第3話 イキる精子たち
「ふう。何とか出られた。これで俺たちも何とか射精できるな。」
俺と
白いネバネバが非常に不快だ。
「そうね。むしろあの懲役300年の精子には感謝しておくべきかもしれないわね。
尿道から
他の転生者らしき精子も
会って早々、イキリをかまされたのでイラッとしたが今は感謝しかない。
「タイミングばっちしだな。お互い元気に射精されような。」
「ええ。そうね。どちらが受精しても恨みっこなしで協力しましょう。」
こうして、俺と
「来たわ。」
俺は鞭毛を無造作に動かして暇潰しをしていた時、彼女が口を開いた。
「今回は性交中の射精よ。これは、受精に期待ができるわ。」
「要するにこの流れに身を任せたらいいだな!」
俺たちは勢いよく流れる
「ああああああああああああ!」
王様の気持ちの良い喘ぎ声が聞こえた気がした。
○〜○〜○〜
「ここが子宮内なのか?」
「そうね。無事子宮内に到達したわ。」
「ここからは、2つある卵管のどちらかに泳いで行かないといけない。
そして、卵子を探すの。
わかっていると思うけど、排卵していたらの話だけどね。」
わかっているさ。卵子と邂逅できなければ俺たちの人生はそこで終了だ。
それでも、俺たちは鞭毛の限り、泳がなければ行けない運命だ。
「ひゃっはー。お前らも転生者か! 突然だけど死ね!」
突如、禍々しい言葉を吐いてくる輩が近づいてきた。
まずい! こいつも転生者だ。やられる。
「ひゃはー。放火魔である。俺に相応しいスキルがあるからな。
やばい。火を使って来る! やられた。畜生。
シュウウウウウウウウウウウウウウウウ
放火魔の奴が放った、えーと、
その炎は瞬く間に、子宮内の
「え、あ。はい。お疲れ様でした。」
そう言って俺たちは放火の精子と別れを告げた。
「はっはー。ここからは競争だ。
元陸上選手である俺の
次に、そのような言葉を発する転生者に遭遇したが、鞭毛をジタバタ動かしていた。
もちろんのこと、まだ俺たちに筋肉はない。
なぜなら、俺たちは精子だからだ。
「やはり、転生者があちこちに混じっているな。」
「そうね。ただ有能なスキルを有している彼らだけど、私たちは所詮、精子よ。
できることが限られているわ。」
転生者として華々しくデビューするはずだった精子達にとって残酷な正論だ。
まぁ、せっかくスキルを授かったんだ。花火のように散っていくのも粋だろう。
「痛っ! なんだ?」
「まずいわ! 早くここから逃げないと!」
突如として歪な何かが俺たち目掛けて突進してきた。
「行きなさい。
こいつ、奇形の受精能力がない精子を操っていやがる。
「わたくしは生死を操る精子、
わたくしの受精を邪魔するものは、この子たちの餌食となっていただきます。」
今度はやばい!
精子ながらちゃんと攻撃スキルを使って来るやつが現れた。
今度こそ俺の人生、いや精子生の最後だ。
「まだ、逆転のチャンスはあるわ。」
「あなたのスキルを使うのよ!」
「お、俺のスキルだと!?」
「そうよ。あなたのスキルを今すぐ使いなさい。早くして!」
「待て、俺のスキル、
要するにゴミスキルだ!」
「そんなのいいから! 早く!」
俺には意味がわからなかった。
でも、
退っ引きならない事情がそこにはあるのだろう!
俺は初めて
「
このセリフと共に
まさか、この精子は俺に気があるのか?
待て、精子同士の色恋沙汰は後々に問題になるぞと考える。
そんな淫らな妄想に一瞬耽っていたが、一つ違和感を覚える。
子宮に入ってから覚えていた倦怠感が一気になくなり、むしろ元気になったのだ。
「なんだ? みるみる力が湧いて来るぞ! これが俺の力なのか?」
「そうよ。これがあなたの力よ。説明は後でするわ。
今はあなたのそばに居させて。」
「あぁ、わかった。俺から離れるなよ! 行くぞ!」
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