第6話

「おまえ!無事だったのか!」

「おとうさん!」


夜明けの頃にたどり着き、黒猫は簡素な武装をした集まりの中に少女をとどけた。


「怪我は無いか!」

「猫ちゃんが助けてくれたの。」

「そうか、あいつらが。」

「にゃあ。」

「あ、お前!」


そう黒猫が一声かけると走り逃げて行った。


「ゴロの方は?」

「それは…。」


少女が青くなった事から、男はあの猫は犠牲になったのだろうと理解した。そしてあの二匹をふん捕まえて野盗に送ろうと死にもの狂いで探した自身を恥じた。


八百屋の主人は集まってくれた友人に頭を下げて、その集まりは解散となった。皆笑顔であった。


八百屋はたとえ黒猫が無事でも、以前のように一緒に居られないなと感じていた。我が子と共に家をくぐり、彼の妻に子供を託すと少し屋根裏が騒がしい。


眠気を自覚しながらも屋根裏に顔を出すと猫二匹が荷造りしていた。そしてゴロ猫の方がこちらに気が付いた。


「あにゃ!えっと、ごめんなさい。」


ゴロ猫が生きている事に驚き、謝るゴロからは少しだけ鉄の香りがした。


「ええと、あの、おわびといってはにゃんですが、こちらにお金、おいておくので。」


彼らの指し出した物は見覚えの無い貴金属や宝石であった。改めて猫を見るとその大きな顔からその表情が判った。同時に声からも申し訳なさを聞き取れる。


「すいません。もう、出ますので。」


そう言って二匹はそれぞれ荷物を背中と首の後ろに巻いて降りて行った。その姿に主人はなんて声をかければいいかわからなくなってしまった。


二匹が店の入り口に来ると、娘が一瞬怯える。そしてゴロはそれを悲しそうに見て目を伏せた。


「ごめいわくをおかけしました。それでは。」


そういって二匹は後ろ脚で立ち、頭を下げて、四足になり背を向けて歩き出した。違和感のある二匹の背中は、いつも尻尾が立っていたので今の様に寝ている状態は初めてだったからだ。


それに気が付き主人は家の奥に飛び込む。急いであの猫達に渡す予定の給料をひっつかんで店前に出ると、少女が意を決した顔で手を差し出していた。


「頼む。」

「うん!」


そういって給料をつかんで少女は駆けて行った。




「はあ。」

「にゃあ。」


とぼとぼと歩く猫二匹。猫らしく肩を落としている。


「迷惑かけちゃいましたね。」

「にゃう。」

「それにみられちゃいました。小さな子の教育にわるいです。」

「にゃうにゃあ。」

「むむむ、そうですけど。」


「ごろちゃん!」


その声に二匹は振り返ると少女が駆けてこちらに向かってきた。


「にゃにゃ、大丈夫ですか?」

「にゃ。」


少女は立ち止まり、はあはあと息を切らす。そして、息を整えて直ぐに。


「はい!お給料!」

「にゃ、にゃああ、ありがとうございます!」


それをゴロ猫は器用に両手で受け取る。そして。


「ごろちゃん、ちびちゃん、ありがとう。」


そういって少女は二匹の頭を撫でた。それに大小違う喉の鳴らし方をした猫達は


「はい!」

「にゃあ!」


そう答えた。短いやり取りであり、彼らはすぐに別れた。だが猫たちの尻尾は天を指していた。

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ねこねこ大冒険 中立武〇 @tyuuritusya

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