第2話 頭はH 前編

「雑誌の切り抜きかな?」

「『頭はH』て……」

「というか、これはどこで見つけたんだ?」

 折り畳まれた紙を持ってきた見澄みすみに問う五通ごとう


「実は今朝、私の下駄箱に入ってて。よく意味が分からなくて……二人が話していたのでもしかしたら?と思って」


「さすが、律ちゃん!目敏めざといね。目神様だけに」

「そ、まぁ……」

「褒めてるつもりらしい。そんな気にしないでやってほしい。にしても下駄箱なんて、あるんだな。いや?時代錯誤なのか」

「そう?僕たまにあるよ?IDみたいなの書いてあったりするやつとか」


 ミームになりかけた本心に羨ましさが追いつきはっとする五通。


「マジか」

「ま、それはさておいて。律ちゃんなら自分の能力でなんとか分かりそうなものだけど」


 目にかかりそうな程長い黒髪の少女、見澄みすみりつ

 ②身体系の能力者で、能力名は千里眼フォーカスト : 透視、視野拡大に加え近未来予知も可能な7人の天才の一人である。


「私の能力は過去は分からないので。これから起こることなら分かるんですけど……」

「そっちの方がすごいよ?」

「どいつもこいつもすごいんだけどな……俺の周りは」


 亜麻音あまねこうは、④希少系の能力者で、強化弱化バフ・デバフ : 超能力者の能力を上下限なく高め(強め)たり弱めたりできる。

 見澄みすみりつは先に述べた通り。

 すごくないのは五通だけ。


「つーか、ダメ元で見澄の能力をこうの能力でバフしてみたら?」

「たしかに。何か分かるかもね」

「やってみますか?」

「まあ、俺には出来ないですし?」


 よろしくです。と丸投げようとするも、


「ん、じゃあ」


 人だかりに気付く五通。


「この件は後でにしようか」


○□∬+☆


「すみません。やっぱりダメでした」

「ううん。むしろ……」

「すげえ……やべえ……」


 7人の天才と呼ばれる見澄と亜麻音。その共演に語彙力を失った五通。


「え?」


 そんな五通の頬に手をやる亜麻音。すると、


「せいや!」

「イタっ!?」


 頭突きをかます。


「ごめんね律ちゃん、仕切り直すね」

「えぇ……謝る相手が違くない?」


 構わず続ける亜麻音。


「で、改めて候補を挙げると。名字がHだとして。それが行えるんだから、きっと、人望があるとか?それかイケメンないし美少女……」

「それに、え、経験豊富かと///」

「まあ、天才狩りが出来るんだから。律ちゃんに並ぶ実力者だよね」

「それを踏まえると……ふむ」


 二人の視線が吸い寄せられる。


「ちょ!?なんで二人して僕を見るの!?」


「悪いことは言わない。今すぐ自首するんだ」


「僕じゃないよ!?」


「「……」」


「そうだ!証拠!人を疑ってるんだから。証拠はあるんだろうね?」


「……証拠て。ジョークだっつーの」

「わ、私は一瞬そうかと思ったんですけど。頭がHの謎が解けてなかったので……すみません。五通さんに便乗しました」

「たく、二人共、こうやって冤罪が生まれるんだから!気を付けてよね」


「ま、人たらし故の日頃の行いの良さか悪さというか」


 他愛ない会話劇の中、新たな闖入者現る。


「あ、いた!亜麻音あまねこう」 


「だーかーら、僕はなにもしてないって!」


「て、あんた。やっぱり亜麻音あまねこうの知り合いだったんじゃない」

「あ、いや」

「姫ちゃん。どうしてここに……」

「あはは……」


 候補増えど、されど進まず。


 

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能力音痴と8人目の天才 千早古 @Tihaya-furu

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