終わった昨日と始まる明日

あおいたくと

終わった昨日と始まる明日

このときがもしやってきたら、世界の終わりか、くらい思っていたのに、昨日と同じような今日が始まった。

私は昨日、一年半付き合っていた彼氏・天野裕也と別れ合った。



目が覚める朝。

家に帰ってきてほろりとだけ泣けた目は、それでも若干腫れている。

昨日の夜の余韻を思い出させてくれるには十分だ。

不思議と気持ちは穏やかで、いつもの連休二日目の過ごし方のように起きがけのストレッチを始めていく。

さらに私のルーティンは進む。

昨日と今朝で違うことは、もう天野とは彼氏彼女の関係ではなくなってしまったということ。

それでも、私の日常は問題なく回ってしまうのだということを、もう私は知ってしまったから。

徐々に全身をほぐしながら、ゆるめながら、私の集中も高めていく。

今日は家の中に閉じ籠もっているより、外に出てウィンドーショッピングでもしてきたい。

行きたい地域をリストアップして、ぶらりと歩こう。

やけに割り切りのいい自分に自分で笑ってしまいそうになりながら、ストレッチを終えて朝食の準備に取り掛かる。



天野は、二年前にSNSでやりとりを始めてから距離を縮めていった、同業者の一人だった。

といっても、厳密に言うと、フリーランスの私と起業家の天野とでは、彼曰く「土俵が違う」らしい。同じノマドワーカーでも。

クライアントワークをするか、一から十まで自分で仕事を生み出していくか。

同じようで違うのは仕事のスタイルだけじゃなかった。

文系寄りの私と理系寄りの天野とでは、会話もケンカも論理か感情か。

まあまず、口論になるようなケンカなんて滅多にしてこなかったけど。

お互い幸か不幸か繊細さが少なからずあって、一度壊れたらもう戻れないような気がしてたのだ。

モゾモゾとお互い本音を言い切れない「不満以上ケンカ未満」みたいな、言い争いともいえない小競り合いを時々していた二年間だった。



天野とは、私がなけなしの勇気を振り絞って「付き合ってください」と言ってみたところ、真っ赤になりながら「はい」と応えてくれたので、交際を始めた。

最初は、あのドタイプな見た目にSNSの文章に話す声に、こんなになんでも揃ってる人が彼氏へとクラスチェンジしたとか、嬉しさと不思議さに溢れて。

それでも、少しずつ小さい頃の話だとか、思い出話をする機会があったり、カフェやレストランを薦め合ったり通い合っていくうちに、私は天野を認識する情報だけで天野を好きになったわけじゃないことに気付いた。

考え方が、価値観が、理解できた。

一つずつ新しい天野を知っていくのが、楽しくて、愛おしかった。

どこまでも世界を見てみたい、というのが、天野の理想で。

いずれは私も、同じように世界を見たいと思っていたから、共感できた。

そのうち、同じ景色を隣で見てみたい、なんて、思うようになった。

彼が目指す理想に、私も付いていきたい。

私も私が見たい世界を見に行きたい。

それは私の実力が現実に追いついていかなくて、私がどんどん最低限を維持するのに精一杯になっていった頃、天野は天野のコミュニティ仲間と一緒に海外へ旅立つことが多くなって、憧れが嫉妬に変わった頃に、いったん捨てた。



