彼女達のこれから

 大きなお風呂のある家に暮らす。

 それはイリスの子供のころからの、ちょっとした夢だった。

 別段そこに大きな理由があったわけではないが、大きな湯船につかって手足を伸ばし、のんびりとしてみたかっただけのことだ。

 魔法学園にいたころは寮生活だったので、それなりに大きなお風呂こそあったものの、あまりそういう気分になれなかった。


「どうしてみんなで一緒に入る必要があるんだい?」


 と、イリスが尋ねる。

 現在イリスの家のお風呂には、ルブリムとヘイゼル、それから遅れて合流してきたユスティの三人で裸の付き合いをしていた。

 実際、イリスは今動けないわけだから、お風呂に入るなら誰かに手伝ってもらわなければならないのは理解できる。そもそも、今日に関しては適当に寝かせておいてくれた方が助かったのだが。

 三人はそれぞれ身体や髪を洗いながら、何やら女の子らしいやり取りをしている。イリスは一番最初に全身を綺麗にされて、髪をまとめられて湯船に付けられたままそれを眺めていた。

 全身に染みわたるお湯が心地よい。どうやら道中、ユスティがそれなりに値段のする魔力の籠った水……聖水と呼ばれるものを買ってきてくれたらしく、それを混ぜたお湯は確かに活力を与えてくれる。

 なのでイリスは、ぼうっと彼女達を眺めながら、その身体でも観察することにした。

 三人の中で一番スタイルがいいのは、やはりルブリムだろう。身長も一番高く、均整の取れた美しい肉体をしている。

 その次がヘイゼルで、胸はルブリムに及ばず――と言うか、順番的にはイリスの次に小さいものの流石に元貴族だけあって綺麗な白い肌が眩しい。

 そしてユスティだが。


「何を食べたらあんなに育つのだろうね」


 ぼそりと呟いた声は、小さく反響して消えていく。

 身長こそイリスとそれほど変わらないのに、ある一部だけが全く違う。四人の中で一番の育ちぐらいを見せていた。その上で形もよく、全く崩れていない。これはイリスでなくとも、思わず甘えたくなってしまうだろう。

 いつもと違って眼鏡も掛けていないので、綺麗な瞳がよく見える。何となく大人しいような雰囲気だったが、見れば割と鋭い目をしているのに今気が付いた。


「しかしまぁ……」


 自身の身体を見下ろす。

 悲しいぐらい育っていない身体がそこにあった。

 こんなものを弄っても面白くないだろうと、そんな考えに及んでしまう程度には、イリスも彼女達に毒されていることには気付かない。

 やがて三人が、湯船に入る。

 イリスが小柄とは言え、四人が入ってもまだ多少の余裕があると言うのは、やはり随分と余裕がある広さだった。この家の元の主も、普段から何人かで一緒に入っていたりしたのだろうか。

 ……とも思ったのだが、実際のところは魔法の研究に水を沢山貯めておく場所が欲しかったとか、そんなところだろう。


「イリス」


 などと考えに耽っていると、いつの間にか真横にルブリムがいた。

 もう反対側には、ヘイゼルがいる。そして正面にはユスティ。


「あ、あの、君達?」

「イリスは頑張ったから、ご褒美をあげるって」

「はい。三人で話し合いました!」

「それじゃあ、イリスさん、力を抜いて楽にしていてくださいね」

「ま、待ちたまえ! ボクは今日、とても疲れているわけで……」

「まあまあ、そんなこと言ってもイリスさんの身体は正直ですよ」


 なんとも三流悪役のようなことを言いながら、ユスティがイリスの身体に触れてくる。

 実際問題その通りに反応してしまっているのだから、反論のしようもなかった。逃げようにも身体に力が入らない。


「まぁ、そうだね。お互いに今回は頑張ったわけではあるし、相互にご褒美を……ひゃんっ! 人の話は最後まで……!」


 勿論、彼女達がこの状況でイリスの話を最後まで聞くはずがない。

 なんやかんや言いながら、イリス自身がこうして触れ合うことを楽しみにしていたことは、すっかりバレてしまっているのだから。

 結局、色々な疲れがあって翌日の夕方まで四人はぐっすりと眠ることになった。

 その日の夜に屋敷の中に響いていた甘い声は、当然四人だけのものであった。

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追放美少女最強魔導師イリスの日々 ~気付いたら何故か女の子だらけのハーレムが出来上がっていました~ しいたけ農場 @tukimin

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