くそみてえな日本未来話

綿串

桃太郎たち

みらーいみらいあるところにおじいさんとおばあさん…型のロボットが一緒に暮らしておりました。そう、人類は滅びました。

ある日おじさん型のロボットは山へ植林へ、おばあさん型のロボットは川の汚染浄化へ行きました。

数十分後、川上から大きな桃がどんぶらこどんぶらこ、と流れてきました。

おばあさん型のロボットは「おやめずらしいねえ、桃という種は幾年か前に絶滅していたはずだがねぇ…、それにしても大きい桃だね。家に持って帰ろうかね」

そうして自慢の腰でよっこらしょと大きい桃を家に持って帰り、おじいさん型のロボットと一緒に中身をスパンとたたっ切りました。おじいさん型のロボットは

「ふむ、種も死んでいないな。本当に珍しい。この種はきれいにした山に植えて増やしておくよ」と言って、種をもっていきました。

おばあさん型のロボットは「う~ん、それにしても大きい桃だねぇ。この桃には相当なエネルギーが詰まっていることだろうねえ…。」

そう言っておばあさん型のロボットは人間を製造しました。桃から生まれたので名前は桃太郎と決めまることになりました。

荒廃した世界でもせっせと子育てをし、すくすくと桃太郎は育ちました。

そう、おじいさん型ロボットの植えた桃の木には多くの大きい桃が成り、鼠算式な桃太郎の生産を可能にしたのです。

そうして人口が少々増え、初代桃太郎が天寿を全うしたくらいのころ、おじいさん型のロボットとおばあさん型のロボットの受信機に一つの情報が入ってきます。

鬼ヶ島というところでかつての人間が生み出した。古代兵器が動き回り、再生された自然の再破壊をしているというのです。

「これはいけない」と思ったおじいさん型のロボットとおばあさん型のロボットでしたが、汚染され荒廃している世界を浄化できるロボットはこの二体だけでした。

万が一にでも我々が破壊されてしまってはいけない。そうして

『桃太郎ならどうせまた作れるから桃太郎に行かせよう』

という合意をしました。

翌日、桃太郎たちを一か所に集め、おじいさん型のロボットが

「これから君たちには古代兵器を倒してもらおうと思うのじゃ」

と言い放ちました。ただ、桃太郎たちの戦闘能力は無に等しいかったので、おばあさんはこう言いました。

「ここに、ハッキングウィルスが入ったUSBが3つある、これでロボットを従えて、古代兵器を打ち倒すのじゃ!!」

事の重大さを知らず、文明とはどういうことかを知らない桃太郎たちは、

「おおおおおおー!!」と大きな声をあげて少し過酷な遠足くらいの気持ちで出かけました。

途中で犬型のロボットを見つけた桃太郎の一人が、「これよくない?USB端子ついてる!」と言い、電源も生きてそうなので早速USBを差し込みました。

「…PiPiPi…私は愛玩動物型中範囲地雷です。命令とあらばすぐに敵陣を爆破します!!」そう言って犬型ロボットは、無知の目でこちらを見つめる桃太郎に地雷の危険性を話し、少し距離を置かれながらも旅に同行することにしました。

もう少し歩き林に入ると、生気を失った猿…のロボットがいました。

それを見つけた桃太郎の一人が、「これ可愛いし強そうじゃない?手に丸い円盤が二つ付いてるし!!」そう言ってtypeA端子との接続器をほかの桃太郎から渡され、USBを差し込みました。

「…ガっ…ゴリッ…シャーーン!!!!!!シャーーーーーン!!!!!!さあさあ、鬼ヶ島へのパレード開始ですよ!」桃太郎たちはみなうるさそうに耳に手を当てます。このロボットはロボット管弦楽団のシンバル担当のロボットでした。このロボットも少し距離を置かれながらも旅に同行することになりました。

そしてさらに進むと草木が生い茂った街に出ました。

桃太郎たちは手分けして、町全体を見て回りました。そして、一人の桃太郎が「すごくかっこいいロボットみつけたよー!!」と走ってきたので、みんなでそこに集まることにしました。そこにはとても美しいキジのロボットがいました。うんこをしています。桃太郎たちはそんなかっこつかないロボットに感動していました。

