孤独な4人の魔法戦士と投石機陣地の秘密

五木史人

魔王城攻略戦時の投石機陣地での出来事


「あたい、ぬるま湯な人生を送りたかった」

「ああああ俺も」

魔法戦士の少女カノンと魔法戦士の少年フリーダも言った。


魔法戦士の少年ツカサと魔法戦士の少年ゲオルギーは、無言で2人の会話を聞いていた。


一応パ―ティーと言うのだろうか?

誰もそれぞれを知らない一匹狼と言うか、ボッチな魔法戦士の4人は、空を見上げた。


ここは最前線からちょっと離れた投石器の陣地。

ボッチな4人の魔法戦士は、ギルド経由の依頼でこの投石器陣地を守っている。


この投石機陣地が若干異質なのは、投石機を扱っているのが、宮中の女中たちだって事だ。


王国は魔王軍に対して、総動員令を発令しているとは言え、可愛らしい少女たちが、こんな最前線の近くまで配置されるのは、異常だ。


「撃てーーーーー!」

王宮親衛隊の伯爵令嬢の声に、投石機から巨石が放たれた。


「こんなに大きな石を飛ばすんだ」

カノンは呟いた。


投石機陣地にいる者は皆、その軌道を見つめた。


そして、巨石は魔王城の城壁に直撃した。

「おおおおおおお!」

最前線の兵士たちの歓喜が、ここまで聞こえてきた。


対して訓練もしていないはずなのに、城壁に直撃させるとは、さすが才女の集まりだ。


魔法戦士ギオルギーは、投石器部隊の指揮官の伯爵令嬢の凛々しい横顔を見た。

宮中の少女たちに比べれば、少しだけ戦場の雰囲気には馴染んでいた。


それでも、日焼けした事なんてなさそうな白い肌の伯爵令嬢の表情から、戦う事への恐怖を感じさせた。


何故彼女たちが、こんな最前線の近くまで来ているのか?

ギオルギーは使い魔の情報から、その理由を知っていた。


ギオルギーは、次の巨石を積む作業をしている少女を見た。

部隊の中でも、一際ひときわ美しい少女だ。


「伯爵はご存知ですか?」

ギオルギーは伯爵令嬢の耳元で囁いた。

伯爵令嬢は、ギオルギーの視線の先を確認した。

王妃に妬まれた一際ひときわ美しい少女。

「噂ぐらいは知っている」

「・・・」

「・・・」

「最前線からは離れているとは言え、投石機陣地が攻撃される可能性は、ない訳ではありません」


伯爵令嬢は、この男は何を言ってるのだ?とギオルギーを見返した。

ギオルギーは、

「王妃は、あの娘の存在を認めません」

「!」

「この陣地ごと・・・戦死扱いに」

「いつだ?」

「魔王城への突入が成功した後辺りでしょうか」

伯爵令嬢は、魔王城を見た。

城壁は壊れたももの、また突入出来ずにいる。

「我々のパ―ティーへの依頼内容は、王への忠誠ではなく、貴方方の護衛です。

お任せ頂ければ、あの少女たちと伯爵家の名誉も含めて、お守りできます」


事態を理解出来ずにいる伯爵令嬢に、ギオルギーは言った。

「安全な逃亡先をご用意できます」


伯爵令嬢は、魔王戦士の表情を探った。


命令のない戦場離脱は、極刑は免れない。

安全な逃亡先と言っても、伯爵となれば、もう家族とも会えない。

この魔法戦士の言う事は、信じられるのか?

しかしあの王妃なら、やりかねない。

王妃のバックには生家の侯爵家が付いている。

侯爵家の部隊が動けば、出来ない事ではない。


伯爵令嬢は、一際ひときわ美しい少女を見た。

底辺貴族の出身だが、その目の輝きは、何かを感じさせた。


魔王城城壁の戦況が変わり始めた。

先陣が突入を開始していた。

戦況は完全に王国優勢だ。


「任せた」

伯爵令嬢は魔法戦士に告げた。

その表情は哀しく儚かった。


「おい!ボッチども、作戦開始だ!」

「召喚オタクのお前が最もボッチだろうが!使い魔を使って孤独を癒してんだろ!」

ツッコミ担当のカノンが叫んだ。


投石機部隊を退避後、召喚オタクのギオルギーは、使い魔を召喚。

その使い魔たちの、爆裂魔法で投石機陣地を爆破させた。

投石機陣地には、大きなクレーターしか残らなかった。


1週間後、魔王城は陥落。

その歓喜の中、この投石機陣地の少女たちの事は、忘れ去られた。


      

        完

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孤独な4人の魔法戦士と投石機陣地の秘密 五木史人 @ituki-siso

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