第2話

 病院に到着するまで20分ほどかかった。いつもなら道路も混んでいるし、倍の時間はかかるのだが深夜だったのが幸いだった。

 病院の玄関に看護師が出迎え、私は靴を脱ぎ捨てた後看護師と共に廊下を小走りで陣痛室へと向かった。途中で一度陣痛で立ち止まった。

「うう…。」

「もうちょっと我慢してね。」

 と、看護師がお尻の〇をグッと押し込む。そして落ち着いたらまた小走りする。

「ベッドと着替え準備できてます。」

 陣痛室からもう一人の看護師が出迎える。

「いえ、着替える時間はないわ!このまま分娩台よ!」

 看護師が叫ぶ。陣痛室で唸っている妊婦さんたちの前を素通りし、私は洋服のまま分娩台に上がることになった。

「ゆっくり台に上がってね。」

 声をかけられ、片足を台に乗せた時だった。

 バシャ!っと、破水してしまった。

「あ。」

 看護師たちが顔を見合わせた。

「今、髪の毛見えたわね…。」

 無事に分娩台に上がり、駆け付けた助産師さんに声をかけられた。

「次に陣痛が来たら、産まれるわよ~いきんでね。」

 

 え?次?もう?まだ、ここで何もいきんだりしてないよ?

 ちはやは混乱した。そして、すぐに陣痛の波は来た。


「きたーーーー!」

「はい、いきんで!あ、もういいよ~力抜いて~。はい!おめでとうございます。男の子ですよ。」


 予定日より3週間早く生まれた男の子は3500gだった。思っていたよりデカい。

 そして、母は荷物を持って陣痛室へ着いた時には生まれてしまっていたという。

「あと10分着くのが遅かったら車の中で生まれちゃったね~。」

 と、看護師さんは恐ろしいことを言った。

 

 ちなみに一人目の時は、なかなか生まれてこなくて陣痛促進剤を使い、すごく痛くて苦しかったのだった。そんな痛みを想定していたので、まさかこんな便秘が実は陣痛だったとは思いもよらなかった。なんて恐ろしい…。

 まさに、危機一髪な出産のお話でした。

 


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便秘と出産 ちはや @chi_haya

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