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夏休みは、瞬く間に過ぎ去ってしまう。空はまだまだ鮮やかな群青に澄み渡り、蝉も鳴き続けているというのに、あっという間に授業の再会が訪れた。
「よし、今日から学校だな。休み気分から早々に切り替えろよ」
担任の話に、由花は「だるっ」と呟く。今まで怠けていた分、生活リズムを取り戻すのが難しいようだ。
「それと、今日は転校生が来ている。入ってこい」
ガラガラと扉が開かれる。同時に足を教室に踏み入れたのは、一人の少女。腰まで届きそうな黒髪を靡かせ、姿勢良く歩いてくる。優しそうで、でも何処か意思の強さも見える雰囲気を纏う彼女の姿に、由花は既視感を覚えた。
彼女は教卓の隣に来ると、教室をぐるりと見渡してから桃色の唇を釣り上げた。
「
礼儀正しくお辞儀する彼女は、真面目と言う言葉が似合いそうだと由花は思った。
「明美の席は……和田の隣だな。あそこの空いている席を使ってくれ」
「はい」
雫は指定された通り由花の隣にやって来て、自然に腰を下ろす。それから、隣を向いて優しく笑った。
「よろしくね。和田さん」
感じ良さそうだな、と心の中で呟きながら由花も笑顔を浮かべる。
「由花でいいよ。こっちこそ、よろしく」
「由花、いい名前だね。私も雫って呼んで。ところでさ、由花」
「ん?」
教えた名前を瞬時に呼ばれ、由花は首を傾げる。にやり、と少し悪戯っぽく笑った明美雫に、由花は真面目と言う言葉を彼女に使うのは違うかもしれない、と思わされる。
案の定、雫はこんなことを尋ねたから。
「由花って、暇人?」
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