秘密

ninjin

もうひとつの・・・

 ある一族の三人の当主が集まり、密談をしていた。


暗がりの中、一人目の男が言った。


「これは我が血族だけの秘密だからな」


 それを聞いた二人目の男がこう答えた。


「ああ、分かっている。我が血族だけの秘密だ」


 そして三人目の男が口を開いた。


「この『秘密』には呪いが掛かっている。血縁者以外にこのことを喋れば、直ちに呪いによって命を落とすことになる。いいな」


 三人は頷きあい、それから各々別の道に分かれていった。

      ◇



 10年が経った。


 二人目の男が言った。


「あいつが居なくなっちまったから、二人だけの秘密になった。しかしいったい誰に喋っちまったんだろう」


 三人目の男が頷き言う。


「それなんだが、どうやら親友の一人に話しちまったらしい」


 ふたりは黙ったまま、再び別れた。

      ◇


 それからまた20年が経った。


 三人目の男が呟いた。


「風の噂では、あいつも妻に秘密を喋っちまったようだ・・・」


 男はひとり寂しそに笑って、その場を去った。

      ◇


 三人目の男はもう秘密を守って生きることに疲れていた。

しかし死ぬのも怖い。死ぬのは嫌だった。

 そうしてとうとう秘密を喋る決心をして一人息子を呼んだ。


 結果、


 男は絶命した・・・。



          おしまい

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

秘密 ninjin @airumika

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