第3検索 「蟲を潰す方法」

「本当に、ここは蟲が湧いて湧いて仕方がない場所らしい。」


チャリ…、と、細い鎖が音をたてる。

すっ、と目を細め、眼下のグラウンドにうじゃうじゃといる暗殺者共を睥睨へいげいする。

そんな俺が今いるのは、学校の大時計の上。

人が少しうたた寝している間さえ、『待て』ができないのか。

あぁ…、愚かだ。

なんて馬鹿らしい。

一時ぎにしかならない殺し金稼ぎに命をかけて、永遠の幸せを逃している。

あぁ馬鹿らしい。

あぁ阿呆らしい。

なんて…

なんて。


「あぁ…、かわいそうに。」


雇い主からまともな情報すら与えられずここに来て、ただ未来を夢見て俺の手で死んでいく。

今が10時ではないことには、もうとっくに気づいている。

でも、りょうの門限は8時だし、教師も校長も、教師用の離れの寮に帰っている頃だろう。

だからつまり、何を言いたいかというと、だ。


「何にも気にせずに戦え殺せるってことだ。」


すとんと屋根におり、鎖の両端りょうたんについた短剣を片方手に取る。

右足を後ろに引き、勢いをつけて短剣を投げる。


ひゅっ。


空気を切りき、短剣が飛翔する。

そしてその短剣が地面に刺さった瞬間、そこを起点に衝撃波が放たれた。

蜘蛛の巣状に地面が割れる。

3メートル圏内けんないは死亡、10メートル圏内は気絶、その他は硬直を強いられる。

これだけ大人数のおきゃくさまなんだ。丁重につぶおもてなししてあげないとね。

ふわりと降り立ち、短剣を回収する。

そして、すっかり青く染まった瞳を細め、余命短き暗殺者たちを見つめて口を開いた。


「命を奪うことしかできないクソッタレ共が、俺の生徒に手ぇ出せると思うなよ?」




)ー…----…ー(


sideサイド第三者


そこからはもう、独壇場どくだんじょうとしか言いようがなかった。

猫のように柔らかい体と、(本人は認めていないが)大人にしては小さい身長。

そこに爆発的な脚力きゃくりょく黒百合くさりたんけんというリーチが長い武器。

その上、黒百合は魔力を込めることで最大50倍まで伸びる。

とてつもなく速く、とらえどころのない本当に気まぐれな『ついで』の攻撃。

移動がてらにちょっと攻撃しとくか、と言わんばかりに浅く広く攻撃していく。

だが彼方の場合、『浅く広く』ではなく、『深く広く』。

最高でも3回、当たりどころが悪いと一発でアウトだ。

昏睡こんすいはいいほう、最悪死亡である。

というより彼方かなたは殺すつもりだ。

今は数を減らし、全員殺すか昏睡させたら、昏睡してる奴らをひとりかふたり残してあとはみんな殺して回る。

彼方かなたはこの学校において、他の教師、校長をも超えたダントツの攻撃力を持つ。

ぶっちゃけあいつぜってぇ人間じゃねぇと、彼の戦い(一方的)をを見た者は口をそろえて言う。

なお、今回は物理だけだが敵数がさらに多いとこの上で氷魔法が増える。

発動すると地面が凍り、一緒に足も凍って動かなくなる。

ワンチャン抜け出せても足が滑り、狙いが定まらない。

なのに彼方はスケートリンクのようにスイスイと移動し、速度が上がる。

マジで彼方の領域。

スケートリンクが展開されるとほぼ5分で決着がつく。

そんなことを話している間に決着がついたらしく、運動場はしんとしていた。


「ちっ、睡眠時間が削れる……」


サクサクと息がある奴らの頸動脈けいどうみゃくを切って殺す彼方かなたの脇腹には穴が空いて血がぼたぼたと出ているが素子らぬ動きで無駄なく殺していく。

情報を吐かせる要員兼人質を縛り上げて近くの赤いボタンを押す。

その途端、おなじみの警報けいほうが鳴り響く。

彼方は自分の部屋に帰り、着替えるのも忘れて泥のように眠った。

あんなに大人数だったのは久方ひさかた、二、三年ぶりだった。

最近あまりにも多すぎる。

やはり裏にいるのだろうか。

あの(クソ)隣国のやつらが。



)ー…----…ー(



「クッソ、俺の部屋の目覚まし時計壊したの誰じゃワレエエエェェェェェ!!!!!」

「壊れてないっスよ、これ。」

「うっさい!!」


職員室に殴り込みだと言わんばかりに騒音そうおんを盛大に出しながら入ってくる彼方かなた

ただいまホームルーム予定時刻3分前である。

職員室には担当クラスを持たない教師が何名かいた。

彼方かなたも1ヶ月前までそのうちのひとりだったのに…、と思う。

教師のひとりが投げつけられた目覚まし時計を見て冷静に指摘する。

それに逆上して叫ぶ当たり、通常運転に

その脇腹には穴が空いており、不意打ちで喰らってしまった傷だった。

体に穴が開くのはさほど珍しくない。

だが、今回は不癒ふいの術式が組み込まれていて治癒ちゆに時間がかかる。

この術式を持っている者に、彼方は心当たりがあった。

いるものをまとめ、職員室を出ながら歩く。


「帝国、か」


(クソみてぇな)隣国りんごくこと、エスフィア帝国。

代替わりがあってからどうもきな臭く、女と酒におぼれるクソ国王だという。

レチクルのあるレイヴィス王国とは代々仲が悪く、そろそろ戦争でもあるんじゃないかとうわさされている。

そのために、こちらの才能のもうとしているのだろう。


「めんどくさ…」


クズ教師という肩書かたがきを自他共に認めていたとしても、教師としての矜持きょうじと、がある。

たとえどんな理由があろうとも、彼方かなたは担当クラスを守り抜く。


「すべては給料のために!!」


グッと拳を握る。

担当クラスを卒業・進級まで守れた教師には、特別ボーナスが支払しはらわれる。

彼方かなたは欲に素直だった。

彼は階段に足をかけ────るまえに、横のボタンをなぐるようにおした。


ビ────ッ、ビ────ッ、ビ────ッ


足音が近づいてくるのを確認して、彼方かなたは階段を登る。

その先に、給料が待っていると信じて。




……………続く??


--------------------------------------------------

〜〜彼方に殺されちゃった方々による駄弁り〜〜


モブA「えー、それでは第一回、『あの世トーク』はじめまーす」

モブB「いえーい」

モブC「お腹すいたー」

モブB「そっちの引き出しあけてみ、なんか色々入ってる」

モブC「ほんとだ!」

モブA「死人へのせめてもの配慮か?」

モブB「死人いうなし」

モブA「でも、死んでるし」

モブC「私、一番最初の初激の死亡圏内にいたからよくわからずに死んだんだよね」

モブB「一発KO、ってね」

モブA「おっ、見ろ、ここスマホ繋がるぞ」

モブB「それマジ?」

モブC「わお、アプリのガチャまで…Wi-Fiどうなっとん?」

モブA「うおおおおおお、SSRキャラの麗香様だああああああああ!!!!」

モブB「は────!?!?よこせッ!!!」

モブA「やーだね!あー麗香様、この冷たい眼差し、雪のような肌…、全てが美しい!!!」

モブB「クッソオオオオオオオ!!!」

モブC「いやよくわからんけどきっしょ。」


以上、『あの世トーク』でした〜〜





続く、かもしれん。










ラブラブ╰(*´︶`*)╯♡みてくれてありがとうございました

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

教辞め方法論 夜風 天音 @Serene0204

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