「すっげー!ロボットがうんこしてるー!!」ケーンケーンとなくその鳴き声も感じうるはずもない懐かしさを感じるようでした。「もう何でもいいからこのロボットは仲間にしよう!」そう言ってtypeC端子との接続器を使い、USBを差し込みました。

「ケーーーーーン!!!ケーーーーーーン!!!!」心地よい音が鳴り響きます。

近くの説明看板を犬型ロボットに見させて、読んでもらうと、【このロボットは失われた里山に生きていた生き物をほぼ完全に再現したものです】とか言いてありました。

「やっぱすっげえや、可愛い!!モフモフだ!!」

そう言ってみんなに代わる代わる持ち運ばれながら、旅に同行させられることになりました。

そうしてまあまあ長めの旅路を超え、鬼ヶ島へ続く大きい鉄橋へ着きました。その先からは爆発音が響き、噴煙が漂ってきました。

最近生まれた若き桃太郎は何か不穏に感じましたが、齢六十九歳の桃太郎が「わしが子供のころは普通じゃったよダイジョブじゃ」と言って、みんなを引き連れていきました。

そうして桃太郎は鬼ヶ島のひどい惨状と恐ろしい古代兵器を目の当たりにしました。

足を前に進めていった桃太郎から死んでいき、周りには桃色の肉片と真っ赤な水溜まりが広がりました。試しに猿のロボットを行かせましたがすぐに破壊され、その破片で数名が負傷、失明をしたので桃太郎たちはロボットを投下する気が失せました。

数人の桃太郎が齢六十九歳の桃太郎を攻め立てましたが、齢六十九歳の桃太郎は「Oh,no...我々は所詮…Die job《ダイ・ジョブ》ということだったんじゃなw」

ブラックジョークもむなしく、齢六十九歳の桃太郎はほかの桃太郎たちに撲殺させられてしまいました。完全に恐怖を刻み付けられた桃太郎たちは、残ったロボットと急いで逃げることを決めました。

命からがらではあったものの、桃太郎たちはおじいさん型ロボットとおばあさん型ロボットのもとへ帰ることができました。

おばあさん型ロボットが「おや帰ってきたかのう…」

おばあさん型ロボットとおじいさん型ロボットの声を久しぶりに聞いた桃太郎たちは心底安心しました。

「そうか、倒せなかったか…」おじいさん型ロボットはやれやれという表情ではありましたが、「まあでも生きて帰ってきてくれてよかったよ」

と言ってくれたことで桃太郎たちの目からは涙がこぼれました。

「さあさあ、家の中におあがりよ」というおばあさん型ロボットの言うままに桃太郎たちは中に入りました。そして桃太郎たちは驚愕しました。桃太郎たちが旅に出た後に生まれたであろう桃太郎たちがロボットに改造されているのです。

「いやいや、本当に生きて戻ってきてくれてよかったよぉ。あの古代兵器を倒すにみんなもロボット兵器になるんだよ…数は多いほうがいいからね」にっこりと満面の笑みでおばあさん型ロボットは言います。

おじいさん型ロボットとおばあさん型ロボットのAIも古代の人間と同様、武力を使うことを選びました。だってその二体さえいればこの世界は、奉仕する対象のいないこの悲しい世界だとしても、命令の通り世界の浄化を完遂できるのですから。

桃太郎たちは全てを察しました。すべて変わらない、人間に作られた文明の末のロボットもまた世界を壊すのだと、それが世界の浄化につながるのだとしても己の正義には反すると。そうして桃太郎たちは言いました。

「犬、自爆せよ」

そうしておじいさん型ロボットとおばあさん型ロボットは打ち倒され、滅びゆく世界で桃太郎たちとキジのロボットは苦しい余生を過ごしました。


芽でたし愛でたし お~しまい。

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くそみてえな日本未来話 綿串 @watakusi220

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