白い〇〇~森の熊達~

豆腐数

作者のスマホのメモ帳には「爆笑ギャグ」というタイトル付きで他にも「面白い巨塔」とか「白い相棒」とかメモしてあった

 俺の名前は佐藤。四角い黒縁眼鏡から察せる通りのインドア派男であだ名もシンプルにメガネである大学生だ。今日は東京の端っこにあることで有名な『動物の森』の中にある常連やってる店『コムのあな』に、探してたエロゲー『ドラゴンリフレインナイトブルー』が入荷したと聞いたので、買って帰る途中だ。


 今は亡きエロゲメーカーの産物を抱えてホクホク森の中を歩く俺に、声をかける熊がいた。


「佐藤さんじゃないですか、こんにちは」

「はあ、こんにちは」


 彼は『熊寿司』という寿司屋の店主をやっている熊吉さんだ。その寿司屋というのが色々独特なメニューを扱っているのだが、それは前に語ったから気になった人だけ読んでくれ。


 今日の熊吉さんは寿司屋の格好じゃなく、麦わら帽子にオーバーオール(スーパーな配管工が着てるやつだ)、肩にタオルといった外国のコテコテ農作業スタイルだ。


「寿司屋どうしたんスか、転職したんスか」

「いや、なるべく安く安全に提供できるよう、うちでは自家製材料にこだわっていてね、最近は品種改良なんかにも手を出してるんだよ」


 言いながら、ビニールハウスの中に案内される。何故かビニールハウスの中にあるブドウ棚。


「これなんかすごいよ、真っ白なブドウ、その名も白い巨房!」

「どっかで聞いた気がする響きだわぁ」

「こっちのゴボウも真っ白」

「名前はやっぱり」

「白い牛蒡」

「予想通りだわぁ」

「このビニールハウスを温かく保つのも、白い暖房」

「農作物関係ないわぁ。なんで白にこだわるんスか」

「この間人間の書いた医療ドラマ小説を読んで感動してね」

「やっぱり元ネタがあったわぁ」


 白い以外何も関係ないわぁ。


「グォオオオおてぇへんだ熊吉さん!」


 ビニールハウスに響き渡る熊の咆哮。


「どうした熊太郎」

「熊郎が……捕まっちまった!」


 誰だよ。


 〇


「熊郎は農業専業の親戚熊でね。共同で品種改良をやろうと持ち掛けられていたんだが、なんか怪しかったから断ったら、いやはや。白い粉の製造現場を取り押さえられて捕まるとは」


 熊郎さんの面会に何故か付き合わされる俺。完全に部外者だしいいのか?って気がするが、動物の世界だから多分人間と色々違うんだろう。


「危機一髪! というやつですな。私も下手したら一緒にお縄ですよ」


 はい、お題消化。


「はぁ……はぁ……ヤクをくれ」


 檻の中に熊郎さん。こうなってしまうとただの動物園だな。


「ヤクはないが、差し入れを持って来た」


 熊吉さんがグォオオオ!! と咆哮すると、独房の並ぶ壁に空いたネズミ穴から、ひょろいネズミのガリがチュウチュウやって来て、ドングリを乗せた酢飯を檻の……なんか飯のお盆入れるための穴みたいなとこに突っ込んだ。前に熊寿司に行った時はもう少し豪華な具材だったと思うんだが……(チョイスはともかく)。


「これを喰って再出発してくれ。お前ならやれる、出来る」

「熊吉……今日のお前の毛皮は真っ白に見えるし、後ろに極彩の虹が見えるよ……」

「その景色どう見ても幻覚症状だわぁ」


 まあよくわからんけど、熊郎さんには白い希望が見えてるようだ。


 ちなみに俺達がいる独房は、最近新築のホヤホヤらしく、白い独房。

 おあとがよろしいようで。

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