第2検索 「生徒を全員殺す方法」

「お前ら全員、しねええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

「教師として完全アウト発言!!」


びしょ濡れであらぶりし俺。

箱からチョークを鷲掴みにし、魔法で生徒を追尾させる。


「いや、授業中に寝る先生がいけないんでしょう!?」

「だからってフルボディサイズの水に沈める奴があってたまるかあぁぁぁぁ!!!」


おれが!ぐっすり!快眠かいみんしていたというのに!!

気づけば水の中で窒息死寸前だったんだぞ!

怒るに決まってんだろうが!!


「先生!落ち着いて!」

「俺は落ち着いている、とりあえずおまえも死ね!!!」


授業がまるまる一時間鬼ごっこになった。

断言しよう。俺は悪くない。




)ー…----…ー(




すとん、と無表情になり、宇宙の真理はなんたるかというか、とりあえずなんとも言えない顔になった今日このごろ

俺の口から、は?、という声がすべり出た。


「今…なんつった?」

「その、校長が強制的に先輩を2年Cクラスの担任として指定しました…」

「っ!」


あんのぽんぽこハゲだぬき!!(←校長のことです)

ぜってぇゆるさねぇぞ、クソが!!

ぼきゃっ、と音をたて、万年筆が真っ二つになった。

ひっ、と後輩が慄いているがしったこっちゃない。

俺は今、とてつもなく焼き校長だぬきが食べたい気分なんだ。


「せ、せせせせせせ先輩、万年筆が、万年筆が燃えてます!」

「おっと」


俺の手の中で折れた万年筆が燃えていた。

無意識のうちにたぬきではなく万年筆を魔法で燃やしてしまったようだ。

それもかなりの高火力で。

あぶないあぶない。

握りつぶすとジュっと火が消える。

そしてそのまま万年筆ごと塵にしてぱんぱんと払う。


「後輩君。これ、あのクソたぬきに渡しといて」

「えっ、たぬきって、え、あ、はい…。これ、なんですか?」


手渡した紙を見て戸惑とまどう後輩ににっこり(にったりに近い)と笑いかける。


「今年が終わったらめさせてもらいますって契約書さ。ちょっと先の退職届的な?」

「え”っ」


ピシッと後輩君が固まり、職員室が静まりかえる。

もういい加減ハゲたぬきとは絶交ぜっこうしたかったんだ。

いい機会だよ。

適当に担任やって、卒業式の日に辞めちゃおう。


「先輩、辞めないでくださいよ!先輩がいなくなっちゃったら、いろいろやばいんです!!」

「知るかよ、俺が8年我慢したんだ、後輩君も6年後には辞めると思うぞ?それより先に死ぬと思うが。」


担任ってことは、自分のクラスの生徒が死んだら減給ということだ。

さっさとHRホームルーム始めねば。


2年セカンドクラスであってるか?」

「え、はい」


唖然あぜんとした後輩君をそのままに、受け取った名簿とその他を持って職員室を出る。

俺がいなくなったらいろいろとやばいのは知ってる。

だってそもそもレチクル国立魔法高等学校ここ、俺が来た時は廃校エンド寸前だったもん。

そこを俺が来てからなんとか持ち直してきている状況かんじだ。

ここで俺が消えたら痛手いたでだろう。

でも流石に俺のこと酷使こくししすぎだと思うんだ。

何から何まで。

今は結構マシにはなったが、最初の数年マジで地獄だった。

その頃の教員数は両手で数ええるほどだったからねー。

校長含めて。

だから、三十何人にまで増えた今が奇跡きせきだと思う。


「えーと。ここ、だよな。」


着いた教室は、がっしゃんがらがら、ぎゃあぎゃあわぁわぁとさわがしいことこの上ない。

このクラスには何度か来たことがあるが、その時と全く変わらない。

あぁもう。

どれもこれも、全部あのぽんぽこハゲだぬきのせいだ!!

