。。
攻撃をしているうちに俺は彼の回収を先決した。彼を抱き抱えすぐに救護班のところへと運び出す。グラウンド近くを通れたものの、美咲とファシスが見当たらなかった。きっと、先ほどの生徒がここを通るときに保護したに違いなかった。
彼からは生徒の安否を聞かれ、一人生徒が助けられなかったことを話した。俺の腕の中で涙を流していた。俺はそんな彼にかける言葉が浮かばず、静かに救護班のところへ駆け込んだ。
彼を、救護班に頼みすぐにメイのところへと戻らようにした。全速で走れば1分もかからずにメイのところへ到着できた。
どうやら今赤帽子と戦闘を繰り広げている様子だった。手こずっているようで動きの速さからして攻撃が全く当たっていないようだ。
それを馬鹿にするかのようにケケケと笑うゴブリンに対してメイは怒りをあらわにしていた。
「まじ、こいつ殺す。」
「メイちゃん、焦りは良くないぞ。」
「来てたのかよ。ダルマ。」
怒りのあまり俺の気配にすら気づかなっ方ようだ。腕に着いた機械を指で操作する。小さい指示マークに触れると俺の拳を重機的な鉄器具が包む。これは、能力の増強を可能としてくれる機械でもある。こぶしを二度ぶつけ合い地面をたたきつける。
「ダルマ!!私いるんだけど!?」
周りは、大きな地響きを上げ赤帽子ゴブリンまで近づいていく。メイも地響きによってバランスを崩そうとしていた。しかし、そんなことはお構いなしに次は学校の壁に拳をぶつけた。
ゴブリンは地面から突如出てきた障壁に打つ付けられ上へと跳ね上がった。それをいいことに、壁から出てきた障壁を使いダルマ自身もゴブリンのもとへ飛ぶ。ゴブリンも上空では、回避しようがなくダルマの打撃を受け続けるしかなかった。巨体から繰り出される打撃は、ゴブリンの姿をみるみる変えていた。
さすがのメイも顔を引きつらせている。
「ダルマ。それちょっとグロいわ。てか、そんな殴る必要ないだろ。」
「えっ、何で引いてんの!?いやだって、メイちゃんこいつ倒せてなかったからさ!」
「はっ!全然倒せたし!こいつが私の攻撃をかわさなければ簡単だったし!!!」
メイちゃんは、足を自タバサさせダルマへの怒りをぶつけた。言い訳じみたことを言い始めたメイちゃんだったが、ダルマの興味なさそうな顔に言い訳をやめた。
「そっち終わったかい~~?」
三階から大きな声を上げこちらの現状を確認しようとしていたのはファシスだった。その隣に、それを眺める美咲が目に入った。
「二人何してるんだ!?」
「えっ、学校に残党いないかの確認だけど。」
無事に討伐を終わらせた彼らが先に敵の生き残りや生存者の確認をしていたようだ。
俺たちもファシスのもとへ向かうことにした。学校の中は、ゴブリンの被害で破損している部分も多々あるが問題があるほどではない。
ゴブリン退治を終わらせた我々は、警察に後処理を任せるために無線機で任務を完了したことを報告する。
「あの?ちょっと疑問なんですがダルマさんいいですか?」
「なんだい?」
「私たちがこちらに来た時、まだゴブリンは居なかったはずなのに、なぜ通報が入ったのでしょう?」
「「それ思った。」」
皆の考えが一致していたようだ。俺も最初の方から気になってはいた。来た時には、火事だけが起こっておりゴブリンの姿は全く見えていない状況下で生徒たちが避難していたことには違和感を感じていた。
もしかしたら、ゲートについて何かしら気づいていたものがこの火事も起こしていたのかもしれない。
「そうだね、ちょっと調べてみようか。」
司令部に無線で誰が通報したのかを調べてもらうようにお願いしてもらう。
「もし、ゲートの出現がわかる子がいたら軍にとって欲しい人材ですね。」
「そうだな。だけど軍にとって利益だがその子にとってはどうだろうな。」
俺たちの働いている特殊部隊は、いつも死と隣り合わせの中で自分の強い意志や夢によって働いている者が多くだ。そのため、軍に所属するということは、それなりの覚悟も持っている必要があるということ。
「でも、その子が『リヴィール』の仲間とかかもよ~。最近、あいつら活発に動いているからさ~。」
「ファシスそれはないでしょ。なら、何で通報するのよ。」
「うん。ほら、その子が僕らで遊ぼうとしていたという考え方もできるでしょ。現に、そういうやつらは今でもうじゃうじゃだし。」
雰囲気が暗かったがそれを一層するようにメイは、帰りたいとどうでもよさそうに言い放った。俺たちも、後処理班や治療班に後を任せる。警察から話を聞かれることを皆が嫌がらり、俺だけがそこに残る羽目となった。他の奴らは、のうのうとヘリに向かって帰っていった。
学校内にいた生徒の一人が死亡。二人は、大けがを負い一命はとりとめた。残りの三人は、かすり傷などの軽度のけがで済んだようだった。
その間の話は、いつも通り騒がしいメイとファシスの討論が巻き起こっていた。美咲は、大きな音を立て揺れ動くヘリで堂々と眠りをかましていた。
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