『天野』

朝の宣言通り、郊外の路地でぶらぶらと個人店を眺め歩いている最中に、ポケットの中のスマホが震えた。

画面には、名前の二文字が表示されている。

え、なんの用だろ?と、昨日の今日なのにやけに落ち着いた気持ちで、私は通話ボタンを押す。



いつしか仕事は、やってもやっても何も上向いている気がしなくなっていた。

いつ仕事が途絶えるだろうかと焦る。空回る。

ただ、新しい仕事を取りに行こうと動いてみても、何も成果は得られない。

いつのまにか私の毎日は、安定もあったはずのフリーランスから、どんどん気持ちから崖っぷちに追い込まれるような日々に変わっていた。

安定じゃない、停滞してるんだと。

何も変わらない、何も変わらないがゆえに、悪くならなければ良くもならない。

いつからだろう。

私は気晴らしに外に出ることを控えて、自宅の中で節電節約しながら仕事するようになった。

天野には会いたくなっても、物理的に会えない日々が多くなった。

天野は数週間単位で海外に旅立つようになったからだ。

電話越しに近況を伝えようにも、電波が悪くて思うように繋がらないとか。

いま電話いい?って連絡しても、「今ミーティング中だから」で、終わる会話が増えた。

そんなことが続くようになったら、弱音も、グチも、不安も、何も吐き出せなくなって。

それならばと、クライアント相手にそんな懺悔を言うこともできず、私はどんどん一人でぐるぐるするようになった。

そこでまだ、遠くに旅立った天野の浮気が心配になるとかあれば、もしかしたら何か変わっていたのかもしれない。

といっても、そうしたって、勝手に私が要らぬ疑いを抱いて、決断をするのが早くなっただけなのかもしれないな。

私には、そんな余裕すら無くなっていった。

仕事を得るために書きたくて。

でも、仕事を得たいがために書けなくなって。

何を書いても、評価されても、他人からの評価を疑いたくなり、それ以上に私は私への評価を疑った。

そして、共感できたはずの彼氏は、パートナーに感じていたはずの天野は、気付いたら傍に居ない。

どんどん愛しい人は一人で、いや彼の仲間たちで、どんどん先へ行ってしまうような。

物理的にだけではなく、精神的にも遠くへ行ってしまうような。

私は仲間にもパートナーにも、どんな関係性にも、もしかしたらもうカウントされてないのではないか?

なんて、考えるようになった。

国外での作業環境をさっさと整えればよかったのかもしれないけれど、今となってはその勇気もどこかに行ってしまった。

停滞という安定がまだ残っているなら、それを不慣れな環境でぶち壊してしまうのが怖かったから。

それでも、"それ”ができている身近なひとを思うと、連絡がつかないから天野のSNSを眺めていると、いかにも順風満帆な悠々自適ライフで、もう簡単に単純に比較した。

いったん意識してしまうと、羨ましさと、嫉妬と、嫉妬と、嫉妬と、自分自身への情けなさと、悔しさと、天野にも自分にも全世界にも怒りやどうしようもなさとかでいっぱいになってしまうから、いつの間にか何も考えないようになって。

