間違いなく二人は心から想い合っていて、それゆえに起こってしまったことで。こんな残酷な形で「愛」が証明されてしまうのは、ただただ哀しい。もし自分が同じ立場なら、同じ選択ができるかな。もう一方の立場なら、相手の選択に耐えられるかな。自問してみても、なかなか答えは出せませんでした。優しくて残酷な「愛」の物語。皆様もぜひ、味わってみてくださいね。
完全な主観の物語が二編。読み終えるとひとつの事実が浮かびます。どちらの話にも経緯も詳細も状況も、確りとは、わかりません。わかるのは、二人の登場人物が互いをどう思っていたか。それだけです。恐ろしいほどに心の動きに収斂した物語。ここには、未来でしか選択できない行為とその帰結が描かれています。消えゆくものと残るもの。そこにあったはずのもの。いまはないもの。判断と選択と喪失と受容、そして愛情の物語。読まれた方は、心が震えることでしよう。
前編と、後編で、話し手が代わります。でも、そう言う事は、この際、関係ありません。人を愛する事と、実は、その奥にあるであろう、自己欺瞞。これを、これ程、厳しく追求した、作品を今まで読んだ事がありません。皆さんへ、この、倒錯した恋愛感情を、是非、味わってみて下さい。驚愕される事、保証致します。
誰かを愛したときに、愛する人のためにこういう選択ができるのだろうか、と考えさせられます。