第19話 友達の女に電話させて、ミュートで指示を出してみるpart2
パンジーが通話をミュートにした。
ミュートにすると、トゥルという効果音が聞こえてくる。
その効果音が鳴った瞬間、俺たちは一気に騒ぎ出す。
「ぶっってゃははああっっっっt、おま、女子にもチンパンジー呼びされてんやん! 」
「いつもアホみたいに騒ぎまくってるくせに、女の前ではコレかよ!はははははh」
「パンジーならパンジーらしく木でも登ってろ」
相手に音が繋がらないことをいいことに、パンジーに散々な罵詈雑言が浴びせられる。しかしパンジーは、怒るというよりも安堵の表情を浮かべている。
さっきまでは張り詰めた空気感の通話だったから、今の明るい雰囲気で落ち着いたのだろう。
「マジで…… 次なんて喋ったらいい? 」
パンジーが、疲れたように聞いてくる。弱々しく頼りない声だった。
しかしそんな弱気なパンジーにも、石津は容赦しない。
「パンジー、好きな人聞いてみてよ」
この状況でも、石津は石津らしい。ただただ自分の好奇心のままに突き進んでいる。
石津に深い考えなどない。いつも自分の欲求に素直なだけだ。
そんな石津だからこそ聞ける内容だった。
「バカか、そんなの聞けるかよ… 」
流石に、パンジーはそこまで勇気は無いらしい。もし勇気があるのならここまで会話が滞ることも無いと思うが。
「パンジー、そろそろミュート解除しないと怪しまれるよ」
そう言ったのは松永だ。
相変わらず、冷静に周りを見ている。
ミュートは相手に音声が伝わっていないだけで、通話が終了したわけではない。
俺たちが話している今も、相手はこちらの反応を待っているのだ。
「ミュート解除するから、静かに」
パンジーはそう言って、再び会話をスタートさせた。
もうこの時点で、ミュートによって、不自然な間があいてしまっている。
ここで何か補足をしておかないと、ちょっとした違和感が残りそうだ。
「ラグすぎる、回線悪くない? 」
パンジーは、回線が悪いという理由で乗り切ることにしたようだった。
「そうかな? 回線悪いの? 」
回線の話で、数秒間の間が埋まる。しかし所詮は、数秒間が埋まるだけだった。
またすぐに沈黙が生まれてしまう。
パンジーは、不安な表情だった。
そんなパンジーに、石津が口パクで(好きな人聞けよ)と言っている。
パンジーはそれを拒否しているが、石津が何度も要求してくるため、パンジーは呆れた笑みを見せる。
その後も、表面上だけの会話を繰り返している。
その度に、石津がパンジーに聞けよ聞けよと伝えている。
しばらくすると、それがエスカレートして、パンジーを笑わせようと動き出す。
変顔をしたり、ネットから拾ってきた顔写真を見せたり、やりたい放題だ。
パンジーも、次第に表情が緩んで、声を出す寸前のところまでニヤけている。
パンジーは石津のおかげで、リラックスしてきているように見えた。
もちろん石津は、それを狙ってやる知能は持ち合わせていない。
「うんうん、分かるそれ! 」
石津の影響で、会話に深みが生まれている。最初の方は、表面上の話しかなかったけれど、今は深いところまで会話が進んでいた。
そしてパンジーも楽しそうに話している。
石津は今も(好きな人聞けよ)と言い続けている。
しかし、パンジーが無視し続けるので、とうとう石津は、通話のミュートボタンを押してしまう。
トゥル
賞味期限切れ高校生、世界一の大富豪になる キングリチャード @ryohei8399
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