今の私たちに必要なもの
来る日も来る日も働き疲れてしまった。
やっと来た休日ですら瞬きする間に終わってしまう。
仕事をさぼってしまおうかと考えたが、少なくとも今日はだめだ。会社の大事な商談で出張に来ているのだ。
このネクタイを結ぶ時間が憂鬱だ。これから仕事が始まるという合図に体が震える。
集合場所に少し遅れて到着すると、まだ誰もいなかった。
20分を経過してついに人影も見当たらないので、上司に連絡した。
「すみません。集合時間になってもお相手がいらっしゃらないのですが、トラブルでもあったのでしょうか?」
「昼下がりのコーヒーブレイクの時間に何を聞いてくるかと思いきや、新手のボケかね?今日は休日に決まっているだろう。」
最初はからかわれているだけかと思ったが上司の反応を見るにそうでもないらしく困惑しながら電話を切った。
それにしても今日が休日とはどういう意味だ?
今日は水曜日で平日なはず。しかも祝日でもない。
もしかしたら会社が急に今日を休みにしてそれを自分にだけ伝え忘れたのかもしれない。そうだとしたら商談の新たなに日程を聞いておく必要がありそうだ。
しかしいきなり休みになってもやることがない。
商談は2日かかる予定だったのでホテルのチェックアウトまでまだ時間がある。
だがホテルでやれることといっても限りがある。
なにか暇をつぶすものがないか探してみると机の引き出しに聖書が入っていた。
世界で一番読まれているこの本をこれを機に少し読んでみようかとページを進めていると、こんなことが書かれていた。
「一日目に昼と夜を造り、二日目に大空を造ったが、三日目は疲労によりお休みになった。」
ひとつまみ 浅倉浦賀 @AsakuraUraga626
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