あなたよ、この言葉を聞いてくれないか。
珠邑ミト
あなたよ、この言葉を聞いてくれないか。
あなたよ、この言葉を聞いてくれないか。
人とは、おそらく自由の形をつかむために生きているのだろう。
それは配偶者を得ることや、我が子をその手に抱くことに左右されるものですらない。
誰かの腕に抱かれて、魂に染みついた、波にゆすられた記憶を思い出す時、人は安らかなるものに包まれ安堵する。
暖かな保護に充足をおぼえる。
しかしその本質は生存への希求である。
不変への希求、死を忌避する反射。それは肉体への被支配である。自由とは対極にある、願望とすらみなし得ない、生物の反射である。
真の自由とは、そのしがらみからすら解き放たれることに相違ない。
人とは、おそらく自由の形をつかむために生きているのだろう。
生物としての、無意識でのくびきを、ゆっくりと解き放つ時、本当の魂の自由を得て、その本懐を達成する。
人とは、おそらく自由の形をつかむために生きているのだろう。
しかし、そこへ至るための近道はない。
不自由の狭間で噛みしめた時間だけが、人の手に自由をつかませ、その重みを理解させるのだから。
あなたよ、
言いかえるならば、それは、あなたがあなたでなくなっても、わたしは、あなたを愛しているということだ。
どうか、この言葉を聞いてくれないか。
あなたよ、
あなたよ、この言葉を聞いてくれないか。 珠邑ミト @mitotamamura
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