たくさん一人でぐるぐるして、たくさん擦り切れて、私は切り出したんだ。

「ゆーくん、別れよっか?」

1ヶ月近くの海外滞在から戻ってきた天野と久しぶりに物理的に再会して、私は迷いなく、愛情も嫉妬も羨望も憎悪すらも擦り切れさせて、別れを切り出したのだった。



「もしもし?」

「かなみ。今、電話大丈夫?」

「うん」

あれ。

天野の声には、不思議な違和感があった。

別れてもやっぱり、一番好きな声だなとは思うけど。

いまは、探るような、心細そうな、声なのだ。

昨日は、近況を聞いていたときにも、別れ話を切り出している最中にも、どこか淡々としていて。

どこか冷たいくらいだったり、なんだかぼーっとしているように感じるくらいだったのに。

まあ、私も私できっと、昨日の今日なのに、軽すぎかこのノリは。

「え、どうしたの?何かあった?」

なかなか反応が返ってこない。

「もしもし?・・・天野?」

とてもよく親しみを込めていた、ゆーくん、とは、もう、呼ばないことを決めていたから。

なかなか話し始めない天野へ、私はもう一度語りかける。

「ねえ、電話大丈夫だけど、ほんとどうしたの?」

「えっと、あのさ。別れることを、考え直せないかなって、話したい」



私は確かに天野が大好きだったはずだった。

私から一歩を踏み出したんだ。

私から告白して付き合いが始まったのは、人生の中で初めてだったし。

そこがハッピーエンドのラストではなくて、しっかり現在進行系で仲を深めていた自信が私にはあった。

私は信じられていたはずだった。

天野は私を大切に想っていてくれたはずだった。

それでも、なんだかもう、何もかもが、信じられないというレベルを振り切って、憧れて嫉妬して濁った先からどうでもよくなってしまった。

”いつ明日食べていけなくなるか分からない”っていう猛烈で強烈な不安は、愛も情も何もかもを呑み込んでいったんだ。

そのくらい私は、たくさん一人でぐるぐるして、やっとのことで決意をしたのだ。

このループに、どうしようもなく惨めで暗すぎる思考のループに、大好きだった人を巻き込んでいてはいけないんだと。

羨ましさとか、妬ましさとかを、理不尽にぶつけてしまう前に、私は別れ話を切り出したのだ。



「え、と、なんで?」

「なんで、というと、あの。っ。一晩経って、やっぱり別れたくないって、思って」

「え、昨日は、別れよう?って言ったら、うんって言ったよね?」

「うん、言ったよ。言ったけど、さ。やっぱり考え直せないかなって思って」

「ほう。ほ、う。で、その心とは?」

「なんで、かなみはそんなに、俺と別れたいのかなって、考えて」

「ん、言ったよね昨日。このまま付き合いを続けてる意味を見失ったって、思ったからって」

「言われたよ。言われたけどさ。

俺は、たぶん、かなみの気持ちをいろんなところで、見落としてきたんじゃないかって、思えてきて、」

と、耳に入れた言葉を、右から左に流しながら、血が沸騰するような、ぐつぐつするような衝動が湧く。

あんなに昨晩は抑えたのに。

最後くらいは印象良く終わらせようと思ってそうしたのに。

「えwなに?それを今ここで言うのっ?」

ハッ。なんて、言ってしまいそうな。

まるで、悪役女子のような、嘲笑うような声が、出てしまった。

私は天野には、天野にだけは、そういう感情を、向けたくなかったのだ。

大切だったから。大切にし続けたかったから。

だから別れてしまったのに。

だからこそぶつけてしまえるのか?



