イベント ~お題があがりましたよ。跳べ、跳ぶんだ!~
ぼんびゅくすもりー
お題があがりました――よし、ならば、このスタンスで行け!!
また、あの大手サイトで〝お題〟がかかげられたらしい……。
むこうでも、こっちでも殺伐とした光景がくりひろげられている。
滑落しそうになったり、宙吊りになったり、
爆発したり、流され、溺れたり、
燃えだしたり、宇宙になげだされたり、埋まったり……。
激突し、衝突し、落下し、吹き飛ばされ、挟まり、閉じこめられ、
戦い、逃げまわり、追いつめられ傷ついている。
みんな逝かぬまでも、そういったきわどい状況から、九死に一生を得てはいるようだ。
ぼくはどうしているかといえば……
細い枝にすがりつくようにして
ひょろ高いやせた木のてっぺん近く。脇枝の中間にあって、前にも進めなければ、後もどりすることも危ういという状況だ。
勢いに任せてよじ登ったまではよかったが、足もとの安定の悪さに身動きがとれなくなってしまっている。
木登りは得意だ。
降りるのは、少し苦手かもしれない。
だが、戦いになった時は、だいたい、
だからぼくは、いざという時に備え、日ごろから瞬発力やバランス感覚に磨きをかけている。
バランス感覚には定評のある種族の生まれで、そこそこ健康だったので日々の遊びの中に
そうして、たぶんだが、ぼくは……一進一退をくり返すなかに、日々成長もしている。
けれども。
存外ぼくは、
ぼくには、そこでぱたぱたしているもののように翼があるわけではないからな。
危険度は、本能と経験が知らしめてくれる。
高さには目もくらむんだ。
それでも。
いまのこの状況は、ピンチといえばピンチだが……じっとしていれば、即座に落ちるということもない。
すこし、体を休めながら対策を練れば、きっと、どうにかなる。
そう。まだ〝危機一髪〟という、死ぬか生きるかの境地に至ってはいなかった。
眼下には、はらはらしながらも、ぼくを鼓舞する
あいつは、危ないから降りてこいとぼくに言っているのではない。
さっきから安全なその場所で、むちゃぶりしているのだ。
「だいじょうぶだ。おまえならできる! 跳べ、跳んであれを捕まえるんだ!
一羽でいいぞ。がんばれ」
この高さから落ちたら、ぼくだって
それなのに――
ぼくの
「後のことは任せろ。あれを捕まえたら、わたしが確実におまえを受けとめてやる! 心配するな。迷わず跳べ!」
狩りは、ぼくの得意分野だ。
うっかり迷子になった時、命を繋ぐため——生きてゆくための術だからな。
むちゃくちゃなこともされるが、あれは
気が向けば、狩りのできないあいつの為に獲物をとって差しだすのもやぶさかではない。
だが、それもこれも、命あってのものだねだろう。
うっかり、そそのかされ、本能のおもむくままに登ってしまったことをぼくは今更ながらに後悔している。
「跳べ、そこから跳躍するんだ! あれは、跳ばないことには、捕まえられない。跳んでみれば〝もしかしたら〟が起こるかもしれないんだ。だから跳べ! 失敗したらその骨をひろうかどうかは考えるが、後は任せておけ」
自分の手が届かないからって、ぼくにそれを望むのは、あまりにも酷だろう。
あの飴色の小鳥は、油断してそのへんの地面で羽根を休める世間知らずの〝か弱い若鳥〟とは違う。
確率でしか捕らえられないもの――留まってはくれないものだ。
あれが足を休めてくれる可能性はかなりの低水準。そうおうの運気と手数を備えていないと留まってなどくれない。
あまりも
こんな安定の悪い枝から跳躍しても、ぼくは、かなりの高確率でただ落下するだけになるだろう。
さらには、ついさっき
〝任せろ〟というのは、口先だけだ。あいつは、ぼくの骨をひろうことすら思案中だ。
「跳ばないと即刻改造! いや、消去だ! 削除するぞぉー」
なんてことだ。ぼくには後がない。
跳ぶしかないのか……。
ぼくは、なけなしの勇気をふりしぼり、ふるえる四肢と肉球と、背骨から連なる尻尾に跳躍力とバランス感覚のすべてを充填した。
そして、跳んだ——
イベント ~お題があがりましたよ。跳べ、跳ぶんだ!~ ぼんびゅくすもりー @Bom_mori
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