【400字】カクヨム・コンテストが「秘密」をテーマにした文章を募集していることについて

本文

　多くの人は噂話（うわさばなし）が好きで、えぐい内容ほど喜びます。人間の本質を垣間見（かいまみ）られると信じているからです。自分の秘密は隠しつつ、他者の秘密は知りたいのが、人間の本音と言えます。人間が本質を隠したがり、適度な距離感を大切にするのは、他者に本質を掌握（しょうあく）されると支配されかねないと直観しているからでしょう。誰かにディープな秘密を明かすよう迫るなら、相応（そうおう）の覚悟を示さねばなりません。

　多くの物語や随筆（エッセイ）に秘密を明らかにする要素があるのは、娯楽性が高いからです。しかし、「面白い」秘密ほど、取り扱いに注意が必要です。全くの創作ならともかく、赤裸々（せきらら）なエッセイや実体験に基づいた小説は、作者や題材にされた人の人生を狂わせる恐れがあります。KADOKAWAは『石に泳ぐ魚』事件を知らないのでしょうか。何があっても責任を取らないつもりでしょうか。誰もが参加できるカクヨム・コンテストだからこそ、無責任に盛り上げることに危うさを覚えます。