「楽しかった?海外」

「うん。ご飯が合うものと合わないものがあってさ、食べられるものを探るのに最初は時間かかった」

「そうか。楽しかったなら何より」

私は昨日、笑えていただろうか。

久しぶりに天野と会って。あえて雑然とした場所で話したくて、居酒屋を指定してみちゃったりして。

どんな笑い顔を、天野に向けられていただろうか。

天野が帰国して一週間くらいは、事後処理やここから遠い実家に用事があるとかで、やっぱり連絡が取れない日々が続いて。

私は本当の本当に、もういいや、って投げることにしたのだ。

投げることにした、と言いながら、それでも、どこかで、私はたぶん、共有したかったんだ。理解したかったんだ。理解されたかったんだ。

知らない世界を知る感覚を。

知らない世界を知れない感覚を。

行きたい世界へ行った感覚を。

行きたい世界がどんどん遠ざかる感覚を。

一緒に行ける未来を。

一緒に行きたいと想い合っている繋がりを。

一緒に行けなかった現実を。

「変な店に連れて行かれてさ」

「それは本当に変だよ!」

笑顔を貼り付けて、ノリツッコミくらいの勢いで会話を繰り返す。

「いろんな人の主催で、20人くらい集まって」

「へえ、たくさん人いたんだねえ」

「同じような人らがいたの、なかなかに刺激的だったな」

「ふうん。なんていうか、何かが吹っ切れたみたいだね、ゆうくん」

「うん。あの感覚はすごかった。海外に行ったからこそ分かったって思った」

「そ、うかぁ」

「自分の仕事を持ってる人たちと、非現実の世界で語り合うって、なかなか無い体験だったなって」

ひゅっと、息を呑む音が聞こえてしまったかもしれない。

なんだか、穏やかに語られる言葉が、まっすぐに突き刺さる感触があった。

そして、どこかで”そっち”へ行かないように、話をしていたつもりだったけれど、やっぱりというか”そういう”話になるんだなってことは、避けられなかった。

居酒屋の喧騒が、五感から遠ざかる。

体験体感した人だからこそ分かること。

体験体感してないからこそ分からないこと。

海外に行ったことがない私には、大切な人と同じような感覚が分からない。

すぐ目の前にいる人との世界の断絶を感じてしまう。

滲むように広がる、想定しきった絶望感で、胃が埋まりだす。

底なし沼から手を伸ばして、地上の都市へと背を向けて歩くひとへと、声をかけていたようで。

もがけばもがくほど、正解が分からなくなる。

努力しているはずなのに、行動しているはずなのに、何も付いてこない現実の、極めつけはこれなのかと。

「ねえ、ゆうくん、」

本当にリアルに気持ち悪くなってきて、羨ましさや妬ましさから何を口走ってしまうか分からなかったから、私は笑顔を貼り付けたままに切り出したのだ。

「別れよう?」



「あーでもね正直、見落としてきたかもとか言われても、しょうがないことだと思うよ。ごめんねあたしさ天野が海外行ってたの正直クッソ羨ましかったの。ムカつきすぎて悔しくて腹が立ってたの。でもそれ行けた人に言ってどうすんの?天野流(笑)で言うとさ『嫉妬をエネルギーに変えて進め』とか『他人に嫉妬したところで自分を下げるだけ。バネにして自分を上げてこう』とかありがたい言葉に変換するんでしょ?wそれでも消えない嫉妬じゃん?言ってどうにかなるものでもないじゃん?だから黙ってたんじゃん?」

冷静に振り返ったらきっと自分に自分でドン引きしそうだ。

本人がこの場に居ないというのもあるからか、電話口に向かってドバドバと呪詛のハミングが溢れ出す。

喰らえ。必殺☆落ちぶれたフリーランス女子の湿ったヘイトよ。

「仕事も頑張って案件増やそうと思っても何ヶ月も空回り続けて、ギリギリ進行で突き進んでるからとてもじゃないけどいま海外に行くとか無理ゲーだったしさ、楽しんできてね!って笑顔で見送るのにどんだけエネルギー使ったか分かる?

まあマジで楽しんできてほしいとは思ったから祈ってたけどさ。

でもいざ満喫ライフの近況報告見てたら羨ましさ爆発よね。それでも楽しそうだねって思ったから連絡したよね。そしたら連絡しても返事が来ないのよねww仲間たち(笑)とお楽しみですもんねwwまああたしの扱いってそういうものかって思えるようになるくらいには、どんどん擦り切れていったというだけの話なのですよこれが」

いまこそ女優の気分で、とばかりに、だんだん楽しくなってきた。というか、言ってることがクソ重すぎるから、軽く話すことによって重さを紛らわしている感すら出してる。謎にがんばってる。私。

「そーゆーわけで、天野の人生の中でのあたしの優先順位ってそう高くないんだろうなーってことが分かってきたので、あたしもあたしの人生の中で天野の優先順位を考えないようにもしたのでした。ちゃんちゃん♪」

「それは、あの、困るんだけど」

ん??あれ??あれ??

「は。はぇ?ここまで重すぎな地雷並みにぶっちゃけたら引かない?」

「引く、っていうか、圧倒されてるんだけど。

ただ、その。

海外行ってる人見て嫉妬する気持ちは、分かるな、って」

今度はほんとに、ひゅっと、息を呑んだ音が聞こえたと思う。

なんと、そういうカウンターが来るとは、思っていなかった。

何回も"嫉妬の活用法”とか話してたのに全然聞いてなかったんだなこいつ、みたいに、冷められて終わりだと思い込んでいた。

あれ。何かが、何かが想定と違ってる。

「俺だって、何年も海外好きに行ってる人らを見て羨ましかったもん。枕ぶん投げたりとかも超してたしさ。仕事が軌道に乗るまで年単位でかかったから、俺もこんなふうに行ってやる!ってずっと思ってたんだよ。それでやっと行けたんだよね」

