落としたブーツは行方不明

@mia

第1話

「ない! ブーツが一つない!」


 宇宙船に乗ってすぐに、さっき立ち寄った星で買った商品を見ていた彼女が突然叫び出す。


「ないの! さっき買ったブーツ! 右第三足用のブーツがないのよ!」

「それって、汚れがついてたから店員さんに汚れ落としを頼んだやつ?」

「そうそれよ。それがないの! どうしよう」

「落ち着け。落ち着いて思い出せ。まず店でブーツを確認した時一つだけ汚れがついてたから、それを店員さんに預けたよな。残りの七つは俺が持って先に駐船場に他の荷物と一緒に置きに戻った。その後お前は綺麗になったブーツを持って俺と昼飯食いに行ったよな。あの店に置き忘れたとか」

「ううん、違うわ。ちゃんと持って出てきた。宇宙船に戻ってくるまで持ってたわ」

「じゃあ、戻ってきてどうした」

「えーと、えーと、あ! 服に食べかすがついてたのに気づいて、取るのにブーツの袋を宇宙船のプレートに……置いた」

「じゃあそのまま出発しちゃったってことだな。宇宙空間に出ちゃったってことだ。 もうブーツは諦めろ」

「いやいやー! あの星の限定ブーツなんだから。ブーツ七つって残りの足一本何を履くのよ!」

「似たようなブーツを買ってやるから諦めろ。今頃きっとブラックホールの中だよ」「あのブーツは限定ブーツなのよ」

「諦めろ。今頃は地平面を楽しく散歩してるよ」

「何わけわかんないこと言ってるのよ。バカ」

「ったく、しょうがないな。探してやるよ」


 とりあえず今まで通った近辺を探す、宇宙船の頭脳ND13が。

 数時間後、ND13から報告があった。


「あったぞ。途中の星に落ちているようだ。ここだ、ここ。この星の『イタリア』ってお前の落とした ブーツじゃないか?」

「違うわよ。サイズが違うでしょ。私のサイズも分からないの? あれよりサイズ大きいわよ」

「え? デカ」


 俺とEN13の声が重なった。

 でも叩かれたのは俺だけだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

落としたブーツは行方不明 @mia

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