【死者救済のエゴイズム】
monaka
【死者救済のエゴイズム】
灼熱の太陽が照り付ける砂漠を、二つの影が進む。
一つは今にも倒れそうな程に憔悴し、一つはまるで母に連れられて初めて行楽地へと遊びに出かけた少女のようにるんるんでスキップをしながら。
「……まずい。これは本格的に死を感じる。魔法で水を出すのもそろそろ限界だ」
「あ゛ぁ?」
「早くオアシスでもなんでもいいから見つけないと本当にヤバい」
「ゔぉあい♪」
「イリアは、元気そうでなによりだが……」
「あびゃ?」
男は砂漠用に頭まで覆えるローブを身に纏い、わずかに露出している目でイリアを見つめる。
イリアは、といえば到底砂漠を渡れるような装備ではない。細かい装飾やレースのついた白いドレスのような服と、頭に黒いベールを被っているだけだった。
ただ異様なのはそのベールは彼女の頭だけでなく、黒いレース生地でその表情さえも全て覆いつくしている。
うっすらと顔立ちは分かるものの、特に暑さ対策などではなく、単にその顔を他者に見られないようにする為の物だった。
イリアは視界を遮る生地が邪魔だったのか、ベールを持ち上げ男の顔を覗き込む。
「だい、じ?」
「ああ、大丈夫だよ。もうすぐ夜になる。俺は寒さには強いからな」
黒いベールから覗くイリアの長い髪の毛が、真っ白で、太陽の光をキラキラ反射してフィルは目が眩んだ。
彼が記憶しているのはそこまでだった。次に目が覚めた時には、とても上等とは言えないがそれでも十分快適な寝具の中。
「……俺は、いったい……そうだ、イリアは、イリア!?」
辺りを見渡せば、見た事の無い簡素な部屋、その中にある木製のベッドに寝かされていた。
慌ててベッドから飛び降り、部屋のドアを開け放つと、何やら話し声が聞こえてくる。
「……でね、これをこうして……ほら♪」
「ゔぅゔぁぁ♪」
急いで声のする方へ向かう。どうやら宿屋か何かだったらしく部屋の外には廊下が続いており、いくつも部屋のドアが並んでいる。
それらを通過し、階段を降りていくとちょっとした広間があり、中央のテーブルを囲む見知らぬ少女とイリアの姿があった。
「はい、これあげるね」
「ゔぁぁい♪」
全く……あまり人と関わるなといつも言っているのに。それで傷付くのはいつだってイリアの方だ。
いや、そもそもイリアにそんな感情があるのかすら分からないのだが。
「イリア」
「ゔぁ?」
イリアは少女から頭に乗せてもらった花飾りをこちらに見せつけるようにトコトコとやって来て頭を突き出した。
「……似合ってるよ」
「やびゃ〜っ♪」
少なくとも喜びの感情はあるらしい。
「君」
「は、はいっ?」
その様子をニコニコ眺めていた少女に声をかけると、ビクッとその場に立ち上がって姿勢を正す。
「すまない。連れは……イリアは見ての通り言葉が話せないから状況を説明してくれないか?」
「あ、はい! えっと……イリアさんっていうんですね。彼女が、えっと……」
「俺はフィルだ」
「フィルさん、ですね? イリアさんが、その……意識の無いフィルさんを引き摺ってきて、その……」
「ああ、大体分かった。要するに俺達を助けてくれたんだな。君の名前は?」
少女はにこやかに、「ルイスです」と名乗った。
「ルイスか。俺達を助けてくれたこと、そしてイリアに綺麗な花飾りをくれた事に感謝するよ。ありがとう」
「いえ、困った時はお互い様ですから気にしないで下さい。私もイリアさんと遊べて楽しかったですし」
ルイスとイリアは視線を合わせ、まるで「ねー♪」と言い合うかのように微笑む。
「しかし砂漠の中にこんな所があるなんてな」
「え、砂漠? 砂漠を越えて来たんですか?」
ルイスの発言で、ここは砂漠の中、ではなく渡りきった場所なのだと分かる。
フィルがまじまじとイリアを見ていると、花飾りが気になったと思われたのかまた頭を突き出してくる。
「イリアが頑張ってくれたのか。ありがとう。無理させてごめんな」
頭を撫でるとイリアは気持ちよさそうに掌に頭を擦りつける。まるで猫のようだ。
「じゃあここはネルの街か?」
「あ、はい。ネルのはずれにある宿屋……だった場所です」
(だった、ね……見た所ルイス一人のようだし親が亡くなって宿屋が潰れたか)
「宿をやっていた頃の宿泊料金を払わせてもらおう」
「いえ! そんな、私そんなつもりじゃ」
「いいんだ。ルイスはここでひとり暮らしか?」
ルイスは少しだけ俯き、ひと呼吸おいてから「そう、です」と、母が先月亡くなって自分だけでは続けていけなかったのだと語った。
ルイスは若い。おそらく十二〜十三歳くらいだろう。これだけしっかりしているのは母親の教育や人柄のおかげなのだろうというのが見て取れた。