からりとドアを開けると、俺に視線が集中した。


「前任がお亡くなりとなったので、代わりに担任となった彼方かなただ。

 まぁ、担任変わりは珍しくないからいいとして、いろいろと言いたいことはあるが、とりあえず」


ぐっちゃぐちゃに散乱する物をひょいひょいと避け、教壇に乗る。

総勢20人余りの生徒をながめて言う。


「お前ら全員、ばぁーか」




)ー…----…ー(


sideサイド自称モブZ、桃原玲斗


俺、人生で初めて、正面から真っ向に『ばか』と言われる。

それも教師に。担任に。

夜空のような深い藍色の髪を一つに結び、夜明けのような白んだ青色の瞳をしている女みたいにひょろっちい体のやつに。

そいつはこちらの反応を楽しむように目を細め、『ま、冗談だけど』と笑った。

自己紹介が遅れた。

俺は桃原玲斗ももはられいと

モブエーならぬモブゼットを自称している。

普通のモブと違うところとしては、世界を俯瞰ふかんしていることだ。

そう、俺は常に第三者視点で冷静に見れるのだ。

なお、桃原のMはモブのエムだ。

そのとき、『情報分析大得意派代表(俺分析)』の海山うみやまたくみが手を挙げた。


「先生以外、担任になれる人はいなかったんですか?」


言ったアアアアアァアァァァァァァァ!!!!!

サラッと!こともなさげに!!

そして担任はため息を吐いてだるげに答える。


「俺だってやりたくなかったよ。くそッ、あのぽんぽこハゲだぬき、やっぱシメるか…」


後半はよく聞こえなかったが、相当なことを言っていそうだ。

そのまま有耶無耶うやむやHRホームルームが始まった。

一応俺たちの名前は全員覚えているらしく、健康観察もすらすらと言っていた。

そして、終わると、時計を確認してさっさと出ていってしまった。

まぁ、魔法理論の授業は週2程度だから、教師がこの学校にたったの3人しかいない。

なので一時間ごとの移動量が半端ないのだ。

たぶん。



→→→→→→〜〜〜〜一週間後〜〜〜〜←←←←←←



あれから一週間が経った。

いざ彼方かなた先生と話してみると、めんどくさそうな素振そぶりは見せるものの、最初の『ばか』発言が全くもって信じられないほどの庶民的というか、子供っぽい先生だった。

プリントが一枚と思ったら2枚一緒でキレたり、何もないところでけそうになったり。

あと、帰りの会の時にびしょぬれで来たと思ったら、『授業中に寝ていただけなのにフルボディサイズの水ぶっかけられた、クソが』と先生なのか生徒なのかわからない発言をした時もあった。

なんだかんだで面倒見がいい…、んだとおもう。たぶん。

俺は分析が得意だと言う自負があるが、あれほどにまで読みにくい人を初めて見た。

そしてその人は今俺の前ですやすやと眠っていた。

帰りの会が終わり、日直の合図で礼をして、椅子いすに座ったとたんに電池が切れたようにこてんと眠ってしまった。

そしスマホでてそれを面白がらないわけもなく、パシャパシャと寄ってたかってさっきまで写真をられまくっていた。

その写真を撮っていた奴らはきて寮に帰ってしまい、今この教室には俺と、あと数人しかいない。

その時、ふと先生が目を覚ました。


「ぇぁ?」

「あ、先生」


先生はうとうととしながらこちらを見て、次に真っ暗な外を見る。

今はもう11月。

七時でも十分まっくらだ。

へくちっ、と小さくくしゃみをして、俺に今何時かと聞く。

俺は少しドキッとさせてやろうと思って言う。


「10時です」

「え…っ!?」


がたん!と椅子をって立ち上がる。


「そこまできてる…、いかないとッ!!」

「え…?」


その時俺は、寝ぼけ眼の薄水色の瞳が濃く、真っ青にまるのを見た。

そしてその後、ひゅっ、と、先生の姿がかき消えたのだ。

その後、バンッ!と扉が開く。

教室に残った生徒一同、もう一度呟いた。


「「「「「え……??」」」」」


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教辞め図鑑 第2P


桃原ももはら玲斗れいと

自称モブ。少し厨二ちゅうにじみた言動をする時がある。調子に乗りやすい。

でも、作者が名前をあたえた時点でお前はもうモブではなくなっているのだ。

それなら海山うみやまたくみのほうが何万倍もモブだぞお前。

なお、『モブZ』とは、作者のお気に入りのネームである。

おそらく彼方の謎というか、真相に最初に辿たどり着く者と思われる。

いつモブを脱する(ことになる)のか、実に見物である。


『あ、今日の給食ってゴーヤ?なぁ、お前のプリンと変えてくれね?』

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