少年漫画の敵組織にいるスパイで嘘を通すのが苦しくなってきて敵の一人にバレかけた時のあるある

環月紅人

本編

 ふぅー……。命拾いしたぜ。

 ボスに任務失敗のことを報告しなきゃならないってときは殺されるのも覚悟していたが、なんとか最後のチャンスを乞うことができた。

 二十四時間以内にターゲットを殺せだとよ。

 まあ殺すつもりはないんだが。


 はぁ……そろそろ潮時かね。

 俺は、この組織に参加しているターゲット側の機関のスパイだった。ここでは先兵としての役割をもらい、適当に「逃げられました!」「仕留められませんでしたが、次は!」と嘘をついて時間を稼いでいる。

 だがそれももう通用しないだろう。

 殺されるつもりもないから、この二十四時間で身支度を済ませてとんずらすることにするか。


「待て」


 そこで、コツ、とその存在を仄めかすように靴の音を反響させた男が俺を呼び止めた。

 ゲ……俺の苦手なやつだ。

 慎重に振り返る。


「俺は気付いているぞ」

「な……なにをだ?」


 こいつはボスの側近中の側近。抜け目のないやつで、俺が一番警戒している相手でもある。喉が乾涸びる。まさか、俺の正体がバレたか?


「お前、わざと見逃しているだろう」

「いっ、いいや、本気で殺そうとしてるんだ!」

「嘘だな」

「待ってくれ! 嘘じゃない!」

「………」


 側近の男は品定めをするような目で俺を見る。俺は緊張する。冷や汗が背を伝う。顔が引き攣る。いつここで殺されてもおかしくない。この側近の男は場所を選ばない非道なやつだ。


「本気で言っているのか?」

「あ、ああ、本気だ」

「……………」


 俺の人生もここまでだろうか。側近の男は顎に手を当てて考え込む。


「そうか……」


 しばらくの時間を置いて。


「疑ってごめんね」


 やつはそう言った。


「いいよ\( ˆoˆ )/」


 俺は二つ返事で許した。


 ふぅ……。

 一時はどうなることかと思ったが、こいつが素直なやつでよかった\( ˆoˆ )/

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

少年漫画の敵組織にいるスパイで嘘を通すのが苦しくなってきて敵の一人にバレかけた時のあるある 環月紅人 @SoLuna0617

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