「一人で生きていくには金が必要だ。気にせず受け取ってくれ。生憎と俺達はあまり金銭的に困ってはいないし使い道もあまりないからな」
「でも……いえ、わかりました。ありがとうございます」
「礼を言うのはこっちだ。命を救ってもらったばかりか宿まで提供してもらってるんだからな」
フィルの身体はあちこち擦り傷があり、それを手当した痕跡もあった。ルイスがやったのだろう。
直接的に砂漠から脱出できたのはイリアのおかげだが、イリアを受け入れフィルの手当をし、休む場所をくれたのはルイスなのだ。
「あの、私からも聞いていいですか?」
「……」
「イリアさんって、失語症かなにかなんでしょうか?」
「まあ、似たようなもんだ」
「それに、血色もあまりよくないですし、何かの病気とか……」
「ルイス」
フィルの声の圧が増した事で、ルイスがビクリと肩を震わせる。
「あ、あの、その……ごめんなさい。会ったばかりなのに失礼でしたよね」
「ふーっ!!」
慌てて謝るルイスだったが、それを庇うようにイリアが割って入りフィルを威嚇した。
「……はぁ、分かったよイリア。俺が悪かった」
イリアがここまで他人に懐くのは初めての事でフィルは面食らった。
(いや、俺が人と関わらせないようにしていただけでイリアはもともとこうだったのかもしれない)
「ルイス、イリアは遠い国の出身で肌の色が特殊なんだ。だからあまりその辺りは気にしないでやってくれ」
「そ、そうだったんですね。ごめんなさい余計なお世話でした」
見ず知らずのフィルを助けたばかりかイリアの心配までしてくれた少女を無下にしてはイリアに怒られてしまうな、とフィルは反省する。
「そういえばもうだいぶ暗くなって来ましたし今日はゆっくりお休みになってください。それとも何か食べますか?」
「いや、大丈夫だよ。腹は減ってないから」
「でも、砂漠を渡って来られたんでしょう?」
「途中で保存食をたらふく食ったから問題ない」
「分かりました。じゃあ……夜は、その……外に出ると危険なので外出はしないで下さいね」
嘘だ。フィルは空腹だった。しかし、宿を閉めたこの家で少女に食事を作らせるのはあんまりだろう。
それに、イリアは元々食事を取る必要がない。
ルイスは「それでは部屋は自由に使ってください」と頭を下げて一階にあるらしい自分の部屋へと帰っていった。
(外は危険、か。街のはずれだと言っていたがスラムのような状態なのだろうか? いや、それだとこんな真っ当な宿屋がある訳ないか)
フィルは考える。
そうなると、ここ最近で物騒になる何かがあったと考えるのが自然だろうか。
本当なら街の様子を確認しておきたいし散策にでたいところなのだが、出るなと言われた以上従うべきかもしれない。
一人で深夜にこっそり……というのも考えたが、諦める。なにせイリアは眠らないし、一人で置いていくと何が起きるかわからない。
(大人しく部屋に戻るか)
「イリア、俺達は二階だ。行くぞ」
「ゔぁい♪」
部屋は自由に、と言われているものの、いつだってフィルとイリアは同室で過ごしている。
それがいつのどの宿屋であろうと、フィルが部屋に入り布団に潜り込んだ後イリアはドアの横に立つ。
そしてそのまま朝を迎える。というのが通例だった。
しかしその夜はフィルにとって予想だにしない事がおきた。
イリアが一緒に布団に潜り込んできたのだ。
「ど、どうしたイリア」
「ぐるぅ……」
(少女との触れ合いで人恋しさでも思いだしたのか?)
なんにせよいい兆候である。
フィルはひんやりと冷たいイリアを抱き寄せながら眠りについた。
寝付いてから数時間。深夜にふと、目を覚さました瞬間にフィルは久しぶりに驚きと、そしてなんとも言えない感覚を覚えた。
目の前にベールを脱いだイリアの顔があり、その光のない眼で見つめられていたからだ。
「お、おはよう」
「ぼばぁい♪」
イリアはにっこり微笑むとベッドから起き上がり、衣服の皺を直して黒いベールを被ると、いつものようにドアの隣に移動してそこから静かにフィルを見守る。
本来の彼女は人懐っこい性格で、敵味方関係なく慈悲を与える存在だった。
どんなに敵意を向けられても批判されても、そんな事はお構いなしに相手が救われる事を祈るような、そんな馬鹿だった。
彼女がこんなふうになってしまったのは自分のせいだ、とフィルは思っている。
実際にそうなのだから仕方ない。だからこそ、フィルはイリアが救われる未来を望む。
そして、これはきっとフィルの自己満足なのだろう事も、理解はしているのだ。
イリアはもう起きるのだと勘違いしたのだろうが、まだ夜は深い。
少し待ってもイリアが布団に帰ってこない事に少しの寂しさを覚えながらも、再び眠りにつこうとしたその時だった。
なにやら外が騒がしい。
(こんな深夜に……盗賊の類だろうか?)
