第6話そして魔王になる。

僕は助けた魔族の女性サーヤを妻とすることにした。

生前に憧れていたあの下村彩花そっくりの女性を妻とできたことに、僕は心のそこから嬉しく思った。彼女も僕と結婚できて喜んでくれていた。

サーヤだけでなく、魔族、魔物たちが僕のことをしたってくれる。

彼らは僕を魔王様と呼んだ。


それまでバラバラだった魔族、魔物たちを僕は一つにまとめた。

かなり大変だったけど、皆説得に応じてくれた。時には力を使い、時には利益を説き、時には感情に訴えた。

魔族のサーヤ、シオンが側近として僕を支えてくれた。

ミネルバの使っていた石人形ゴーレムを大量生産し、僕の直属軍とした。

さらに竜族のローラン、豚鬼オーク族のガルバ、人間でありながら僕の配下となった錬金術師のゲイル、堕天使のアークが四天王となって魔王軍を率いて各地を転戦する。


「人間側の軍が聖騎士アランを陣頭に反撃を開始しました」

そう報告するのは側近のシオンであった。


聖騎士アランはあの冒険者たちのリーダーだった男だ。僕を気に入り、なにかと面倒をみてくれたゴブリン村長をゴミのように切り殺した男だ。

奴は人間側で英雄と呼ばれ、勇者とも呼ばれるようになっていた。


僕は全軍を率いて、人間軍と対決することに決めた。

「あなた、ご武運を……」

サーヤが僕にキスをする。

僕はサーヤの体を抱きしめる。

「ああっ必ず勝って帰ってくるよ」

僕はサーヤにそう約束する。

勝ってかわいいサーヤと共に暮らすんだ。僕の願いはそれだけだ。

それを邪魔する奴は何人たりとも許さない。


僕は先頭にたち人間軍に突撃する。

僕の直ぐあとを豚鬼オークのガルバが騎兵を率いて、同じく突撃する。

左翼を錬金術師のゲイルが呼び出した不死兵団が展開し、右翼を竜族のローランが固める。さらに石人形ゴーレムの兵団を率いたシオンが遊撃軍として、人間軍を分断していく。

どうやらまともに戦えるのはアランの率いる聖騎士団だけで、他の軍団は面白いように壊滅していく。


戦いは三日ほど続いた。

人間側が思ったより、粘る。

もう戦っているのは聖騎士アランとその部下百名ほどになっていた。

包囲網を展開し、アランの突撃を幾度も防ぐ。その度にアランの部下は戦死していく。

五度目の突撃に失敗したとき、アランの部下はわずかに十名ほどになっていた。


「お前は数年前に滅ばしたゴブリンの村のことを覚えているか?」

僕はアランの前に進み出て、奴に問いかける。

「知らんな」

アランはそう言った。

奴にとってはとるに足らない出来事だったのだろう。記憶する必要もない、どうでも良い仕事だったのだ。

奴にとってそんなどうでも良いような思いで、僕の生まれ故郷は焼かれたのだ。


「そうか」

僕はアランに一騎討ちを挑む。

千載一遇の機会とばかりにアランは突進してくる。

その聖騎士アランを僕は一刀両断した。

胴のながばで切断されたアランは恨めしそうな顔で死んでいった。


「どうだ、蔑み、馬鹿にして、ゴミのように扱っていたものに奪われ、支配される気持ちは?」

僕は生き残った人間たちに訊いた。

彼らは何も答えない。

ただただ絶望に顔を染めていた。

人を見た目だけで、侮蔑していた報いを受けるのだ。


僕は生き残った人間すべてを奴隷にすることにした。


「魔王様、お帰りなさいませ」

帰還した僕をサーヤは温かく出迎えてくれた。

「ああっ帰って来たよ」

僕はサーヤの黒髪を撫でる。


僕は魔王として、人間の国々を支配した。

彼らは数百年に及び、奴隷として魔族に支配されることになった。


終わり

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最弱ゴブリンに転生した僕はレベル999の魔女に拾われました。強制成長させられ、魔王になります。 白鷺雨月 @sirasagiugethu

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