「糸魚川の怪談」は、まるで翡翠のように多面的な輝きを放つ小説である。海の荒波と翡翠ハンターの心象風景が混沌として交差する中、読者は主人公の心理的変遷を追体験する。翡翠の神秘を追い求める情熱と、それにまつわる伝説の「浮き潮」と「キツネ石おじさん」を巧みに織り交ぜ、現実と幻想の狭間に立つ作品となっている。最後に明かされる「沖君」の謎は、小説の世界への没入を一層深める。この作品は、日本の自然と伝承が織り成すホラーの新たな地平を開くものであり、文学的探求の喜びを与えてくれるだろう。
宝石の気まぐれなのか、地球の偉大さなのか。読みやすい文章で、物語の中に引き込まれます。最後の最後まで、不思議な現象が語られます。
いわゆる不思議な話。しかし読み進めて驚くのは、読者の感情を操ってみせる丁寧な筆運びである。主人公の気持ちに同調しながら、翡翠を追いかけ、一喜一憂する見事な一作。