なんにせよフィルが関わる筋合いは無いと、布団を被るがその喧騒が真下まで迫ってしまえば話が別だった。
激しい破壊音。騒がしい足音に咆哮。
これは人間の仕業ではない。
ルイスは言っていた。夜になると外は危険だと。それはこういう意味だったのか。
砂漠の向こうの国では魔物の活動がそこまで活発ではなかったから思考から外れていた。
起き上がろうとしたものの、だからといって自分から面倒事に関わる必要があるだろうかと自問する。
フィルにとっては今更誰がどんな目にあおうが知った事ではなかったのだが、「ゔぁうっ!」というイリアの声にハッとする。
「そうか、君は……そうなってまで誰かを守りたいのか」
返事は無かった。ただ、イリアは無言でフィルに近付きその手を取る。
「分かったよ。確か困った時はお互い様、だったもんな」
「あ゛ぃっ♪」
廊下に出ると既に宿の中には数体の魔物がおり、他の部屋の扉を破壊しているところだった。
(意図的に人間を探している……?)
こういう時は大抵ろくでもない事が起きている場合が多い。
「おいお前、答えろ。この街でなにをしている」
隣の部屋に入ろうとしていた魔物はゆっくりとフィルに視線を向け、「ウツワ……」とだけ呟いた。
知能が高い魔物では無いようだが、器という言葉だけでも分かる事はあった。
以前にも似たような事があったのだ。
魔物が人間を集め、その体に魔素……つまり魔物の力の源のような物を注入する。
魔力と似てはいるが魔物のそれは人間には猛毒だ。
そんな物を注入されれば人はすぐに人の形を失い、殆どの場合人ならざるものへと変貌を遂げる。
つまり、魔物が魔物を増やしている。
それも手段を選ばず下級の魔物でもいいから、というのはかなり乱暴なやり方だ。よほど早急な戦力増強を図っているのだろう。
大きな戦が起きる前にはこういう事が起きる。
この街はそういう意味では運が悪かったのだろう。
魔物の巣に近かっただとか、侵攻目的地への通過点だったとか、その程度の理由だろうし人を攫う理由はそれで充分だった。
「ウツワ、アツメル」
「もういいよ。眠れ」
フィルは魔法で氷の矢を生成し放つ。
三本の矢はそれぞれ魔物の頭部、胸部、腹部に突き刺さりその全身を凍り付かせた。
(……こんなものか)
フィルの期待した威力には到底届かないが、この程度の魔物を倒すだけなら十分だ。
宿の中の魔物を駆逐しようと次へ向けて動き出した時、階下から悲鳴が聞こえる。
(ちっ、ルイスが見つかったか。急がないと)
攫う事が目的であろうが、相手は知能の低い魔物だ。なにがどうなってその身に危険が及ぶとも限らない。
フィルが頭の中で対策を考えているうちに、背後に居たはずのイリアが突然走り出す。
「イリア!」
「ぅぅゔぁぁぁっ!」
イリアは廊下を一気に駆け抜け、別の部屋から出てきた魔物の一撃をかわし、そのまま階段まで到着すると、まるで羽根でも生えているかのように階段から飛び降りた。
ふわりと、あまりにも軽い着地。
(無意識に重力制御魔法を使った? そんな馬鹿な)
なんにせよフィルもその後を追いかけるが、目の前に魔物が立ちふさがる。
「邪魔を……するなぁっ!!」
フィルは風魔法の斬撃を飛ばし、魔物の体を胴から二つに切り裂くと、自らも階下へ向かった。
そこには。
必死にルイスを助けようとしたのだろう。ボロボロになったイリアが転がっていた。
「イリア!」
慌てて駆け寄ると、イリアは破壊された玄関ドアの方を指差して、「あ゛あ゛ぁぁ」と呻く。
「まったく……頼むから無理をしないでくれよ」
「ぐぅ……」
しょんぼりしているイリアに手を貸して立たせる。
(イリアを連れて行かなかった所を見るにやはり目的は人間か)
「うぐ……」
困ったようにフィルを見つめ、その服を引っ張ってくるイリアの頭を撫でる。
「分かってるよ。イリアの守りたいものを守りに行こう。借りは返さないとな」
「ゔぁい!」
二人は魔物が闊歩する闇の中へ踏み込む。
「思ったより数が多いな……俺だけで対処できるか?」
「ゔぁ……」
イリアがフィルの袖をクイッと引っ張った。
「いや、しかしだな」
「ゔぁっ!」
イリアが何を求めているのかフィルには分かっている。分かってはいるのだが……。
「ダメだよ。危険だから。それよりまずはルイスがどこに連れて行かれたのかを探ろう」
「……ゔぁい」
イリアは心配そうに、自分の服の裾をぎゅっと握りしめた。
