コーヒーミルク・クレイジー

カッ…カタッ…


階段を踏みしめる感触が靴から耳へ音に変わって伝わってくる


段々と夢と現実がブレンドしていく中、僕はなぜか階段を登っている


さっきまで海岸に居たのに突然階段を登っているなんて夢ではよくある場面転換だ



階段の上にレトロ感あふれる喫茶店があり


中に皆がいる気がして足早にドアを開けた



「おひとりさまですか?」


「そうです」


「ではこちらへどうぞ」



窓際の席に案内され、目の前にはヤマギワソフトではなく

解体後、跡地に建てられたビジネスホテルが目に入った


「すいません、コーヒーください」


周りを見渡すが他に客は誰もいない。

もちろんさっきまで一緒に居た皆も見当たらない


眉間の間に手のひらを当て頭の中を整理する


1999年の日本橋に戻っていた事

そして今は一人でここにいる事

夢か現実かそれすらも定かで無い


「お待たせしました」


目の前に白いカップに入ったコーヒーが置かれていた


少し酸っぱいような香ばしいにおいが頭の中をスッキリさせ

記憶を無くした時のように実世界へと引き戻していく


これは…現実だ


夢を見ているときは目の前に広がる景色が現実だと感じている

しかし、目が覚めると夢は夢、現実との違いがハッキリと分かる


コーヒーを飲もうと身体を動かしたとき

後ろのポケットからゴトッと音を立て床に何かが落ちた


床を見るとひびの入った見慣れたスマートフォンが転がっており

1月1日 16時36分

と表示されている


やっぱりあれは夢だったのか

深いため息とともに後悔があふれ出てくる


結局、夢の中でもなにも変えられなかった。何物にもなれなかった


記憶と同じ1999年をもう一度やりなおしただけ

本当はみんなともっと想い出をつくって

この時代でも一緒にいるはずだった



一人で喫茶店にいる

あの頃よりも住んでいる家も随分と大きくなり金銭面も不自由はしていない


しかし充実感はあの頃よりも貧しいと感じている


当時、何もない自分が惨めだった。悔しかった。


そんな自分を変えたくてフリーターを辞め、一生懸命働いたはずなのに

それとは反比例して充実感や心のきらめきが無くなっていった

このまま老いぼれていくのが手に取るようにわかってしまった

 

 

様々な思考をかき消すように

海岸で森広さんが言ってくれた言葉が頭の中で響く

「…要さんは何者にでもなれるで…私信じてるから!」




そうだ…約束したんだった。

皆といつかまた会えた時には

あの頃よりもっと笑顔で充実した自分を見せたい


コーヒーを飲み終え喫茶店を出ると

夕日がビジネスホテルを照らしており

心に湧き上がる思いをライトアップしている様に感じた


夕方の日本橋は寒く感じたのでポケットに手を入れると

虹色に光る貝殻が入っていた


「これは…海で拾った貝殻…?」


その時スマートフォンから通知音が鳴る



ポップアップされたメッセージには

(めっちゃひさしぶりー!そろそろ何者かになれた?(笑)

お腹すいたしご飯でもいかへん?)



メッセージに返信すると

すっかり変わってしまった日本橋を

カプセルホテルがあるなんばに向かって歩き始めた


「ここからが本当の僕になれる時だ」








追伸

1999年日本橋ヤマギワソフトで働いていた皆さん、

あの頃と同じ様にこのまま無邪気な笑顔で死ねるかもしれません。

僕と出会ってくれて本当にありがとう。


                   なかむら かなめ(*'ω'*)







最後まで読んでいただきありがとうございます!

僕の初小説になります

実体験をもとに書いてみました

またいい構想が浮かんだら書いてみようと思います!

ありがとうございました!



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1999日本橋ヤマギワソフト★青春ノストラダムス @ka-na-me

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