恋なんて
@11121040
第1話
時田佐奈は中学2年生の14歳、彼女には何でも心置きなく話せる親友がいる。名前は沢崎賢人、そう、佐奈と同じ学校の同じ教室のクラスメイト。
そもそも佐奈の母の圭子が、公園デビューしたとき賢人の母の仁美がいて、それ以来のママ友となっていた。それ以来、佐奈と賢人はいつも一緒、そしていつも遊んできた。それは幼稚園のときも、小学校のときも、そして中学生になった今でも、仲のいい二人。あまりにも仲がいいので、端から見ると恋人と間違われがちだが、
「ただの友だちだから」
と、二人は声を合わせてきっぱり答える。よほど聞かれてきたのか、ウンザリ感が伝わってくる。
佐奈の放課後は、専ら親友の莉子とファミレスでのお勉強。
「もう希望高校決めた?」
時期が時期だけに、やはり話題は自然と受験のことになる。
「莉子はいいよね、成績は学年でもトップクラスだから、どこでも行けるし」
佐奈にとって、莉子は羨望の的だ。
「止めてよ、そんなに良くもないよ。ねえ人って何で人を好きななるのかなあ?」
急に何を話し出すのか。
「ね大丈夫?いきなり変なこと聞かないでよ」
唐突な話に、頭が混乱してしまう。
「あんたには彼氏いるから心配ないけど。私なんて空き家になってもう半年」
佐奈には、同じバレー部の先輩の明神慎之輔とうい彼氏がいる。
「考えてみれば不思議ね?そう、人はなぜ人を好きになっちゃうのかなあ?」
莉子からの不意な問い掛けに、佐奈はも真剣に悩んでしまう。
佐奈は、ファミレスの帰りに立ち寄ったコンビニで、偶然に賢人と出くわした。
「ねえ何してんの?どうせエロい本でも見てたんでしょ」
図星だったのか、佐奈に気づいた賢人は、さも慌てた様子。
「お前こそ何してんだ?どうせスイーツだろ?そのうちブクブク来るぞ」
とっさにそう返すのが精一杯だった。
「あっそれってセクハラといいますのよ、フフフ」
こんな冗談を言い合えるのも、そこは幼ななじみのよしみ。
そこからは、帰る方向が同じでのため、一緒に帰ることにした。
「ねえ賢人、人ってどうして人を好きになるの?」
またさきほどのハテナが、よみがえってきた。佐奈はよっぽど気にしてるみたい。
「どうした?熱でもあんのか?そんなの好きに理由なんかあるかよ」
賢人の答えはストレートで、突っ込む余地がない。
「で、賢人って、今好きな人っている?」
いきなり直球でぶち込まれた。心当たりもないのに、賢人の心臓はまさにバクバク。
「じゃあ、佐奈が好きということにしとこかな?」
冗談ともとれないこの一言が、後の二人の関係に大きな変化を与えようとは、そのときは想像もつかなかった。
楽しそうに会話し歩いてると、前方から同じクラスの若島有紀が歩いてきた。
「あっ有紀。借りてたノートのことだけど。あっ佐奈ごめんな、有紀と話したいことあるんで。また後で」
賢人は佐奈に別れを告げ、有紀と一緒に去っていってしまった。
取り残された佐奈は、心にポカンと穴が空いたような気分だ。
別に私の彼氏じゃないし
自分自身に言い聞かせることで、なぜか納得させようとした。
「ねえあんまりじゃない。私と賢人が話してるのに、割り込んでくるなんて」
佐奈は、莉子に今のモヤモヤ感をぶちまける。
「えっあんたたち付き合ってたの?じゃないよね。だったらどうしようと沢崎君の勝手じゃない?」
それくら佐奈も分かってる。でも、とにかく誰かに聞いてもらいたかっただけだった。
「ほんとうは好きなんじゃない?沢崎君のこと」
「・・・だから前から言ってるじゃない・・・ただの幼なじみだって」
そう答えながらも、佐奈自身には迷いが出始めてきてたのは事実だった。
「あんたには、明神先輩がいるんでしょ?好きなんでしょ?」
痛いところを突かれた。それでも強がってみせる。
「いるっちゃいるけど。どうも最近・・・・」
やはり迷ってる。
「じゃあ次に私から話していい?実は好きな人出来たんだ」
急なカミングアウトに、佐奈も身構えてしまう。
「て誰?ねえねえ教えて?」
佐奈は興味津々。
「言ってもいいけど、絶対怒らないでよ。・・・じゃあ言うね・・・それは沢崎君」
もったいぶって出てきた名前を聞き、佐奈も動揺を隠せない。しかし、ここはあえて冷静を装う。
「あっそうなんだ?賢人は知ってるの?」
怒られると思ってただけに、莉子も拍子抜け。
「知ってる何も、沢崎君から告白されたんだから」
これは初耳。佐奈は、そんな賢人の気持ちをまったく知らなかった。
何で私に言ってくれなかったの・・・あっそっか、どうでもいっか
その場は冷静さを保った佐奈だったが、どうしても釈然とせず、賢人を問い詰めたくなっている。
帰宅後、佐奈はさっそく賢人に電話した。その口調は想像通り。
「あんた莉子に告白したんだって?何考えてんの?」
賢人は、まるで電話が掛かってくるのを予想してたのかように、軽くかわしてくる。
「へ~情報早いねえ。で、何で告っちゃダメなの?そもそもお前なんかに関係ないし」
言ってることは至極当然。
「まあ、そうだけど」
さらに賢人はたたみかけてくる。
「それとも俺のことが好きとか?」
「んな訳ないじゃない。私たち友だちよ。彼氏とは考えられない」
佐奈がドギマギしてるのが、電話越しだけどよく伝わってくる。
「俺もそう。これで分かっただろ?じゃあ切るぞ」
佐奈は、どうしても〝俺もそう〟が引っかかってしまった。
だから私も・・・えっ本当に私もそうなの?