「大丈夫、きっと見つけるし助けよう」
確かに魔物の数は多かったが一体一体はそこまで強力ではなかった為、各個撃破する分には特に困らなかった。
魔物達は街の外周をメインに人家を荒らしているらしく、フィル達は魔物の密度が高い方へ高い方へと進んでいく。
すると、少し開けた噴水のある公園が見えた。
そして、そこにはフィルの見知った顔が二つ。
そして魔法の檻に囚われた意識の無い人間達が十余名ほど。
物陰から様子を伺うと、その中にルイスの姿もあるようだった。
「よし、今日はこのくらいでいいだろう。どうでしょうかラクリム様」
「……ああ、そう、だな」
「ラクリム様、貴方がこの任務に否定的なのは知っていますがこれは……」
「分かっている。規定人数に達したならこの街の冒険者共が感づく前に引き上げよう」
「はっ。しかし、この程度の街に停留している冒険者など現れたところでひとひねりですがねヒヒッ」
「無駄な交戦は避けたい。街に放った奴らが戻り次第……ッ、誰だ!?」
話していた二人に気付かれてしまったらしい。フィルはともかくイリアは気配の殺し方など知らないのだから当然だろう。
フィルはイリアを静止しつつ前に出る。
「ラクリム、その中に俺の恩人が居る。その子を返してもらえるならばここでの行いについては目を瞑ってやってもいい」
「お前は……」
ラクリムは顎に手を当ててフィルの発言を吟味するが、血の気の多いもう一人が割って入った。
「ハッ、噂をすれば馬鹿が現れましたね。ラクリム様、こいつの処理は是非ともこの私に」
「黙れザメラス。俺はラクリムと話している」
「ッ!? ふふ、少々驚きましたが……この私も有名になったものですね」
「黙れと言ってるのが分からんのか相変わらず脳味噌の小さい愚か者が」
フィルの言葉に血管を浮き上がらせるほど激情したザメラスが「いい度胸だ」と、冷静なフリをして一歩前に出る。
「貴様等の羽虫の如き魔力量……私には見えているぞ! これだけの魔物達に囲まれて生きて帰れると思うなよ? お前のツレは生きたまま下級どもの餌にしてやる。お前は……そうだな、殺してくれと泣き喚くまでじっくりとなぶり殺しだ……!」
ザメラスが手を高く掲げると、辺りの魔物達がぐるりと二人を包囲した。
(……さすがにこのままじゃ雑魚を蹴散らしながらザメラスの相手は無理か)
フィルがチラリとラクリムを見ると、ラクリムは何かに気付いたように目を見開いていた。
「イリア。周りの魔物共を任せてもいいか? ザメラスは俺が殺る」
「ゔぁぁい!」
「……我クロノフィリスが命じる。聖女イーリアス・ホワイト。封印されしその力を解き放ち敵を殲滅せよ」
フィルがイリアのベールを持ち上げ、その額に軽く口付けをした瞬間、イリアの瞳に光が宿り咆哮が響き渡る。
「グヴォァァァァォォオオオ!!」
「な、な、なんだ!? 何が起きた!?」
様子の一変したイリアの様子に驚いたザメラスが一瞬、気圧されて一歩後ろへ下がる。
「ゼいグリッドヴぁイヤ゛ァ」
ヒュゴッ、と。
それまでザメラスが立っていた場所から青白い火柱が立ち昇る。
「イリア! あいつは俺が殺ると言っただろう!」
「グ、グァ……」
「周りの敵を殲滅だ!」
「グるヴァッ!!」
目の前でとてつもない魔力量の攻撃魔法が炸裂した事で、ザメラスは腰を抜かして後ろに倒れ込んでしまった。
「ゼっグリッドヴぁロゥ!! ゼいグリどヴァイア!! ゼグデぃッドえグズヴォろォォジょン!!」
ザメラスはその光景に目を剥き、ガタガタと震えだす。
それも仕方ないだろう。イリアが放っているのはそのどれもが聖女のみが使えるとされる超弩級の神聖魔法だった。
広場は神々しい青白い光に包まれ、噴水から吹き出す飛沫が光を反射し幻想的な光景が広がった。
そして、静寂が戻る。二人を取り囲んでいた魔物達は既に塵一つ残らずこの世から消え去っている。
「あ、あああアレはなんだ!? いったい、何がッ!? 神聖魔法だと!? 聖女はッ、聖女は死んだはずだッ!!」
「生憎と、お前の言う通りイリアは死んだ。今も……死んでいる」
「ば、馬鹿な!? まさか貴様、聖女をアンデッドとして蘇らせたのかッ!?」
「それは少し違うな。蘇らせようとしたら俺の力不足でこうなったんだよ」
フィルは地べたに転がって震えているザメラスにゆっくりと近付く。
「そもそも、おま、おまえは、何者なん……ま、まさか、その姿は……」
