サイドストーリー「トトに罰ゲーム」

「さぁ、着いたわよ」


 モモが、トトを縄に縛ったまま連れて、モモの部屋の床上に置いた。


「女神である私を、こんな所に置くなんて、どういうこと!?」


 トトは、モモに向かって、怒り始める。


「トト。あなた、文句が言える立場かしら?」


 モモは、トトの額に人差し指を置いた。


「ね、姉さん!? それは、ダメ!」


 トトの表情が一変し、焦りに変わった。


「こうでもしないと、トトずっと怒っているでしょ?」


 トトの額を指している指先が、光り始める。


「そうね、加える規制は、怒りにしとくわね。次、怒ったら、体をくすぐられる感覚に陥るから、気をつけて」


 トトの額を指している、指先の光が消える。


「姉さん。やりすぎだよ。いくらなんでも、縛りの契約なんて」


 トトは、落ち込んだ様子で話す。


「これから、決めるのは、講和条約よ。トトが怒って話が進まなかったら、意味がないじゃない」


 モモは、立ち上がり部屋の出入り口の方向に顔を向ける。


「ねぇ! 椅子と机を持って来てー!」


「わかりました」


 モモが、声を張って呼ぶと、巫女の声が聞こえた。


 しばらくすると、巫女が椅子と机を、何度か往復して持ってくる。


「ねぇ」


 一通り運び終わった巫女に、モモは話しかける。


「モモ様。どうかいたしましたか?」


 巫女は、不思議そうな顔でモモのことを見る。


「あなた、そろそろ名前が欲しいとは、思わないの? 名前がないと、呼びづらいのよ」


「私は、誰でも付いている名前を捨てることで、モモ様のサポートが遠隔で、できる能力をもらっているので、名前は必要ありません」


 巫女は、名前を捨てることで、通常できるはずがない遠隔で、バフ魔法をかける力を手に入れている。


「今のあなたの実力なら、遠隔で無くても、戦えるし問題ないと思うけど」


「慢心は、いけません」


 こうなると、私がいくら言ってもダメなのよね。


「わかったわ。トトを、椅子に座らせて、縄を解いてくれる?」


「わかりました」


 巫女は、トトを起こして椅子に座らせようとする。


「私の許可なく、触らないで……きゃははは! くすぐったい!」


 トトは、途中まで巫女に起ころうとしたが、笑い声をあげ始める。


「私の契約を、早速破るんじゃないわよ」


 まぁ、ちゃんと契約が結ばれているか、確認できたから良いか。


「や、やめてぇ! くすぐったいのよ! きゃははは!」


 トトは、笑い続けている。


「怒りが静まれば、くすぐられている感覚が無くなるわよ。早く、怒りを鎮めなさい」


 モモは、トトが冷静になって、椅子に座るまで、大人しく見守った。




 落ち着きを取り戻したトトは、椅子に座り、巫女に縄を解いてもらった。


「姉さん。講和条約の内容を早く決めましょ」


「さっきまで、笑い転げていたのに、いきなり冷静になるわね。それに、負けたのはトトよ」


 モモは、トトの様子を見て、苦笑いをした。


「モモ様、お茶を持って来ました」


 巫女は、持って来たお茶を机の上に置いた。


「ありがとう。今回の講和条約は、基本的に私が決めるわよ。トトに選択権はないから、そこは了承してくれるかしら?」


「わ、わかっているわよ」


 トトは、ふてくされた表情をした。


「本当なら、女神の力を剥奪して、神界からも追放される程の罪になるのは、自覚している」


「姉さん。さすがに、それぐらいは自覚しているよ」


 モモの考えに、トトは頷いて返事をした。


「だけど、姉である私の考えでは、それはトトにとって、甘すぎる罰よ。トトも、馬鹿ではないから、そうなるって覚悟していると思っていたわ」


「よく、わかっているね。そうよ。それぐらいの罰は覚悟している。早く、それに決めて」


 トトは、動じない様子で、モモの目を見つめている。


「だから、私は決めたのよ。今回の講和条約では、その条件を提示しない」


「な、なんで……」


 モモの言葉に、トトは驚いた様子を見せた。


「トトには、私が考えた罰ゲ……条件の方が、聞くと思うわ」


「姉さん。今罰ゲームって、言おうとしてなかった? 姉さんの考える罰ゲームって、嫌な予感しか……」


 トトの顔色は、青ざめていく。


「トトには、これを着て私の召使いになって貰うことにしたわ。持って来て!」


 モモの言葉を合図に、巫女が黒いカバンを持って来た。


「姉さん。これは?」


 トトは、カバンを見ながら、モモに聞く。


「前からトトの髪型と合うと思っていたのよ」


 モモは、嬉々としながら、黒いカバンを漁り衣装を取り出した。


「こ、これって……」


 トトは、モモが取り出した衣装に、言葉を失った。


「トトに着てもらうのは、メイド服よ!」


「絶対嫌だ!」


 トトは、モモの言葉に即答で、拒否をした。


「あら? そんなに言葉を荒げて良いのかしら?」


「や、やめ……ひひひ! やめ、やめて、きゃはははは!」


 トトは、体をうねらせながら笑い出す。


「トトには、メイド服を着て、しばらくの間、私の召使いになってもらうわ。プライドの塊となっているトトにとって、誰かの下で、恥ずかしい格好で、召使いするなんて、一番屈辱的でしょ?」


「絶対にやらな……ひぃ、ははは! 」


 トトは、否定しようとしたが、契約の効果で笑い始める。


「最初に言った通り、拒否権はトトにないわ。諦めることね」


 トトは、その後一時間ほど抵抗を続けたが、最終的には折れて、モモの要望に応じた。







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スキル『リスナーによる行動選択権』のせいで、俺のダンジョン配信が平和に終わらない るい @ikurasyake

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