肝試しはTPOを選びましょう

宮原 桃那

肝試しはTPOを選びましょう。

 これは、ずいぶんと昔の話。

 身内から聞いた、身内の友人に起きた、それは地元民にとって「残当」と呼ばれる類の心霊体験である。


 場所はI県S市近辺にある、飛行機事故の凄惨な現場。

 そこはすっかり整備され、今や知らない人の方が少ないであろう、森の中の慰霊の場。

 ここを詳しく知る人は、誰もが口を揃えて言う。


「そこに興味本位で行ってはいけない。お怒りを受けるよ」


 特に夜中。肝試し感覚で訪れた人間は、もれなく、ろくな目に遭わないらしい。

 では、本題に入るとしよう。


「着いたぜ。ここがその場所だ」

「おおー、雰囲気抜群じゃねえか」

「ねえ……ちょっと嫌な感じしない?」

 複数人で来ていたという彼らは、入り口ですでに不穏な気配を感じていたが、気にせず進む事にした。

 しかし、それも束の間。入り口から入ってすぐに、耐えきれない一人が、引き返そうと言い出したのだ。

 全員それに同意し、車に戻ると、何故かドアが開かない。鍵も開いているのに、固く閉ざされているのだ。

 そして背後からは何者かが迫っている感覚があった。

 ガチャガチャとドアを開けようとしていた運転手が、やっと告げる。

「開いたぜ! 早く乗り込め!」

 その言葉に車の中に滑り込んだ彼らは、しかし次なる災難に見舞われてしまう。


 キュルルル、キュルルル!


「ちょっと、エンジンかからないじゃん! 早く!」

「んな事言ってもよ!」

「やべえって!何かに囲まれてる!」

 誰かの言葉を合図に、外から「バンバンバン!!」と車を叩く音がした。

 何度もエンジンをかけ、ようやくその場を離れた彼ら。

 安全な場所まで戻り、恐怖心に震えながらも外に出て、唖然とした。

「ひぃっ……!?」

「な、何これ……ヤバすぎだって」


 ――車に余す事なく付着した、手形、手形、手形。


 もうそれだけで恐怖は最高潮に達した。

 一刻も早く各々の家に帰り、そして翌日。

「え、謎の高熱?」

「そう。全員」

 身内の話によると、何と、その場所に行った全員が、謎の体調不良に見舞われたという。

 そのうちの一人によれば、相当な苦しみだったそうだ。幸いにして命に関わりはしなかったが、彼らはこれをきっかけに肝試しはやめたらしい。懸命な判断である。

 慰霊の為に作られた場所は、未だ数多くの無知な無謀者が訪れるという。

 そんな人物がどんな目に遭おうが、言いたい事はたった一つ。


「自業自得」


 それだけである。

 中には本当に命に関わるレベルの目に遭った人もいるらしい。

 今回の話では彼らは危機一髪レベルで難を逃れたが、必ずしも無傷では済まない。命があるだけマシだと、それこそ肝に銘じただろう。

 なお、近年にやらかしてしまった大物YouTuberに関しては、私は擁護しない。

 何故なら、ナビが違う場所に案内していたにも関わらず、引き返さなかった当人たちが悪いからである。


 肝試しがしたいなら、お化け屋敷に行った方が遥かに安全だ。

 ……まあ、中には本物が居るかもしれないらしいが、それはそれ、である。


 以上、リアルな危機一髪のお話であった。

 皆さんも、くれぐれも肝試しのTPOにはご注意を……。

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肝試しはTPOを選びましょう 宮原 桃那 @touna-miyahara

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