フィルの姿は今までとはかなり変貌していた。
頭部からは禍々しい角が生え、背中からはその身をゆうに包み隠せるほどの漆黒の翼が。
「く、クロノフィリス……様……?」
「ほぅ、ちゃんとまだおぼえていたか。……で、なんだっけ? 確か殺してくれと泣き喚くまでじっくりとなぶり殺し、だったか?」
「そ、それは……貴方様とは気付かず……!」
「やってみろよ」
「……え?」
「俺はあれだけの罵詈雑言を吐かれて許してやれるほど心が広くないんだ。生き延びたかったら精一杯抵抗してみせろ」
「た、助け」
「違うだろ」
フィルは……いや、魔王クロノフィリスは呆れながらザメラスを顎を蹴り上げた。
「がふっ……」
「謝罪も命乞いも無意味だ」
震える体をゆっくり持ち上げ、ザメラスはクロノフィリスを睨む。
「く、くく……分かったぞ。どうせその力も制限付きの一時的なものに違いない! 先程まで大した魔力では無かった。なんらかの理由でお前、力を失ったな!?」
「……そうかもしれないな」
「ならばこちらは時間を稼がせてもらおうか! 元々私はお前の事が気に入らなかったんだ! この手で、元魔王を、蹂躙……」
「もう飽きた」
クロノフィリスはザメラスの首を掴み、持ち上げる。
「ぐがっ、い、いつの間に……ッ」
クロノフィリスただ、特別急ぐでもなくザメラスに近付いただけだった。
それをザメラスが視認出来たかどうかは別問題だが。
「そろそろ死ぬか?」
「なんのこれしき!」
驚くべき事に、ザメラスは自らの首を切り落としクロノフィリスから逃れる。
そして頭部と胴がまるで引力のように引き合い元の形へと戻った。
「うわ、気持ち悪っ。……そうか、お前確か進化前はデススライムだったな」
「私をスライムと呼ぶな! 既に種族などという垣根は超越している! それに貴様も既に死んだも同然!」
(意気がっちゃってまぁ、可愛い所もあるじゃないか。だが……)
「残念だがお前の毒なんかじゃ死ねないな」
先程首を切り離す際ザメラスはクロノフィリスの手に毒針を指していた。
デススライムの毒といえば、猛毒な上に呪いの付与まで同時に行いどんな魔物もを数分で死に至らしめると有名だが、クロノフィリスはなんら焦らない。
「強がるのも今のうちだけだ! 私の呪いはお前の力を奪い、この猛毒はすぐにお前を」
「イリア」
「ヴリふィゲィじョん」
イリアの神聖魔法によりクロノフィリスの毒は消え去り、呪いも解呪される。
「こっちには聖女様がついてるんでな」
「ず、ズルいだろうが!! それは、それは卑怯だ!!」
「ガキかてめぇは。そもそも俺は毒じゃ死なねえよ。しばらく痺れは残るだろうけどな。知らねえようだから教えてやるがお前の力は呪いとセットだから強いんだ。そして力量差のある相手にはその呪いも大した効果は無い」
「ふ、ふざけるなァァっ!! 殺す殺す殺す殺す!! 私の全力を込めた必殺の一撃で……!」
「はは、必殺の一撃ときたか。いいぜ、やってみろよ」
「後悔しても遅いぞ! その余裕ぶったニヤけ面を苦痛に歪ませてやる! インディグネイトサイクロン!!」
ザメラスの得意とする雷魔法、そして風魔法を合成する事でまるで目の前に濃縮された豪雷渦巻く嵐を生み出すかのような奥義、だった。
ぱんっ。
軽い音が響き渡る。
クロノフィリスが軽く腕を振るっただけでザメラス渾身の一撃は霧散した。
「な、あ、あぁ……」
「あのなぁ、高々既存の魔法を組み合わせただけで必殺の一撃はねぇだろうよ。やるならこれくらいやれ」
クロノフィリスは掌を前に突き出し、五本の指でそれぞれに別属性の魔法を同時に行使する。
それを握り締め、圧縮。ほんの小石程度のサイズの光り輝く破壊の力。
「初めてやってみたが存外イケるもんだな。試し撃ちに付き合えよ」
「ヒッ、畜生!! 今に見ていろ! 俺は必ずお前を殺して……」
「何逃げようとしてんだよ」
「うがっ、う、うご、け、な……」
クロノフィリスは空いている方の手で拘束魔法を発動させていた。
そして、まるで銃口を向けるように人差し指をザメラスに向け、「ばんっ」と呟いた。
それと同時に放たれた破壊の光はザメラスの体を貫き、小さな穴から一気に破滅が全身に広がる。
「ちく、しょ……時代遅れの、魔王め……」
「今際の台詞としては三流もいいところだ。……で、お前もやるか?」
「……やめておきましょう。無駄に命を散らす気はありません」
