8月、9月、12月
『飛行機雲』
ぐんぐん伸びていく飛行機雲の先にいるのが、あなただったらいいのに。
あなたが私を思ってくれる気持ちがその場に残って、雲を作り出しているんだったらいいのに。
そしたら私は目に見えるあなたの気持ちに安心して、ここで待ち続けられるのに。
不安ばかり積み重なって、私の周りだけいつも雨模様。
(2023/08/17)
『ホントウノ』
別れの時に、簡単にさよならを言える私の恋は、本当の恋じゃないんだって。
泣いて縋ってボロボロになって。そんなのが、本当の恋なんだって。
苦しくて辛いのが恋なんだったら、私は恋なんてしなくていい。そんなのいらない。だから。
恋を知らない私は今日も、恋しくなんてないあなたにキスをする。
(2023/09/07)
『電話』
受話器を取る。指が覚えた番号を打ち込む。数回のコール音の後、あなたの声が響いた。
連絡を取り合う手段なんていくらだって存在するはずのこの時代に、電話だけが私たちを繋ぐ糸。
ある時偶然知った番号が、公衆電話のものだった事実には蓋をして、私は今日も、名前も顔も知らないあなたの声を聞く。
(2023/09/11)
『雨にかえる』
その人は、雨女だった。いつも傘と一緒で、傘を差した写真ばかり残っている。
その人が亡くなったのも秋雨の降る中だった。しとしと降る雨の中、静かに息を引き取った。
そして今日。昨日までの雨が嘘みたいな秋晴れの空の下、あの人は煙になった。遮るもののない場所に、きっと登って行ったのだろう。
(2023/09/15)
『一人ぼっち』
強い強い恨みが、幽霊になるんだっていうんなら、あなたに嫌われて憎まれても、嫌なことをいっぱいしたらよかった。
暗い部屋の中で、もしもあなたの恨みに殺されるんだったら、私はそれで良かったのに。
どうして置いて行っちゃったの。
一人ぼっちの夜は長すぎて、涙が枯れても明けてくれないんだ。
(2023/12/05)
X(旧twitter)放流小説(2023年) 須堂さくら @timesand
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