便秘と出産

ちはや

第1話

 草木も眠る丑三つ時


 ふと、目を覚ます。



 ここは里帰り中の実家である。

 北海道に住んでいる、あるいは行ったことがある者ならわかると思うが、北海道の市と市の間は畑や山で離れており、郡というもので町がまとめられている。

 ここ実家はK郡H町、O市のそばにあるが周りは眺めの良い畑が多く、この町のメインストリートは数百メートルどころか百メートルくらいで、小さな組合スーパーがひとつと郵便局、新聞屋、保育所と小学校、中学校があるくらいだ。信号機も一つしかない。父は仕事の都合でこの田舎町に住んでいる。

 私は出産を控え3歳になる娘と帰省し、あと3週間で出産予定日だった。


 便意があり、寝室になっている2階から降りると祖父がトイレに入っていた。

「おっと、じいちゃんか…。」

 ガチャリとドアをあけ祖父がトイレからでてくる。

「おお、ちはやか。」

 片言を交わし、トイレに入る。が…。

(ああ、こんな時に便秘とは。)


 まだ夜中だ。いいや、寝よう。私は出ないものは出ない、と諦めて2階の寝室へと戻っていく。だが、またもや便意が…。下に降りては、なにもなく寝室へ戻る。この行為は約15分毎に4回繰り返された。

(なにかがおかしい…。)

 考え込んでいると母が起きてきた。

「どうしたの?」

「ん~、便秘なんだけど出ないのよね。これで痛かったら陣痛なんだろうけど。」

 そう話しているうちに、また便意が来た。

「ちょっとトイレ~。」

 やはりおかしい。しかも便意は10分毎になって来てはしないだろうか?

さ、病院に連絡して聞いてみるかな。痛くないから何事もなさそうだけど。」

 と、通院している産婦人科の夜間専用電話に電話をする。

「あの、すみません。陣痛とは違うのですが便意が10分ごとに来てるので、ちょっとおかしいかなと…。」

 そこまで言いかけた瞬間だった。ズキリッと押されるような痛みが突然来た。

「あ…やはり…これ陣痛の、い、い、痛みの…うううううっ。」

 電話の奥では多分『急いできてください!』と言われたのだと思うが。そこから母は父と娘を起こし、病院へ向かう支度を済ませ、祖父を家に残し急いで車に乗り込んだ。


 とにかく早く早く早く…。

 急に痛みが来てから、車の中で陣痛が5分おきになっていた。

 これは、ヤバいんじゃなかろうか…。


 

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