答えたのは、ザメラスとの交戦が始まった時から何処かへ姿をくらませていたラクリムだった。
「なら一人、返してもらうが?」
「構いません。全員解放します」
ラクリムはクロノフィリスの前に跪き、ゆっくりと顔を上げた。
「クロノ様、一つ……聞いても宜しいでしょうか?」
「許す」
「何故、我らをお見捨てになられたのですか?」
クロノフィリスは一瞬、眉間に皺を寄せた。
「言わなきゃ分かんねぇか?」
「やはり……その聖女ですか」
「俺は、イリアを殺した魔物を、魔族という生き物を、許せなかった」
俗に言う勇者、という男は力と権力を振りかざすクソみたいな奴だった。
クロノフィリスは勇者を殺害した後、その仲間達を捕虜にした。
勇者が死んだ事で戦意を喪失していたからだ。
クロノフィリスはイリアを含め、三人の人間を客人として魔王城に逗留させた。
戦う気のない相手と敵対する理由が無かった。
やがて、二人が城から去った。特に追う事も無かったが、また魔族との戦いに身を投じるならばその時は再び敵同士だと、そう告げると、二人はもう田舎でのんびり暮らしたいと言った。
要は国からいいように使われるだけの勇者率いるワンマンチームだったのだ。
魔王城に一人残ったのが、イリアス・ホワイト。聖女だった。
彼女は最初から敵対を望んでおらず、魔族と人間とが手を取り合える世界を作る為クロノフィリスに会いに来た。その為にやむを得ず勇者と行動を共にしていた。
それが魔王と接触する最短だと考えたからだ。
話し合えば理解しあえると本気で考えているような女だった。残念ながら彼女の言葉は勇者の性根の悪さを改めさせる事は出来なかったようだが、魔王相手にイリアは諦める事はなかったし妥協もしなかった。
クロノフィリスは事ある毎に絡んで来て持論を展開するおめでたい頭の聖女が苦手だった。
しかし、嫌いでは無かった。今後のこの世界には必要な存在だとすら認めるようになった。
次第に話す機会は増え、彼女に対する感情は徐々に変化していった。
クロノフィリスは、魔王として魔族を纏める立場だ。勿論人間をよく思わないものも居る。そんな連中が、事件を起こした。
クロノフィリスが聖女と婚約し人間と和平を結ぶ。
そんな噂が広まった事が切っ掛けだったのかもしれない。
クロノフィリスが所用で外出し、城に帰って来た時には聖女イリアス・ホワイトは既に冷たくなっていた。
目撃者によると、彼女は一切反撃をしなかったらしい。
ただ必死に、説得を試みて、理解し合えると信じて、そして殺された。
「死者蘇生……それは、成功なのですか?」
「いや、失敗だよ。俺が魔力の殆どを使って封印してなきゃいつ暴走してもおかしくない」
「……なるほど、合点がいきました。だから封印を解く事でクロノ様は本来の力を取り戻したのですね」
「まぁな。俺が無理矢理死の淵から呼び戻したんだ。責任くらいは……取らないとな」
「ウ……ウゴァ……ァ、アァ……」
「まずい、時間切れだ!」
そう叫びつつ、イリアを見つめるクロノフィリスの瞳は、悲しく、寂しく、そして優しい物だった。
「ラクリム、少し下がっていろ」
「御意に」
返事とほぼ同時にラクリムは魔法の檻もろとも消えた。
「ヴゴルァァァッ!!」
それまでとは違い、瞳に狂気の光を宿したイリアがクロノフィリスに殴りかかる。
暴走時に神聖魔法を使わないのだけが、クロノフィリスにとって救いだった。
破壊本能のみで動く今のイリアは、アンデッドどして無意識に神聖魔法を行使するのを避けているのかもしれない。
たとえ絶大なチカラを持つ魔王クロノフィリスといえど聖女イリアス・ホワイトの放つ神聖魔法は脅威に価する。
とはいえ、通常の強化魔法や攻撃魔法は容赦なく繰り出してくるので対処は簡単ではなかった。
「グるギュアァァッ!!」
「まったく、大したもんだよ聖女様。君は勇者なんかよりよっぽど強敵だ」
クロノフィリスはイリアの細い腕から繰り出される破壊的な暴力をかろうじて障壁で地面へと受け流す。
一撃で地面は砕け、下層の土や岩が飛び散る。
衝撃で噴水に亀裂が入り、大量の水が降り注いだ。
「ヴァグラァァァっ!!」
イリアが咆哮し、口から灼熱の炎を吐き出す。
「うおっ、そんな事までできるのかよ!?」
炎が舗装を溶かし、降り注ぐ水飛沫を蒸発させ辺りが水蒸気で包まれる。
「ちっ、視界が……」
クロノフィリスが風魔法を行使し周囲の水蒸気を吹き飛ばすがイリアの姿が見えない。