佐奈は、深い迷いの渦の中に飲み込まれていく。
数日後の日曜日、佐奈は、彼氏の慎之輔と地元の遊園地にいた。久しぶりのデートに、佐奈は前日から興奮しっぱなし。それは早く会いたい気持ちが強く、待ち合わせ時間より、1時間前に着いていたほどだった。
絶叫ジェットコースター、フラワーメリーゴーランド、そして次はメインのお化け屋敷。
きっと先輩が私を守ってくれるんだろうなあ
ところが出口から出てきたカップルたちの、べそをかいてるの様子を見た慎之輔は、突然泣きついてきた。
「お化け屋敷入るの止める。どうせ偽物のお化けんて、おもしろくないし」
そういうと、急きょ予定を変えてしまった。
あ~ああ。抱きつくチャンスが。でも絶対にまたくるから
佐奈は次に無念の気持ちを隠しながら、慎之輔の後を追った。
「やっぱ、ボートにしようぜ」
ボートと聞いて、佐奈は一瞬ためらった。なぜなら、ここで恋人同士でボートに乗ると、別れるというジンクスがあったからだ。
「えっそれってやばくない?」
「そんなの迷信。気にしないで乗る、俺が決めたんだ」
半ば強引に佐奈をボートに誘い込み、慎之輔が得意がってオールを動かしていくうちに、かなり岸から離れてしまいました。
「もういいよ、もどろ」
「何ビビってんの?大丈夫」
と言いながらわざと力強く漕ぎ出してみせると、ボートが左右に揺れ、危うく転覆しそうになってしまった。とっさに佐奈がボートの端をにぎり、
キャー
と思わず叫んでしまった。すかさず助けを求めようとしたが、慎之輔はボートにしがみついている。
「あっ危な!ヤバ」
危なって何?えっ、私のこと心配してくんないの?カッコ良かった先輩はいったい
急に慎之輔への気持ちが冷めていった。
帰宅してからの佐奈は、なぜか賢人のことで頭が一杯。
恋愛の対象なんかにならない 私たちいつからの知り合いなの
佐奈は小さい頃に思いを巡らせた。幼稚園のころ、砂場でママゴトをしたこと。小学校のころ、花見遠足の桜の木の下で、一緒にお弁当を食べたこと。時田家と沢崎家でキャンプに行き、同じテントから満点の星を眺めたこと。中学校受験に迷ったとき、賢人と同じ学校へ行きたくて、受験を止めたこと。
思い出の数々が、昨日のことのようによみがえってくる。
無理無理。だって私たち友だちなんだから
自問自答しながら、佐奈はいつしか眠りに就いていく。
翌朝、目覚めの悪い佐奈だったが、賢人に今の気持ちを打ち明けようと決めていた。
心の準備が出来ぬ間に学校に着くと、向かったのは賢人がいるは教室。そこには大勢のクラスメイトがいたが、佐奈は意を決して心のうちを告げる。
「おはよ賢人。ちょっと話があるんだけど」
その気迫に、圧倒されてしまいそう。
「どうしたんだ?そんな真顔で」
どこか殺気立ってる。すると核心を突いてきた。
「ねえ私たちって、ずっと友だちだよね」
この雰囲気を悟ったのか、クラスメイトたちが急に会話を止め、二人に見入っている。
「そう考えたら長いか、俺たちって。赤ん坊のころからだもんなあ」
「それってただの友だち・・・でいいんだよね?」
「友だちちゃあ、友だちだし」
「その先ってないの?」
この言葉を待ってたかのように、クラスメイトたちが息を潜める中、佐奈が声を振り絞った。
「じゃあ言うね・・・私たちって付き合わない?」
いきないりの告白に、周囲の方が緊張してしまう。
「別にいいよ。俺もそのつもりだったし」
すると教室内から一斉に、
オメデト~
の声が。
図らずもクラス中に拍手と歓声がわき起こった。この暖かな祝福が、佐奈の心を満たしていく。
男女の間に、果たして友情は成立するのか?
恋なんて @11121040
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