名残

碧月 葉

名残

 ——なんで人間には「しっぽ」がないんだろう。


 子どもの頃、不思議に思いませんでしたか?

 

 動物にとって尻尾は、バランスをとったり感情を表現したり様々な役割を持っているみたいです。

 けれど、人間には尻尾がない。

 確かに、感情は言葉や手の動きでより多彩な表現ができるようになったので尻尾がなくても良さそうです。

 でもバランスは……うーん、やっぱり二足歩行するには邪魔なのかしら?

 ヒトに尻尾がない理由は十分に解明されてはいないようですが、今のところ不要なものとして退化したというのが有力な説のようです。

 ちなみに、不要なものとして無くなった尻尾の名残、それがお尻の真ん中にある骨「尾てい骨」。

 

 そして私の秘密は……実は尾てい骨が「しっぽ⁈」ってくらい長いことです。

 

 見えないし、比較の難しい場所にあるし……という事で、長めである事には中々気づきませんでした。

 そんな私が、あれ? と思った時のエピソードを2つ程紹介します。



◇◇◇



・エピソード1【V字バランス難しいっ】



「それじゃ、ヨーイ……スタート!」


 コロン……。

 ん? おかしいな?


「お腹にしっかりと力を入れるんだぞ、 ほら、つま先まで伸ばせー」


 体育の先生は簡単に言うけれど、私は転がってしまうのです。

 運動神経はぼちぼち良い方……と思っていたのに、何故か出来ないV字バランス。

 座った状態で足を上げてバランスをとる、なんて事はないポーズのはずが、なんで⁈

 結局、グラグラしっぱなしで、成功せずに終わりました。


 

・エピソード2【腰痛じゃなくてお尻痛】


 事務職として就職した私は、書類とパソコンと睨めっこのデスクワークの日々。

 ある時、痛みに気がつきました。

 ズキズキの元は…… 腰? 股関節? 違う! お尻だ!

 お尻の骨が痛い、そしてどうやらお尻の骨が長い(兄弟と比べたら長くてびっくり。そして父の尾てい骨も長い事が判明。なんで遺伝ってヘンテコな所ばかり似るんだろう)⁈

 痛みの原因は座りすぎによる圧迫。

 運動もしていないのでお尻が薄くなってきたのも一因かな。


 鍛える?

 立ってデスクワークをしようか……。

 そもそも仕事、務まるのか……。

 

 危機一髪のピンチを救ったのは、お尻負担軽減クッションでした。

 尾骨への圧力を軽くする優れもの! (周囲には痔だと思われたかも知れないけれど……)

 


◇◇◇



 という訳で、しっかりめの尻尾の名残が役に立つ場面は全く無い……どころかマイナス&ピンチ……な面しか無いのですが、ピョコっと尖ったこの骨は、自分も「動物」というのを強く感じるパーツだったりします。

 

 さて、ご存知の方も多いかも知れませんが、人間って誰でも尻尾を持っている時期があるんです。

 そう、妊娠初期の赤ちゃん時代!

 胎芽と呼ばれる7週目くらいのヒトはお魚みたいで、しっぽ(エラも!)があります。


 お腹のなかの赤ちゃんって、魚類→両生類→爬虫類→哺乳類といった生命の始まりからヒトの進化を辿るように成長していくから面白いなと思います。

 

 尻尾の起源は魚の尾びれ。

 遥か昔のご先祖さまが、水の中を泳ぎ回るための推進力を得るために持っていたもの。


——尾びれの名残。


 そう考えると、自己主張強めの私の尾てい骨も何だか愛おしく、自分も太古の時代から脈々と繋がってきた生命のひとつという感動というか、今ここにいる奇跡をしみじみ感じてしまうのです。

 

 

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名残 碧月 葉 @momobeko

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