「まさか街中に行ったんじゃないだろうな!?」
慌てて街の中心部へ向かおうと振り返った時、視界いっぱいにイリアの拳が。
「うおぁっ!?」
ギリギリで回避行動を取ったもののその拳はクロノフィリスの顎先を掠める。それだけで彼は吹き飛び、破損した噴水に突っ込んで完全に崩壊させた。
水浸しになりながらも立ち上がり、イリアを真正面から見据える。
(街中で大魔法ぶっ放す訳にもいかねぇしな……)
クロノフィリスはぺっ、と口内に溜まった血を吐き出すと、その小さな血の塊がもぞもぞ形を変え、クロノフィリスそっくりの形になる。元が血液なので真っ赤だが。
勿論分身などではなく、彼の意思通りに動くデコイでしかない。
クロノフィリスと血液人形は同時に、イリアを挟み込むように駆ける。
イリアは拳に強化魔法をかけ、その上何かしらの属性魔法を付与し、血液人形など意に介さず本体のみを的確に打ち抜いた。
クロノフィリスも障壁を張ってなんとか受け止めようとするが、あまりにも強力な打撃に障壁は打ち砕かれ、再び激しく吹き飛ばされる。
だが、これはクロノフィリスの思惑通りだった。
「グガッ!?」
砕けた障壁は消えずに、破片がイリアの体に張り付いて固まる。
イリアはそれをいとも簡単に砕いて自由を取り戻すが、その一瞬の足止めが出来れば十分だった。
その隙にイリアの背後から血液人形が迫り、抱きついた。
壊れた噴水から降り注いでいる水と血液人形が混ざり合っていく。
瓦礫の中からクロノフィリスの手が伸び、ぱちん、と指を鳴らす。
「ヴォアっ!?」
瞬間、血液人形が急速に凍り付いた。周囲の水分も合わせてそれは拡大していき、数秒後には広場一帯が氷に包まれていた。
「やれやれ……傷を付けずに無力化すんのは本当に神経を使うよ」
氷を砕きながら進み、イリアの目の前まで辿り着く。
「動けないだろ? そのデコイは相手の魔力を抑え込むんだ。一種の結界みたいなもんだな。……魔力さえ使えなければ君はこんな氷程度も壊せない」
クロノフィリスはイリアの顔部分だけ氷を溶かす。
「グゴァァァっ!! ヴァァオオ!!」
「無理させてごめんな。もう休んでいいよ」
クロノフィリスがイリアの額に指を二本当てると、小さな魔法陣が幾つも浮かび上がり、それらが重なるようにしてイリアの額に吸い込まれていく。
「ウグォ……あ、うぁ……」
「封印、完了」
クロノフィリスの頭部から角が消え去り、羽根も灰のようにサラサラと空気に溶けていく。
彼の魔力は封印にほぼ持って行かれてしまい、辺りを包んでいた氷も水となって地面に落ちた。
「おかえり」
「……ゔぁ??」
不思議そうに小首を傾げるイリアの頭を撫でると、気持ちよさそうに目を細める。
「ふぅ、待たせちまったな」
「いえ、お見事でした」
封印が終わったのをどこかで見ていたらしいラクリムが再び現れて地面に膝をつく。
人間が詰められた魔法の檻も一緒だった。
「しかし……聖女がアンデッド化するとあんなにも恐ろしいものなのですね」
「馬鹿言うんじゃねぇよ。生前の方がよっぽど厄介な女だったさ」
クロノフィリスはそう言って笑う。
「クロノ様は、聖女を完全な形で復活させる方法をお探しなのですか?」
「そんなもんが、本当にあるならな」
無論、どんなに期待薄だろうとクロノフィリスは……フィルは諦めるつもりなどない。
「ゔぁ……?」と不思議そうに見上げてくるイリアをフィルは優しく抱きしめた。
「クロノ様。出来れば……早めにこの国を出た方がいいかと」
「戦争、か」
「はい。今魔族領は荒れています。力のある者がそれぞれ縄張りを主張し、それぞれの思惑で動いています。今回の件も、私の主人の命です」
「主人……ギーニッツか? あいつまで気が狂ったか」
「いえ、今はご子息が」
ギーニッツというのはフィル、魔王クロノフィリスの古くからの友人であり、反戦思想を持った芯のある男だった。
「なるほどな、ギィ坊か。あの小僧のやりそうな事だ」
「まったくです。親の爪の垢でも……いえ、忘れてください」
自らの、主人への忠誠を蔑ろにするような発言に気付き、ラクリムは元々細い目をさらに細めて首を横に振る。
「お前も大変みたいだな」
「……お陰様で」
その返事には皮肉が多量に含まれていた。
「悪かったよ。しかし俺はもう魔王じゃない。魔族領から逃げ出したただの……フィルだ」
「その言葉の意味がお判りですか?」
少しだけ間をおいて、フィルは頷く。
