追放編15 寂しかったのだ
はぁ……緊張した。
横で気もち良さそうに寝ている彼を見ながら私はため息をつく。
窓の外を見ると大きな月が静かに外を照らしており、静かに葉が風で揺れる音が聞こえる。
彼をこの家に連れ込んだ理由として、私は『放っておくと死にそうだから』と言ったが本当はそれだけではない。
アタシは……寂しかったのだ。
この街は狭いコミュニティだ。アタシの両親の死を知った街のみんなはもちろん心配してくれたが、アタシが皆を遠ざけた。誰とも話したくなかったのだ。
それから1週間が過ぎ、1ヶ月が過ぎ、1年が過ぎた。きっと皆、もうアタシにどう接していいか分からなくなってしまったのだ。
当然だ。声をかけてくれた人に対して全員にアタシは最低な態度をとった。
『話しかけないで』とか『失せなさいよ』とか。
せっかく皆、アタシを心配してくれたのに。
それから時が過ぎ、何を思ったか、ふととある酒場に立ち寄ったのだ。心の冷たさを酒で忘れたかったのかもしれない。
酒場のドアを開くとそこにはたまに街ですれ違う酒場で勤務しているおじさんと、見知らぬ男がいたのだ。
この街は狭いコミュニティだ。特に観光名称にも有名な都市の通り道にもなっていないこの街に知らない人がいるというのは珍しい。その男はアタシが入る前から酒を飲んでいたのに、アタシが店を出る頃にもまた新しい酒を頼んでいた。
どんだけ飲むのよ。少し…心配になった。
次の日も、その次の日も、彼は酒場をいて浴びるように酒を飲む。
彼の顔は常に俯いているのでよく見えないがどこか秋愛が漂う彼の背中から、アタシは目が離せなくなっていた。
1週間程過ぎたある日、アタシは意を決して彼に話しかけることにした。
「ねえ、アンタ。毎日ここにきてるの?」
久しぶりに人に話しかけた。冷や汗が吹き出て顔が熱くなる。
彼ははその言葉を無視して、コップの酒を半分飲み干す。
もうこの際嫌われてもいい。1度話しかけてしまったんだ。最後までやりきろう。
「ねえ、無視するんじゃないわよ。アタシはリリアン、アンタは?」
「……人殺しの犯罪者だ」
彼のその言い方はどこか自暴自棄になっているような、静かな怒りを感じた。アタシに対してではなく他のなにかに対して。
彼はコップの酒を全て飲み干し、静かに机におく。
「ご馳走様」
彼はそう店主に言って店を出ようとする。
彼がドアに向かうその瞬間、彼の顔を初めてしっかりと見たその週間に確かに見えた。
彼の絶望仕切った顔を、頬を伝った涙の後を。
「待ちなさいよ!ちょっと話しましょう?ほら、赤ワインご馳走してあげるから」
そう呼び止めたが、どうやら彼は赤ワインは嫌いだったようだ。
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王子に嵌められて無実の罪を着せられた俺は後に最強の魔剣使いになる 妄想屋さん @sididisijsiwoek
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