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あれから、七年が経った。
大学を卒業した僕は、志望した大手企業に入り、人事部に配属された。二年前から、当事者として、
ハルは、長年病床に臥していた彼の母親が亡くなった後、すぐにホストを辞めた。
しばらくは、縛りが緩いサパーで生活費を稼ぎながらメイクの勉強をしていたが、昨年、僕を題材に女装男子向けメイクを披露したショート動画がバズり、それをきっかけに各方面から一気に引き合いが来たらしい。今では、女装スタジオや女装バーでの契約を中心に、メイクの方を本業として生計を立てているそうだ。
僕らのうちで一番大きく変わったのは、Rioだ。
僕らが出会った翌翌年、Rioの人生を大きな悲劇が襲った。詳しいことは聞いていない。けれどそれは本当に破滅的な出来事だったらしく、僕らのアイドルは、一言も別れを告げぬままgabbyを去り、数年間表舞台に出てくることはなかった。その間、店のマスターであるトシさんは、彼を庇護し、懸命に支え続けていたと聞く。
この春ようやくgabbyに戻ってきたRioは、すっかり大人になっていた。相変わらずイケメンだ。見た目は心身共に健康そうだし、何か問題を抱えているような様子は、微塵も感じられない。
でも彼はもう、昔のように燦然と笑ったりしない。彼の周りに集まるお客の話に耳を傾け、穏やかで、温かく、優しい笑みを、あの美しい顔に浮かべるだけだ。
何年経っても、あの日の出来事が僕の中で色褪せることはない。あの店は、僕が自分の人生を主役として歩もうと決めた始まりの地であり、彼らは言わば、今の僕の生みの親だ。
それぞれの道を歩んでいる僕らは、ちょくちょくgabbyで再会する。予定のない金曜の夜、僕は店に足を運び、ハルや、馴染みの飲み仲間とゆっくりお酒を酌み交わす。
待っている。
いつの日か、Rioの傷が完全に癒えるのを。彼がまた、心の底から、太陽みたいに笑う日を。あの日、僕の心をとらえた眩いばかりの輝きが、再び僕らを照らす時が来ることを。
(了)
※シリーズタイトルは、ゲイプライドあたりで何度か見かけたステッカー、
"I'm so gay, I can't even drive straight"より
僕は真っすぐに運転出来ない ―― 始まりの輝き @McCoy
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