ストレート
こたろー
第1話
俺は今から思いを寄せる先輩に告白のメールを送る。
どう思いを伝えたら良いんだろうか?
俺は恋愛ソングの歌詞や百人一首の恋を詠んだ作品を見たりして、文章を推敲した。
でもそういった類のものは、作者のセンスが伴ってようやく成立する高度な言葉達で、高校1年生の俺が真似した所で拗らせた文章しか書けない。
結局俺は、自分なりに先輩の好きなところを率直に述べて、「俺の彼女になって欲しい」と締め括った。
メモ帳にメモした内容を、そのまま彼女とのメールにコピペして送信すれば良い。
今日の20:00に少し時間を作って欲しいと、事前にお願いしておいた。
時刻は19:59。
先輩からメールが届いた。
瀬奈先輩からの新着メッセージが1件あります。
『なんか用事でもあった?』
『時間作ってもらってありがとうございます』
『いいよ、そんなに改まらなくて』
俺はメモ帳のアプリを開いて、先輩に送る文章を長押しした。
それをコピーして、先輩に送るだけ……。
「あっ!」
文章を全部選択し、オプションが出てきた時。
俺は「コピー」ではなく、隣にあった「切り取り」を指で押してしまった。
緊張していたから、指が震えていた。
(どうしよ……やばい)
返信に時間をかけすぎると、先輩が不審に思うかもしれない。
直ぐに返事をしないと。
でも、なんて言えば良いんだ?
あーもう。こうなったら。
「俺、瀬奈先輩のことが好きです」
「俺の彼女になって下さい」
「俺は後輩だけど、絶対に先輩を守ります」
「切り取り」を押してしまった時の震えた指付きではなく、先輩への気持ちを乗せた確かな指先で。
「バレてたよ」
「そんなこと」
「私も好きだよ。じゃあ、これから私の彼氏としてよろしくね」
ストレート こたろー @rotaro-24
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