第4話 どの精子が勝利したのか?
俺たちは間一髪、
ついでに、そのままの勢いで
「このまま、卵管に突入するわ。」
○〜○〜○〜
俺たちは今、卵管に勢いよく突入した。
あまりの早さに精子達をごぼう抜きして、受精競争のトップスイマーに躍り出る。
「さっきのことなんだが、なぜ俺たちは急に早く泳げるようになったんだ?」
俺は当然の疑問を彼女に投げかける。
「それは、あなたのスキルのおかげよ。」
「俺の
「そう。知らないかもしれないけど、女性の膣内は酸性に保たれているの。」
「そうなのか? それで、それが何になるんだ。」
「私たち精子は、酸性条件下では死んでしまうのよ。」
「な、なんだって!」
「通常は
彼女は医学知識を語りながら続ける。
「あなたのスキルは精子として最強と言って過言ではないわ!」
「な、なんだってええええええええええええええ!」
日の目を見ることが一生ないと思っていたゴミスキルが、まさかこんなところで。
俺はどうやら精子として最強だったらしい。
精子として才能がある俺。もはや喜んでいいのかどうかさえわからない。
でもだ。ただ一つ言えることがある。
如何に最強のスキルを持って転生しようが受精しなければ全く意味がないのだ。
精子としてだけ最強でもいい。
俺は命を持って出産されるんだ! そう決意する。
「さあ、先は長いわ。行きましょう。この先よ!」
○〜○〜○〜
俺たちは暗く長い卵管を泳ぎ回る。
何時間経ったろうか?
他の精子たちはもうすでに膣内の酸でやられてしまったのだろうか?
そう思えるほど、精子の俺たちにとって長い時間を過ごした。
ただ、俺たちは大丈夫だ。
なぜなら俺の精子最強スキル、
ただ、ここからは懸念が深まる。
もし卵子を見つけてしまた場合、どうするかだ。
あまりの確率の低さに今まであまり考えようとしていなかったが、
俺と彼女、受精できる精子は1つだけだ。
これまで
俺がここまで来られたのも彼女のスキルあってのことだ。
そして、何より俺は彼女に惚れてしまっている。
そんな彼女と1つの卵子を巡って壮絶な受精争いをしたくない。
ここで諦めて彼女に受精を譲り、彼女の幸せを祈りたいとさえ思ってしまう。
惚れた男の性というものだろう。非常に憂鬱だ。
もう、卵子を見つけたら彼女に譲る。それでいいのだ。
「おい。話がある。実はだな。」
「あ! 卵子見っけ! お先いいいい! あばよ。この中性野郎。
生を受けるのは私に決まっているの!」
俺は耳を疑った。ここにいるのは本当に
「待って。俺はお前に惚れていたんだぞ!」
「ばーか。精子に惚れられても嬉しいわけなんてないだろ。
精子は受精してなんぼよ。
私がお前に近づいたのは、そのスキルあってのものだよ。早く気づけよ。
まあ、でも多少は感謝しているぜ。ここまで中性にしてくれてよ。
おかげで安全にここまで来られた!」
そういえば、俺は彼女にスキルのことを何も言っていない。
それなのに、彼女は俺のスキルを熟知していた。
これも
なんて計算高い精子なんだ!
あー。俺の第2の人生の初恋は受精前に終わってしまった。
しかも、最悪の裏切りでだ。
こんなことをしなくても受精は譲ったというのに。
もう許せない。俺は彼女より先に受精してやる。
生を受けるの俺だああああああああああああ!
俺は
その間、
「
「ぐおおおおおおおおおおおおおお!」
彼女は酸をモロに浴びて悶えた。
その間、俺は自身に
「まさか、もう応用技を使えるとは。想定外だったわ。だが遅い。」
そう言うと、
「まずい! 動揺しすぎた!」
俺も、彼女から遅れて卵子の膜に突入した。
あとは、体力勝負だ!
「受精をするのは私なのよおおおおおおおおおおおおお!
私は転生を果たして世界を無双するのおおおおおおおおおおおおおおおお」
彼女はすごい気合の入れようだ!
だが俺も負けてられない。
「俺だって! 次の人生に賭けているんだあああああああああああああああ」
卵子の膜の変性が始まった。
受精が完了した証拠だ。
受精したのは、俺の方だった。
最後の
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああ」
彼女の断末魔が聞こえる。なんとも後味が悪い結末となってしまった。
◯〜◯〜◯〜
こうして、俺は見事受精に成功し、その後の着床に失敗したのであった。
異世界転生をした俺は、まだ精子だった。ゴミスキルを有して受精競争を制する。愛と感動の生命の神秘。 雨井 トリカブト @AigameHem
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