後編 


先の上履き騒動からちょうど1ヶ⽉後…。


私はいつものように着替えをして、サクラちゃんと⼀緒に武道場に⾏って、そこにあるストーブで暖をとっていた。


地球温暖化が進んでいるとはいえ、⽇本の冬は寒い!

ストーブの前にいると⼿がじ〜んとして気持ちがいい。


私達は、武道場でこのあとやる三⾓ベース(野球みたいなもの?ちなみに私はこれがものすごく苦⼿で、空振りパラダイスだ。)の説明を受けた。


そして、いざ外へ!


「あれっ?上履きの⽚⽅、私のじゃない!」


よく⾒てみると⽚⽅は、この前私の上履きを探してくれたキョウコちゃんのものだった。


もしかして、キョウコちゃんが私の⽚⽅の上履きを間違えて履いちゃったのかな…?


でも私は、⼊ってくる時、サクラちゃんの上履きときちっと並べたはず。


今私の⽬の前にある上履きの周囲にサクラちゃんのものはない…。

まだ、外に⾏ってないはずなのに…。


私は疑いながらも、⼀応キョウコちゃんの靴箱を⾒にいった。


もしかしたら、この中に私のもう⽚⽅がキョウコちゃんの⽚⽅と⼀緒にあると思ったのだ。


すると、中にはキョウコちゃんの靴のもう⽚⽅が⼀⾜だけであった。


なんだこの不思議な光景は?


いや、そうじゃなくて私の上履きは…?


前回に引き続き上履きがなくなった私は、1⼈でキレてしまった。


「なんでないのよ?何回私の上履きを隠せば気が済むわけ?てか、幼すぎてもはや呆れる」


「ホノカの上履き、カタカナで名前書いてあるよね?さっきあったよ」


そういったのはナルト。

本当の名前は違うけど、みんながこう呼んでいるから私も真似している。


でも、ナルトとはめったに話さない...。


⼀応、ナルトについて⾏ってみると、さっき私がみたご丁寧に並べられた、キョウコちゃんと私の⽚⽅ずつの上履きだった。


なぁーんだ。


あらためて、私はその上履きを⾒つめる。


サクラちゃんは私の隣で「どうしたんだろうね」といって周りを探している。


さぁ、ホノカ。

私が⼤好きな有栖川有栖先⽣のアリスと⽇村先⽣だったらこの状況をどう⾒るか?


「あっ!これって前になくなった靴と同じ右だ!だって、右の靴は左の靴にある飾りがついてないもん!でもなんでよりによって犯⼈は、汚い⽅を盗るかな…。」


私は⼀応、サクラちゃんに確認をとることに。


「私とサクラちゃんって、上履き並べてあったよね?」


「えっ…。どうかな?」


なにそれ?

なんではぐらかすの?


もやもやした気持ちを抱えたまま、私達は急いでグラウンドに出た。


今回は、いつも以上に調⼦が悪かった。

キャッチボールでボールを取り損なうし、バットがボールにあたっても少ししかとばなくてアウトを連続してとるし…。


頭の中は授業が終わったあとのことでいっぱいだった。


もしかしたら、犯⼈は私が武道場に戻る前に、上履きを元に戻すかもしれない。


だから、⼀番最初にもどって、その現場を取り押さえてやろう。


もし、そのとき犯⼈が暴れたら合気道でしめようか。


私は授業が終わる直前、担当の先⽣に事情を話して⽚付けを免除してもらうことにした。


「私さ、⼩学校のときに2回上履き、隠されたんだ…。だから、今回のと前回の合わせて合計4回も隠されたの。この調子で行ったらギネス狙えるかも?」


私は、終わりの挨拶をする前に隣にいたサクラちゃんに⾯⽩半分でそう⾔った。


「隠されたわけじゃないでしょ!」


うん?


サクラちゃんがこんなはっきりと否定することなんてあったっけ…?


それにしても、そんなに怒らせるようなこと⾔ったっけ…?


私はこの時確信した。


サクラちゃんがこの件に関わっていて、ついムキになってこんな発⾔をしたということを…。


「これで体育の授業を終わります。ありがとうございました!」


その声を聞いた瞬間、私は⼀⽬散に駆け出していた。


どんなに⾜が遅くとも、こういうときにはそこそこ速く⾛れる。


武道場にぶっちぎりで1番についた私は、その上履きのところでずっとみんなを待っていた。


誰かが来るはず…!!


すると、みんなに紛れてキョウコちゃんが⼊ってきた。


キョウコちゃんに⼀連の話をすると、びっくりしていた。


そして、キョウコちゃんの話によると…。


「私ね、着替えるときに靴をぬいでちゃんと並べてたの。でも、1⾜しかなくて誰かが蹴っちゃったのかなと思って1⾜を靴箱の中に⼊れてたんだ。」


つまり、私が靴箱で⾒た不思議な光景はそれだったのか。


そして、この私の上履きの隣にあるのは、キョウコちゃんが無かったといったその1⾜…。


すると、カミヤ先⽣があわててやってきた。


そして、私の⾜元にある2⾜をみてびっくりしていた。


「なにこれ?おかしいね。どこ⾏ったのかな。」


先⽣は、その2⾜を物珍しそうにまじまじと⾒つめていた。


「ホノカちゃん、先⾏ってるね!」


私の荷物を持ってきてくれたサクラちゃんは私にそういった。


そしてその直後…


「あったよ!私達が着替えたところに!」


サクラちゃんは、私の消えた⽚⽅を⽚⼿に持ってきた。


ひとまず安⼼…?


だけど、もう1度サクラちゃんに聞いてみる。


「私達、⼀緒に上履き並べてたよね?」


「うん…」


今回、サクラちゃんは(先生の前だから?なのか)正直に⾔った。


先⽣は、まるで「?」が頭の上に浮かんでいるかのようにポカンとしていた。


残念ながら、まるで当てにならない。


でも、これだけは明らかだ。


サクラちゃんが、この一件に関わっているであろうこと。


イジメのリーダー(略してIL)が裏で手を引いているであろうこと。


だって、この件について放課後に担当の先生と再度話し、かなり遅くなったにもかかわらず、校門の前で私が帰るのをわざわざ確認していましたから、ILは。

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消えた上履き @sen_chihiro

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