第7話 あなたにお礼を伝えたく


 〇〇〇〇〇



 窓の外を見る。あの駅員さんいるかしら。

 開会式までまだ時間があるから、予定を聞いて、もし、もし、よかったら一緒にカラーテレビで見ませんかって言ってみよう。

 近所の人も来るみたいだから、一人くらい増えてもきっと父母ともに怒らないだろう。いや、むしろカラーテレビを前に自慢気に胸を張るかもしれない。

 こっそり座布団で座席を確保しておくのも良い。

 だって、恩人だもの。傘を貸してくれた優しい駅員さんだもの。



 蝉は変わらず夏を惜しんで鳴いていた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あなたにお礼を伝えたく 深月風花 @fukahuka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