あたたかい

君が作るご飯が好きだった

温かいお味噌汁に健康を考えて作ってくれたおかずたち

どれもあたたかくて、思い出すと苦しくなる。

でも思い出すとまたあたたかくなるんだ。


君が居なくなって2年半、君は病気にかかって死んでしまった。

日に日に飢えてゆく君を見て何度も何度も、

傍にいるから行かないでと心の中で唱えて、

手を繋いで君に温もりを与える。

いつだって綺麗でありたいと手入れを入念にしていた

綺麗な肌はカサカサで、


それでも君の体温だけは綺麗で、心があたたかくなった。

毎日僕に見せてくれた君の可愛らしい笑顔は無くなっていて、

それでも僕に向ける眼差しはあの笑顔の時のままだった。

だから僕もできる限り君に温もりを送って笑顔を向ける。


あたたかい君が戻ってくることを願いながら。


でも数日経って君の容態が急変した。

見送る事ができなかった、着いた頃にはもう君は居なかった。

悔しかった、君のそばにいたかった。

人一倍我慢強い君はきっと、

僕の辛そうな顔を見て目だけでも笑ってくれたんだろう?


ごめんね、君を笑顔で見送りたかった。

君がいなくなって葬式をした、

君の家族はとても優しい人ばかりで、泣きそうになった。

でも涙は出なかった、出したくなかった。

笑顔で今度こそ君を見送りたかったから。

だからご家族の方にも説明をして、

皆君に泣きそうな顔に優しい笑みを浮かべながら、

君を見送った。

正直こんなお願い聞いてくれないと思っていた。


でも、

君からのお話を聞いて娘もそう言っていたことを思い出したよ

って君のお父さんが涙を浮かべて笑っていた。


君はこの家にもう居なくて、

あの温かいご飯ももう食べられない。

でも君がなんだか傍に居てくれているそうな気がして、

君があの笑顔を浮かべて応援してくれているような気がして

心があたたかくなる、もう寒くないよ


ねぇ

君はあの時安心して、笑顔で死ねたかい?

君の事だからきっとあの時の笑顔を浮かべて死んだんだろう。

誰にも見せずに僕だけに向けた笑顔が、

君の死ぬ間際にはあったんだろう?

空想でしかないけれど、

君にだからこそこんな空想が抱けるんだ。


本当に今日もあたたかいね。


_____君がくれた温もり。

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愛と貴方と、君と僕と @puramiko

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