謎の手紙
田島絵里子
第1話
夏休みの登校日、僕は学校の教室で手紙を見つけた。
机の中に隠されていた白い封筒には、僕の名前が書かれていた。
誰が書いたのだろう。僕に好意を寄せる女の子がいるとは思えないし、いたずらにしては手が込んでいる。
封を開けてみると、中には赤いハートのシールが貼られたピンクの紙が入っていた。紙にはこんなことが書かれていた。
「あなたのことがずっと好きでした。
でも、気づいてくれなかった。
あなたに伝えたかったけど、勇気が出ませんでした。
だから、この手紙を書きました。
でも、この手紙を直に渡すことも出来ませんでした。足がガクガクするんです。
この手紙はあなたにとっては永遠に謎です」
手紙の最後には、ただ「さようなら」と書かれていた。驚いてしまった。
こんな手紙を書いたのは、一体誰なのだろう。
手紙を書いた人の顔を思い浮かべようとしたが、思い当たる人がいなかった。
この人の気持ちが想像できなかった。
この人は、誰だろう。知りたい。
だが、クラスメイトのだれも、心当たりがないという。
僕は手紙を元の場所に戻した。返事を書くこともできなかった。手紙を書いた人に感謝したかった。返事を出せなかったことを謝りたかった。なのに、僕は何もできなかった。
そのうち、幼なじみのアキコが、僕に言った。
「あいつを締め上げて吐かせてやった。手紙をくれたのは、英治だよ」
僕は手紙の秘密を胸にしまった。僕も英治のことが好きだったけど、アキコという幼なじみがいる以上、それはかなわぬ恋だった。(了)
謎の手紙 田島絵里子 @hatoule
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