酩酊の危険信号

ざるうどんs

第1話

潮風が鼻を突き抜け、夏の訪れを感じる。私たちは、海水浴に泊りがけで来ていた。


 ここの近くで交通事故が多発していたためか、近くのホテルは格安であった。そのため学生でお金のなかった私たちは、この海に飛びついた。


 海ではしゃぎ、BBQを楽しむ。夏の過ごし方の教科書のような時間を過ごしていた。


 お酒の飲み方を知らなかった私は雰囲気に飲まれ、視界がぼやけるほど飲んでしまっていた。そんな時、海岸で見た目より重い、こんなボトルメールを拾った……


──これは、友達と2人で飲みに行った帰りの出来事です。


 10年ぶりに再会した親友と飲みに行くことになり、積もりに積もった話に花を咲かせていました。

 

 久しぶりであったことと、離婚などの悲しい出来事に見舞われていたため、お酒を浴びるように飲んでいました。気がつくと、目の前には空き缶と空き瓶の渋滞ができていました。


 友達の制止も聞かずに飲み続け、友達は呆れて先に帰ってしまいました。それから何十本か開け、時刻が深夜3時を示した頃、僕も帰路につくことにしました。


 千鳥足で自宅に向かう道中、交差点に差し掛かっていました。そこで僕はある違和感を覚えました。


 辺りを見回すと、母親らしき人物と幼い子供が交差点で佇んでいるのを見つけました。アルコールの回った頭では、「こんな夜中に珍しいな」と思う程度でした。その時に気が付いていれば……


 次の日の朝。二日酔いと格闘しながら、会社への道を辿っていました。昨日の交差点に差し掛かった時、全身の血の気が引いていくのを感じました。驚くことに、昨日と同じ親子がまた佇んでいるのです。


 昨日は気が付きませんでしたが、母親は色違いの3つの目を、瞬きすることなくひん剥いていました。子供は目を瞑り、ただ静かに佇んでいました。


 そんな奇怪な光景に恐怖し、その場から早く立ち去ろうとしました。ですが、どうしても子供から目が離せず、思うように足が動かないのです。背中にはびっしりと汗をかいているのに、寒気が全身を覆っていました。


 そんな中、さっきまで目をひん剥いていた母親が目を細め、僕を睨みつけてきたのです。その時、さっきまで足に付いていた枷のようなものが外れ、僕は逃げるように走り出しました。


 「ドンッ」という鈍い音と共に、僕の体は宙を舞っていました。意識が遠のく中、私の視界には目をひん剥き、「カッコーカッコー」と鳴く子供の姿が映っていました……


 つまりこのボトルメールを拾ってくれた人に伝えたいのは、酒を飲んでも酒に飲まれるなということです。このボトルが過ちの根源です。どうかこのボトルメールを拾った人が同じ過ちを犯しませんように……


──ボトルメールを読み終え、ガラスに映る真っ赤で間抜けな顔が恥ずかしく思えた。


 私は両手で頬を叩き、喝を入れる。その後、ボトルメールを海に投げ返し、みんなの元へ走って戻った。


 この時、私はこの手紙に続きがあることに気が付かなかった。もし気づいていたら全員が死ぬことはなかったのだろうか……


──p.s.このボトルメールには僕の想いを込めました。上手く込められただろうか? 1人であちら側に行くのは寂しいので、あなたも一緒に飲めるようにと……

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