第3話

 人知れず蓮華湖に身を投げた余暉は、小さな白い蓮華の花を咲かせた。白蓮華びゃくれんげと成った仙女は、未だ嘗て一人も居なかった。仙女たちは皆、余暉を嘲笑った。


 仙女たちが、彼女のことを忘れた頃、神仙峡の虚空に突如、白虹はっこうが姿を現した。白虹の出現は、美しい仙女の誕生の兆候であったため、その瞬間を一目見ようと、仙女たちは蓮華湖へと集った。月に照らされた白虹の淡く白い光が湖面を優しく包み込んだ。花たちが、我も我も、とざわめき始めた。湖面全体を包み込んでいた光は、収束し一筋の光と成ったかと思うと、一輪の花を照らした。光に包み込まれた白蓮華から誕生した美しい仙女は、雨露うろ(天子の恩恵)様と呼ばれ、神仙峡に祝福をもたらした。


                                     了

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落日の白蓮華 喜島 塔 @sadaharu1031

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