消えた上履き

前編

ん？

サクラちゃんがこんなはっきりと否定することなんてあったっけ…？

それにしても、そんなに怒らせるようなこと⾔ったっけ…？

＊

私はホノカ。

読書が⼤好きで運動が⼤の苦⼿の中学2年⽣。

だんだんと寒さが厳しくなってきた11⽉の下旬、寒さに⼿をこすりながら着替えている。

そう、今は4時間⽬の体育が終わったあとの着替えの時間だ。

「サキコちゃんが上履き、持ってっちゃった。」

そう⾔ったのは、隣の席のサクラちゃんだ。

彼⼥とは、よく⼀緒に教室移動をしている。

そしてサキコちゃんは、1学期に私をいじめた⼦たちの一人。

それにしても、サクラちゃんはなんでそんなことを⾔っているのだろう。

私は、その⾔葉を制服のリボンを整えながら聞いていた。

リボンを結び終わり、体育の荷物をまとめ、お待ちかねのお弁当が待つ教室に⾏こうとして上履きを履こうとしたら…。

「あれっ？上履きの⽚⽅がないんだけど！体育が始まる前は絶対あった！なんで？」

すると、隣のクラスのヨウコちゃんやキョウコちゃんたちが駆けつけてくれて、⼾惑う私と⼀緒にキョロキョロ、親身になって探してくれた。

もちろんそこに、サクラちゃんもいた。

ヨウコちゃんがその場に散らばっていた上履きをきれいに並べてみると、私の靴の⽚⽅がないことが明らかになった。

「隠されたんじゃないの？」

キョウコちゃんは⾔った。

するとそのとき！

「反対側の更⾐室にあるんじゃない？」

誰かが⾔った。

説明しておくと、私の学校の⼥⼦更⾐室は2つあって武道場っていう教室がその間にある。

ふたつの更⾐室の距離は結構離れてるし、そんなことはないだろうと思いつつも反対側の更⾐室に⾏くと…。

「あった！なんで！？意味わかんない...」

隣の更⾐室のところに放り出されるように、⽚⽅の私の靴があった。

でも、上履きって歩かないよね？

私の上履きだけ、⾜が⽣えてるってないよね…？

‧‧‧「サキコちゃんが上履き、持ってっちゃった。」

ん？

そういえばさっきのサクラちゃんの⾔葉。

もしかして、サキコちゃんが私の上履きをここに移動させたってこと…？

サキコちゃんは以前、私がいじめのことを先⽣に話したから恨んでいてもおかしくない。

⼗分に可能性はある。

でも、なんで今更？

夏休みが始まる前から今まで、サキコちゃんは何もしてきてない（と私が思っているだけかも）。

とすると、なぜサクラちゃん…は、あんな不思議な発言を？

ぐぅー

こんなことずっと考えていたら、私のお腹と背中がくっついちゃう！

とにかく、お弁当を⾷べて栄養補給しないと！

私は、探してくれた⼦たちに⾒つかったことと探してくれたことへのお礼を⾔って、急いで教室まで⾛った。