交差

「……朝陽くん?」


 自分の過去を聞いた朝陽が唐突に物憂げな表情を浮かべて沈黙し始めたことに疑問の声を上げる。


「僕の、過去はそこまで明るいものじゃないんだよ」


 そんなヤンデレストーカーに対して、朝陽は遠くを眺めながら呟く。


「……ちゃんと思い出したよ。君の家は最後の家。僕の両親が離婚する前、最後の時だったし、お母さんと一緒に歌ったのも君の家が最後だ。思い出したくはない。それでも頭からは消えることはない」


 淡々と言葉を語る朝陽はゆっくりとヤンデレストーカーの方へと視線を向ける。


「ねぇ?どこまで知っているの」


 そして、口を開いて告げるのは疑問の声。

 彼女がどこまで自分のことを知っているのかという問いである。


「えっ……?朝陽くんの過去のことなら全部知っているよ。だから、私は少しでも朝陽くんの寂しさを埋めてあげたくて、」

 

 そんな朝陽の言葉に対して、ヤンデレストーカーは何を今更、とでも言うように口を開く。

 彼女は朝陽の過去の、その何もかもを理解していた。


「僕はお前が嫌いだ」


 そんな彼女を朝陽は否定する。拒絶する。

 愛を否定する。


「えっ……」


「だけど、僕はお前を利用してやる」


 だが、それでも一度は否定した女の手を朝陽は取りながら、憎悪に染まった視線を携える彼は言葉を続ける。


「僕はテレビ業界というそのものに復讐する。ありとあらゆる芸能人を破滅させて、ありとあらゆる局員を路頭に迷わせて、テレビなんて文化を消してやる」


 憎悪。果て無き憎悪

 朝陽は自分の家族を狂わせたテレビ業界そのものに抱く果てしなき、狂った憎悪をぶちまけていく。


「駄目だよ?そんなの……誰かを貶めるよりも、誰かを愛す方が楽しいし幸せに決まっている」


 そんな朝陽に対して。

 ヤンデレストーカーは愛おしそうに自分の手に触れている彼の手を撫でながら愛の尊さを解く。


「なら、そう思わせてみろストーカー野郎」


 その言葉を聞いて、決してブレることのない彼女の言葉を聞いた朝陽は小さく苦笑を漏らした後、挑発的な笑みを浮かべて言葉を吐き捨てる。


「うん!もちろん!最初からそのつもりだから」


 朝陽の言葉に対して、ヤンデレストーカーは満面の笑みで力強く頷く。


「それなら良い。ほれ、お前がさんざんと作りたがっていた僕の家の合鍵だ。これからはいつでも来て良いよ───望海」


「───ッ!私の名前!ふへへ、また、呼んでくれたね」


 狂った愛情を持つ少女と、狂った憎悪を持つ少年。

 望海と朝陽の道がようやく交わった。







 新作です!お願い!読んでぇぇぇぇ!


『自宅の庭にあるダンジョンで魔物を育てているモブ高校生の僕、クラスの美少女配信者を新種の魔物を引き連れて助けた結果大バズりしてしまう』

https://kakuyomu.jp/works/16818023212542787586

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ヤンデレストーカーな残念美少女ドジっ子お嬢様がポンコツ過ぎて逆に可愛くなってきた件 リヒト @ninnjyasuraimu

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