緊急着陸

さいかそう

緊急着陸

 我々は今、危機に直面している。

 両エンジンが停止し、空港まで届かない絶望的状況だ。

 近くの川に着水しようと高度を下げていく。

 すると右側に長い草地が見えた。

 この草地の堤防に着陸しよう。そう決めた瞬間である。

 軌道を修正してさらに降下する。

 飛行場ではない場所に着陸するのはとても難しい。

 例えると人がビルの3階から地上に置いてあるクッションに飛び込むか、アスファルトの地面に飛び込むかの違いである。

 私は右目しか見えない。数年前に飛行場でゲリラに襲われた。そしてゲリラが操縦席を撃ってきた際、左目を失った。

 雨で塗れたガラスの中、さらに降下する。

 左側には急こう配の土手。副操縦士が左側を注意するように促してくれた。

 地面にタイヤが着く。激しい衝撃。

 運河に落ちる可能性がある中、飛行機は滑っていく。

 飛行機をコントロールするのに必死だった。

 次第にスピードが落ちていく。

 そしてついに止まった。

 我々は笑いあい、手を握り合った。

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緊急着陸 さいかそう @saikasou

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