「ああ、誰に何と言われようと俺の優先順位は変わらない。もし俺の邪魔をするなら……誰であっても」
【敵だ】とフィルは、自分で吐き捨てながらも唇を噛んだ。
「そうですか。分かりました……出来る事なら今後我らの道が交差する事の無いよう、祈っております」
「こっちとしてもそう願いたいね。それより、お前は今日の失敗の責任を問われるんじゃないか?」
ふふっ、とラクリムは笑う。
「私の心配などしている場合ですか? 聖女様は長話に飽きてそろそろ我慢できなくなっているようですが?」
「ゔぁうぁ……」
確かにフィルの袖を掴むイリアの手に力が篭ってきたのを感じる。
「達者でな」
「クロノ……いえ、フィル様も。私も陰ながら応援しております」
ふたりは無言で数秒視線を交わし、ラクリムは音も無く消えた。
魔法の檻は消え去り、人々はその場に崩れ落ちて山となる。
フィルはルイスを人の山から掘り出し、他の人間は放置して宿へと帰っていく。
イリアは何度も、放置された人間の方を振り返っていたがフィルがすたすたと先に行ってしまうので諦めて後を追った。
「あれっ? 昨夜、確か……」
「おはようルイス。どうした? 悪い夢でも見たか?」
翌朝、どたどたと部屋に乗り込んで来たルイスが、布団から顔を出したフィルを見て首を捻っている。
「夢、夢……? 夢だったんでしょうか? でも壊れたはずの扉も直ってるし……あれぇ?」
「ははっ、何を寝ぼけてるんだ?」
「寝ぼけ……あはは、そうですよね? あれは夢だったんですね。そっか、夢か」
「ゔぁぁい♫ おゔぁうよぉ!」
「うわっ」
ルイスが昨夜の件を悪い夢だと思い込んでくれて、一件落着となる所だったのに、イリアが布団の中からガバっと飛び出した事でルイスの表情がみるみるうちに変わっていく。
(まずいな。何か思い出してしまったのかもしれない)
檻に囚われている間は意識など無かったはずだが、それも確定ではない。
暴れ回るイリアを少しでも見ていたのならば脳裏に焼き付いて、ふとフラッシュバックする事もあるだろう。
せっかく宿の壊れた箇所を直してごまかしたっていうのに。
フィルがそんな心配をしていた頃、全く別の理由でルイスはおかしくなっていた。
「あっ、あっ、そのっ、お楽しみの所お邪魔してすみませんでしたぁぁ〜っ!!」
踵を返し勢い良く部屋から転がり出て、そのままドタドタ階段を降りていく音が聞こえる。
「なんだったんだ……? お楽しみ?」
「ゔぁぁい?」
そこで初めて、フィルはイリアが服を着ていない事に気付く。継ぎ接ぎだらけの痛々しい裸体が晒されていた。
「なっ、お前その体を見られたら……いや、違うな。ルイスのあの反応は……はぁ、そういう事か」
やれやれ、とフィルは額に手を当てる。
「頭痛くなって来た」
「だい、じ?」
額に当てた手の上から、ひんやりと冷たいイリアの手が触れる。
「ああ、大丈夫だよ。きっと……いや、必ず」
フィルは大きく深呼吸し、再度決意を固め、イリアを強く抱きしめた。
「君が俺にしてくれたように、君は俺が、救ってみせる」
「ゔぉあい?」
本人が望む望まぬに関わらず、たとえそんなものが救いではなかったとしても、エゴを押し通しフィルは進み続ける。
あの日、外出からの帰還後にイリアに伝えるはずだった言葉を。
そのたった一言を、告げる為に。
──────────────────
後書き
まずは数ある作品達の中からこれを見つけてここまで読んで下さった事へ感謝を。
この話は身内と何か笑い話をしている最中に聖女がゾンビになって〜みたいな事を言われたのを切っ掛けにして膨らませた物になります。
当初は天真爛漫トンデモ系アンデッド少女に振り回されるドタバタコメディテイストのつもりで書き始めたのですが終わってみればこんな事に。
これはこれでアリかなと思ってます。ドタバタか極度の鬱作品しか書けない自分にしてはバランス取れてる気がしなくもありません。多分。
もし少しでも気に入っていただけましたら思った通りの評価などしてってやってください。
そしてあわよくば作者の他の作品など覗いていただけたら幸いです。
それではまた他の作品でお会いできる事を祈って。
monaka.
【死者救済のエゴイズム】 monaka @monakataso
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