あれ、逆に天野がここまで話すって、なんだか珍しく感じてきたぞ。

とか、冷静にアテレコをしてみるものの、現実の私は、すっかり、何秒か前までの威勢のよさがどこかに吹き飛んでしまっている。

ただ、全部の周りの雑音が遠くなっていって、天野の声しか聞こえなくなっていくような感覚はある。

「俺ずっと、自分は羨んでる側で、誰かに羨ましいって思われる側になってるとは、思ってなかった。

でも、そうだよな。もう、俺を見て羨ましいって思う人も、いるんだよなって、気付けた。

気付くの遅かったと思う」

ごめん。

この言葉が、普段めったに言わない天野の、本気なんだって伝わってくる、弱々しさと、強さを感じて。

それだけ、私の心には、まっすぐに、響いた。

「遅すぎ、だよ。遅すぎたよ、ゆうくん」

視界がぼやけてくる。

昨日から天野と話してる間には、泣くことは我慢しようと思っていたのに、いよいよ出てくる。

「かなみもはっきり言ってよ、とか、言いたかったとこだけど、俺も連絡スルーしてたところもある。

でも、このままでは、やっぱり別れたくない」

「いまから伝え合っても、また別れるかもしれないじゃん。ならもうこれ以上知らなくてもいいでしょ?」

「俺がかなみの本音を知りたいから。

いままで知れなかった分、仕事のこととか、かなみの考えてることとか、知りたいから。

これから教えてほしい」

「いいよもう、こんな感じで暗くて重い話ばっかりだよ」

「それでいい。俺、聞くから、教えてください」

「なんでよ?昨日あんなにあっさり別れようって言ったらハイって言ってたのに、信じられないんだけど」

「いま、信じられなくてもいいから、これから信じてほしい、って、言ったら、ダメかな?」

「なにそれw」

探るように、伺うように、少しずつ、ぽつぽつと、天野は言葉を重ねる。

あれれ、SNS発信はだいぶ達者なはずなんだけど。

仕事が絡まない部分では、言語化が苦手だったっけ?

なんて、振り返ってると、だんだん悲観的になってる自分がバカらしくなってくる。

まあ、うん、私自身も、いつもニコニコ無害な彼女的な皮を取っちゃったからな。

「むしろ、あたしが腹黒すぎると思うんだけどさ、こんなんでいいの?」

「いいの!」

また、直球が、来た。

「いいんだ、って、気付いたの。

別れるって言われて、解散して、家帰って、もうかなみと会わないんだって考えたら、やなんだ俺って気付いたの。

昨日言えなかったんだけど、その、えっと、俺と、えっと、別れないで、ください」

「つまりは?」

「結婚してください」

「ふぇ!?」

まってタンマストップ、何がどうしてこうなった。

「ねえ、まって、何かいきなりぶっ飛んでない?」

「あぁぁ、また会ってから言おうと思ってたのに、言っちゃった」

「じゃなくて」

「いまは順調だけど、いつかは俺の仕事が厳しくなるかもしれないけど、とか、言い訳しない。

これからもかなみと一緒に生きていきたいです」

「えっとえっとあのさ、あたし、最近仕事が不調でさ」

「俺が養いますとは偉そうに言えないけど、そうできるだけの努力はします」

「えっと、あたしが、それは嫌っていうか、しっかり働いていきたい気持ちがありまして」

「そういうかなみだからこそ一緒にいたいし、いざとなったらかなみをコンサルして仕事も軌道に乗せます」

「コンサルはお断りします」

「なんで!?」

「公私混同しすぎてあたしが割り切れなさそうで、ケンカになりそうだから」

「同意。じゃあそれはやめます。

でもどんな仕事してても、どんなかなみでも、俺はかなみと一緒に生きたい気持ちは変わらないから」

涙はすっかり引っ込んだ。

でも、心の中がいまは、じわじわあたたかい。

「で、この続きを会って話したいんだけど、いまかなみ外だよね?」

「うん」

「どのへんいるか、教えてくれない?迎えに行くから」

「じゃあ、待ってる」



このときがもしやってきたら、世界の終わりか、くらい思っていたのに、昨日と同じような今日はまさかの展開を迎えた。

私は今日、一年半付き合っていた元彼と、永遠の誓いを立てることになった。



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