花
沈月紫苑
華水仙
何度目かの毒を飲み込む。
不味い。駄目な奴とはこういうふうにできるのでしょう。愛されるということはとても幸せで光栄なことだと、世間一般は謳うが、本当にそうだったのでしょうか。そうとも限らない、と私は思うのです。愛も、幸福も、過剰摂取では毒であると。嗚呼そう、根拠もなく出鱈目で法螺吹きになろうだなんてわけなんかでは決してないのです。
私の家は裕福層で肥満的でありました。望むものは何でも手に入るそこは、実に夢のようで汚らしい非常に居心地の悪いものだったのです。親から与えられる愛情も、最初は嬉しいものですが、時が経ち自我が強くなるに連れて、私が愛情に対して感じたのは嫌悪のみ、となりました。私はこの愛情を甘受していれば一切の苦労なくして生きていき、それを当たり前とした傲慢な人間にされてしまうと知っていましたので、表面上は笑顔で受けつつも選定したものだけを身の回りに置いていました。ですが、所詮、子供。裏で選定していることがバレてしまうのも時の問題なのです。ただ、バレたとてあの親は我が子に対しては盲目なものですから、お咎めの一言も貰うことはありませんでした。むしろ、何がお気に召さなかったのかしら、どんなものの方がいいのか教えて頂戴ね、だとかとずうっと私に構うものですから、少しの空返事でやり過ごすのです。
我が子は可愛い。親とは皆そうなのでしょう。ですが、その可愛さに目を盗られ、毒になるまで与えてやってしまうのでしょう。誰かから見る限りは華やかで美しく、甘美な響きでしょう。そしてその根本にあるのは見渡す限りに、毒。これをなんと表すべきでしょうか。美しいものには棘があるだとか、さて何処かで聞いたことのあるような言葉でもよいのですが、此処はひとつ洒落た感じで締めたいものですね。そうだ、こんなふうで、どうです。
花 沈月紫苑 @vano7
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